義母はすでに古くなった実家の売却を決めているそう。「嫁のあんたに拒否権はないからね」という一方的な宣告に、私は言葉を失いました。
夫を失った悲しみに寄り添うどころか、家を乗っ取ろうとする義母の強欲さに、心の底から冷え切るような感覚を覚えたのです。
義両親の引っ越し
翌日、私が仕事へ出ようとした矢先、予告通り義母が現れました。「線香だけでも……」と言う言葉に騙されて家にあげたのが何よりの失敗……。義母は車に積んでいた荷物をおろし始めたのです。
後ろ髪を引かれる思いでしたが、重要な会議を欠席できず、私は家を後にしました。
帰宅すると、家の中はぐちゃぐちゃでした。「引っ越し作業中なんだから当たり前でしょ」と言う義母は、私の荷物を邪魔物扱いして廊下に放り出していたのです。
さらに義母の暴走は止まりません。片付けを私一人に押し付け、自分たちは外食へ。挙句の果てには、大人3人では家が狭いからと、私に家を出ていくよう命じたのです。
「この家は息子が稼いだ金で買ったんでしょ? 血の繋がった私たちが継ぐのが筋だわ。あんたみたいな他人は、さっさと出ていってね!」
夫を亡くしたばかりの私への言葉とは思えませんでした。
究極の選択
しばらくして、居座り続ける義母に対し、私はついに重い口を開きました。
「わかりました。ご希望通り、私はこの家を出ますね。ただ、その前にひとつだけ伝えておかなければならないことがあります。夫は皆さんが思っているような『遺産』なんて、1円も残していませんよ。……実は夫、2000万円を超える借金を作っていたんです」
勝ち誇ったように笑っていた義母でしたが、その言葉を聞いた瞬間、凍りついたように表情を失いました。ギャンブルに溺れていた夫は、莫大な負債を抱えたままこの世を去っていたのです。
「実は今日、家庭裁判所に相続放棄の書類を出してきました。私はこの家も借金も一切引き継ぎません。あなたが『自分たちのものだ』と主張して居座るなら、その借金もあなたが背負うことになりますよ」
家を相続するということは、セットで付いてくる2000万円以上の借金も背負うということです。家が欲しければ借金も引き継ぐしかありません。
この冷酷な事実に、義母は「そんな大金払えない」と取り乱しました。
さらなる不幸
すでに実家を売却し、金も住む場所もない義両親には、選択肢は2つしかありませんでした。2000万円の借金を背負ってこの家に住み続けるか、すべてを放棄して真冬の空の下へ放り出されるか……。
結局、義両親はこの家に住み続ける道を選びました。しかし、そこにはさらなる絶望が待っているのです。
「お義母さん、最後にひとつ言い忘れました。この家、実は格安で買ったボロボロの中古物件なんです。建て替えるつもりだったので……。そろそろ屋根も床下も限界で、近々大規模な修繕をしないと住めなくなりますよ!」
タダで手に入ると思った家は、多額の借金と、住み続けるためにさらなる大金が必要な「負債の塊」だったのです。
「なんてものを残してくれたのよ!」義母の絶叫を背に、私は必要最低限の荷物だけを持って、清々しい気持ちで家を後にしました。
義両親の末路
後日談ですが、義両親はその後、極貧生活を送りながらコツコツと修繕費を貯めているようです。しかし、修繕の見積額はあまりにも高額。遠くないうちに、家を手放す日が来るに違いありません。
私はギャンブルがやめられないダメな夫のことも、自分勝手な義両親のことも忘れて、第二の人生を心から楽しもうと思います。
◇ ◇ ◇
「息子のものはすべて自分のもの」。そんな身勝手な欲に目がくらみ、故人への感謝や残された家族への思いやりを捨ててしまえば、いつか思わぬ形で「バチ」が当たるのかもしれません。
遺産をめぐる争いは、結局誰も幸せにしない――。そんな、当たり前だけれど大切な教訓を改めて突きつけられるエピソードでした。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。