初期胎児ドッグという検査の結果、先天性異常の可能性を指摘されますが、絨毛検査前のエコー検査で、おなかの赤ちゃんの心拍が停止していることが判明。
激しい痛みを伴う前処置を乗り越え、赤ちゃんを出産します。
退院してまもなく、赤ちゃんの火葬の日を迎えたかばのきさん。奇跡的に残った小さな骨を持ち帰り、毎朝赤ちゃんの骨壺に挨拶をするのが日課になります。
かばのきさんはどうにか立ち直ろうとしますが、本人が想像していた以上に心の傷は深く、児童館できょうだいを連れたママや妊婦さんを見かけるたびに、嫉妬で心は大荒れ。
「上に子どもがいて良かったね」「次があるじゃない」と善意でかけられた言葉さえも、無数の針のように感じられます。かばのきさんは「消えてしまえないかな」と日々考えるようになりました。
※初期胎児ドック…胎児に染色体異常の可能性やその他の身体的疾患がないか調べるためのより精密な超音波検査。
※絨毛検査…胎盤の一部である絨毛を採取して、胎児の染色体や遺伝子の状態を調べる検査。
※不妊治療、死産についての表現があります。苦手な方は閲覧をお控えください。また、医療行為や症状については専門家にお尋ねください。
「今のままでも十分幸せ」でも揺れる心
かばのきさん夫婦は、再び不妊治療を再開するかどうか話し合います。年齢的にも、悠長にしていられないことは分かっていても、「また赤ちゃんに先天性異常があったらどうしよう」「そのとき、自分はまた『産まない』選択をするのか」など、不安を感じていました。
「(赤ちゃんを)欲しいとは思う。でも正直怖いって気持ちもある」
夫は、かばのきさんと同じように、また赤ちゃんを失うかもしれない怖さを感じていました。
目の前に元気なこつぶちゃんがいるありがたさを感じる一方で、あったはずの未来を突きつけられると折れる心。
かばのきさんは、幸福感や悲嘆、愛情、焦燥感、憧れなど自分の気持ちに振り回されるしかないのでした。
▼赤ちゃんの問題を指摘されることが「対岸の火事」だったというかばのきさん。きっと多くの方が同じではないでしょうか。妊娠には一定のリスクがあることは頭では分かっていても、いざ自分が当事者になるまではどうしても他人事になってしまうもの。
しかし、その当事者となったからこそ、次の一歩を簡単には踏み出せない苦しさがあるのではないでしょうか。
当時、かばのきさんは不妊治療を再開すべきか悩み、「このままでいい、欲しい、このままでいい、欲しい」と堂々巡りをしていたそうです。正解がないからこそ、かばのきさんはこんなにも苦しんだのかもしれません。どうかかばのきさんにとって後悔のない選択ができることを祈ります。
なお、死産後の不妊治療の再開時期には明確な決まりはありません。流産したときの胎児の週数や行われた処置によって変わります。一般的には「生理が1〜2回戻ってから」「出産から半年ほどの期間を空けてから」というケースが多いようですが、母体の回復状態と精神面の安定をもとに、医師と相談しながら決めるのが基本です。死産は大きな喪失体験であり、再び妊娠に向き合うには心理的な準備期間も欠かせません。焦らず、自分やパートナーの気持ちを尊重することが大切です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
かばのきさんのマンガは、このほかにもブログで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね。