僕の職業を理由に結婚を反対
当時交際していた女性とは結婚を見据えていました。そして彼女の家へ結婚あいさつをしに行った際のことです。緊張と覚悟を胸に「彼女と結婚したい」と彼女の父に伝えると、僕は思いがけない言葉を浴びせられました。
当時の僕は、清掃業の会社で現場に立つ日々。地味な仕事と思われがちですが、僕にとっては誇りを持てる仕事でした。ところが彼女の父親は、僕の職業を知った途端、あからさまに顔を曇らせたのです。そして「月収は?」「貯金は?」と次第に査問のような空気に。
彼女の父は、長年大手自動車メーカーに勤めてきた人。重役にも就いていたそうです。彼女の父は自身の経歴を語りながら、僕の今の仕事には将来性がなく、「娘を幸せにできるはずない」と言います。たしかに心配になる気持ちもわかりましたし、だからこそ仕事を頑張っていること、結婚のために十分な貯金をしていることを伝えました。しかし、彼女の父からは最終的に「結婚はうちの金が目当てだろ」と決めつけられてしまって……。
彼女も最初は僕をかばおうとしてくれていたのですが、父親の強い態度に押され、次第に口を濁すようになっていきました。
結婚は白紙になり、彼女とはお別れ
結局、場の空気を変えることはできず、その日は帰宅することに。その後は、改めて彼女にもお金目的ではないことを何度も伝え、再び彼女の父に会えないかということをお願いしていましたが、結局、彼女の父は結婚を許してくれることはなく、彼女も「父がそう言うなら……」と結婚には消極的に。
そのような状態になってしまったこともあり、僕は彼女と別れることになったのです。
5年後、まさかの人物から電話が…
あれから5年――。僕は独立し、清掃業界で起業しました。業務の幅を広げ、工場やオフィスビルの清掃・衛生管理・職場環境の改善をトータルで担う会社へと成長させてきました。地味な作業の積み重ねだったかもしれませんが、誠実に、丁寧に、信頼を築いてきました。
そんなある日、取引先との打ち合わせに向かう直前、電話がかかってきました。画面には、かつての彼女の名前が。驚きながら電話に出ると、明るい声が響いて……。彼女から飛び出したのは
「起業したんだって? あなたのこと、パパも許すって言ってるし、またやり直さない?」
というまさかの言葉でした。どこかから僕が起業したことを知り、社長になったということで彼女の父が結婚を許してくれたとのこと。
喜々として語る彼女でしたが……実はこのとき、僕はもう別の女性と結婚していました。「ごめん。もう結婚してるんだ。仕事中だから電話を切るね」と静かに伝えると、電話の向こうから驚くような声が聞こえましたが、そのまま通話を終了させました。
変わったのは、肩書きだけじゃない
彼女と別れてからの5年の間で、僕は、起業するのと同時に、仕事上でお付き合いのあった女性と結婚していました。元カノは別れてからもずっと僕のことを思ってくれていたのでしょうか。その気持ちはもちろんうれしかったですが、まさか起業したのを知ってから「やり直さないか」と連絡がくるとは思いませんでした。
もちろん、結婚において金銭面を気にするのは当然のことだと思います。あのとき彼女の父が抱いた不安も、決して間違っていたとは思いません。けれど、肩書きや収入だけで判断されたことは、やっぱり悔しい気持ちもありました。だからこそ、自分の仕事に誇りを持って積み重ねてきた日々が、起業というかたちで実を結んだことは、僕にとって何よりの答えでした。
彼女との別れを機に「もっと仕事を頑張ろう」と思えたのは事実。あの経験がなければここまで本気で頑張れなかったかもしれません。これからも、自分の仕事を信じて、一歩ずつ歩いていこうと思います。どんな肩書きよりも、自分の選んだ人生を誇れるように。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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