おなかがだんだん大きくなってくると、妊婦さんは運動不足になりがちです。そのため腰痛などの症状が出てくることもあります。適度な運動により、妊娠中の運動不足を解消することが望ましいことはよく知られています。今回は妊娠中の運動の効果や運動をする時期と注意点、運動の中でも腰痛予防や便秘解消が期待でき、出産時に必要な筋肉が鍛えられそうな腹筋運動に注目してみました。
妊娠中の運動の効果とは?
妊娠中は、ホルモンの影響で身体的・精神的にも不安定で、活動意欲が減退する時期があります。また、おなかが大きくなることで活動範囲が制限され、運動不足になりがちです。
運動不足になると、急激に体重が増加してしまうことがあり、急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症を引き起こすおそれがあるなど、母児に悪い影響を及ぼす可能性があります。そして、運動不足により筋力が低下し、普段使っている腹筋や骨盤底筋群が弱くなってしまうことで、腰痛が出現したり便秘が解消されなかったりといったマイナートラブルが出やすくなります。
妊娠中に運動をすることによって、こうした問題が起こりにくくなるだけではなく、全身の血流がよくなり、自律神経が安定して、ストレス発散もできるなど、心身両面で良い効果が得られます。
妊娠中におこなわれている運動として代表的なのは、ウォーキングや水中での歩行、マタニティ・エクササイズ、ヨガなどです。一方、両足が地面から離れるような跳躍や、おなかに力が入るような運動は基本的にはすすめられません。
妊娠中の運動をする時期と注意点
「安定期」に入るまでの妊娠初期には、流産の可能性もあるため、運動は基本的にすすめられません。日本臨床スポーツ医学会では、「妊娠成立後、経過に問題がなければ妊娠12週ごろから運動を開始するのが望ましい」と提言しています。しかし一般的には、安定期といわれる14~16週を目途に、かかりつけの産婦人科と相談の上、自分の体調と妊娠経過をみながら始めるのがよいでしょう。
妊婦さんが運動をする場合には、以下の点に注意しましょう。
1)体のバランスを崩すリスクを最小限に抑える(安定した姿勢での運動)
2)胎児への影響を最小限にする(腹部の圧迫や刺激の少ない運動)
3)運動する環境を整え体温が上昇しすぎないようにする(脱水予防)
■体調が最優先
おなかが張っていると感じたり、体調が思わしくない、疲れていると感じたりした場合には無理に運動することはやめましょう。
■快適な環境でおこなっているか
運動中の体温上昇・発汗により、脱水を招く危険性があります。快適と感じる環境でこまめに水分補給をおこないながら運動しましょう。
■楽しく長続きする運動を
楽しみながら長く続けられる運動を選びましょう。また長時間の運動は疲労へとつながります。初めは短時間から始め、慣れてきたら少しずつ時間を延ばしていきましょう。
妊娠中の腹筋運動について
仰向けに似た状態から上半身を持ち上げるような腹筋運動を、妊娠していないときと同じように妊婦さんがおこなうことには無理がありますし、おこなわないほうが良いです。とくに、流早産の兆候が出かけていることに気づかずにおなかに力を入れ続けると、子宮収縮や出血・破水を起こす危険があります。
子宮が大きくなるとともに緩んでいくおなかの筋肉を維持、あるいは強化することができれば、腰痛予防や便秘解消が期待できますし、何よりも出産時に必要な筋肉が鍛えられることで、スムーズなお産が期待できます。理想的には妊娠する前に妊娠に備えて腹筋を鍛えておくことが大切です。
代わりに、直接腹筋を鍛えるような運動ではありませんが、マタニティーヨガやエキササイズ、ウォーキングなどは、背筋や足・臀部などの筋肉を鍛えることで、腹筋の弱くなった分をカバーできるような効果が期待できます。妊娠中にもおこなえる腹筋運動の1例としては、次のような体操があります。
1.四つん這いになって膝を肩幅に開く。両手を肩から真下につく。
2.背中を平らにして息を吸う。
3.息を吐きながら腹筋を締め、背中を丸めるようにする。(腹筋を締めるときは必ず息を吐き、息をこらえたりしないこと)
4.これを数秒間維持した後、力を抜いて元の体勢に戻る。
※参考:『妊娠と育児の百科 命のめばえから5歳まで』(ベニー・スタンウェイ編/産調出版)
まとめ
妊婦さんは妊娠中の体の変化により、運動制限が出てきます。しかし、マタニティー用にアレンジされた運動であれば、バランスを崩すリスクも少なく、安全に運動できますし、体力・筋力維持とリラックス効果という大きなメリットがあります。自分に合った無理のない適度な運動を見つけ、この機会に運動不足解消のためにおこなってみてはいかがでしょうか。