しかし、結婚して一緒に暮らしてみると、自分の思い通りにならないとすぐに黙り込んでしまう、不機嫌を周囲にふりまく「不機嫌ハラスメント」をする人だったのです。
沈黙の食卓
ある日の夕方、私は台所で夕飯の支度をしていました。夫の野菜不足気を気遣い、野菜をたっぷり使った肉野菜炒めにした日、帰宅した夫がキッチンをのぞき込んでひと言。
「は? 今日のメシ、肉野菜炒め?」
不満そうな声で、明らかにがっかりしているのがわかりました。そして黙りこくったまま、肉だけをつまんで食卓へつくことなく、さっさと寝室へ行ってしまったのです。
こういうとき、夫は一切話をしません。こちらが何か声をかけても完全無視。そんな日が、次第に増えていきました。
息子の言葉を無視する夫
どうやら、会社でも仕事が思うようにいっていないようでした。どうやら夫の後輩が先に昇進したらしく、毎日家でもイライラ。
「俺の思った通りに、あいつらが動かないから……俺は悪くない!」なんて言いながら、舌打ちばかり。私が何か声をかけても、反応はゼロ。
そんなある晩、息子が一生懸命夫に話しかけていたのに、夫はそれさえも無視。
思わず私は言ってしまいました。
「聞こえないみたいね。パパのことはもう放っておきましょう」
息子を守るには、そうするしかありませんでした。
無言には、無言で返す
毎日夫の顔色をうかがい、機嫌を損ねないかとビクビクする日々。私はもう限界でした。夫が仕事へ行ったあと、私は最低限の荷物と息子を連れて実家へ帰りました。夫の電話もメールもすべてブロック。
その週末、夫が実家へ謝罪に来ました。「すまなかった! まさか出て行くなんて……」と言う夫に私は無言で記入済みの離婚届を手渡しました。
そのあと対応してくれた母から、夫が泣きそうな顔で謝っていたと聞きました。でも、これまでずっと私たちのことを無視し続けていたのに、自分が話したいときだけ話し合おうなんて、それはちょっと虫がよすぎる話です。
新しい形で
それから数日間の間、本当に反省している様子の夫が、毎日実家を訪ねてきました。
「もう二度と同じことはしない。俺が悪かった。家族を大事にしたいんだ」と頭を下げる姿を見て、私はやっと、自宅に戻ることに決めました。
もちろん、今まで夫に傷つけられてきた数々の出来事を簡単には許せません。息子をないがしろにしたことも忘れません。でも、懸命に謝罪して変わろうとする姿を見て、信じてみようと思えたのです。
その後、自宅に戻って、家族としてやり直す日々が始まりました。夫は、家族に不機嫌をぶつけないこと、家族と毎日会話することを約束してくれました。
今では、幼稚園での出来事を毎日楽しそうに話す息子と、それに耳を傾ける夫……家族団らんの時間が持てるようになり、穏やかな日々です。夫が改心し、態度を改めてくれてよかったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
著者:ベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班