弟の隣にいたのは…
社会人になってしばらく経ったころ、僕は職場の同僚の紹介で、ある女性と出会いました。看護師だと言う彼女は、明るくまっすぐで、「人を助けたい」という素直な思いにあふれている人。
これまでいい出会いもなく、恋愛には消極的だった僕ですが、彼女とデートを重ねるうちに「こんな素敵な人とこれからも一緒に過ごすことができたら……」と考えるようになっていきました。
しかし、ある日を境に彼女からの連絡がぷつりと途絶えました。
理由もわからず、胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちだった僕。「何か嫌われることをしてしまっただろうか」としばらく考え込んでしまう日々が続きました。
ある日、気分転換にと実家に顔を出すことに。実家には、両親と弟が暮らしています。両親がまだ仕事で家を空けている時間に帰ると……なんと、リビングにいたのは弟と……あの日、連絡が途絶えた彼女でした。
弟が言うには、「数週間前くらいから彼女と付き合い始めた」とのこと。彼女はその言葉に驚いた表情をしていましたが、僕はあまりに突然のことで、何も言葉が出ませんでした。
女性たちが僕の家に!?
結局、僕はそのまま逃げるように実家を後にしました。どうして彼女が弟と一緒にいたのか……しばらくは気持ちの整理ができませんでしたが、弟と出会い、弟を選んだということ、自分に魅力がなかっただけだと納得させることに。
そして、気持ちをリセットしようと僕は布団に潜りました。
翌朝……僕は家のインターホンが鳴る音で目覚めました。ドアスコープを覗くと、そこには、昨日弟と一緒にいたあの女性に加え、数人の見知らぬ女性たちの姿が。何事だと驚いてドアを開けると、彼女たちは一斉に、「あなたに話したいことがあるんです!」と訴えかけてきました。
弟の「裏の顔」が明かされて
驚きつつも女性たちを部屋に通し、話を聞くことに。昨日実家にいた彼女は、数週間前に偶然弟と出会ったそう。そこで僕の話を出され、「兄(僕)のことで相談に乗ってあげるよ」と言われ会うようになったそうです。しかし、会ううちになぜか「交際していることになっていた」とのこと。昨日は、弟と交際するつもりはないと話をする予定で、弟から実家に呼び出されていたと言います。
まさか僕と鉢合わせるなんて思っていなかった、自分の行動も軽率だったと、彼女は僕に頭を下げました。
そして、一緒にやってきた複数の女性たちから語られたのは衝撃のことばかりでした。なんとここに集まった女性たちは、全員が弟と交際していたと言います。昨日実家にいた彼女の友人だと言う女性もいて、SNSを通して集まったのだとか。
彼女たちからは、「交際を始めるとすぐに他の女の子に乗り換えられ、ひどい言葉を吐かれて捨てられた」と弟の浮気癖のひどさを打ち明けられました。
昔から「彼女が途切れたことはないな」と思っていましたが、まさかこんなに弟に怒りを抱えている女性がいるなんて……と、僕はただただ衝撃でした。もちろん、兄として申し訳ないという気持ちもあり、僕は女性たちに謝罪。すると彼女たちは、強いまなざしでこう言ったのです。
「協力してもらいたくてここにきた」と。
元カノたちの復讐劇
弟の元カノたちは、彼への仕返しを考えているよう。僕にも協力してほしいと言います。思わぬ提案に「どうしたらいいんだ」とは思いましたが、彼女たちから計画の全貌を聞き、親族として弟に反省してもらいたいという思いもあって、僕は女性たちに協力することにしました。
後日、僕は「話したいことがあるから」と弟を誘い、とある高級レストランへ。弟は「結婚の報告とか? あ、でも彼女奪っちゃったしなw」と笑っていました。しかし、お店に着くと、弟の表情は一変。顔を真っ青にして「どういうことだよ……」と動揺し始めました。
実は、お店のスタッフ、客……レストランにいるすべての人たちが、弟の元カノだったのです。
女性たちからの冷たい視線を一身に浴びた弟は、冷や汗をダラダラ垂らしながら、まるで石のように動かなくなってしまい……。
ひとりの女性が弟の前に出てきて、「あなたがここにいる女性たちにしてきたこと、あなたが勤める会社に報告させてもらいました」と告げると、弟は「終わった……」とポツリ。その場に座り込んでしまいました。
「彼女たちは、きみのせいで傷ついている。それに気づいて反省してほしい」
僕の言葉が、弟の耳に入っていたかは……わかりません。
結局、弟はその後、会社を辞め、両親にも怒られ、今のところは実家でおとなしくしているようです。ひどい扱いをしてしまった女性たちには、ひとりひとり謝罪の連絡を入れているとのことでした。
そして僕は、最初に出会ったあの看護師の女性と改めて少しずつ距離を縮めています。あのとき、連絡が途絶えてしまった理由をそれとなく聞いてみると、弟と出会ったタイミングで、どう連絡したらいいのか考えてしまい返事ができなかったとのこと。改めて彼女から謝られてしまいました。まさかの出来事がありましたが、もう一度彼女とゆっくりと向き合っていきたい……と思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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