母と元夫の出会い
東京の音楽大学でクラシックを学んでいた母と、上京してロックバンドを組んで夢を追っていた母の元夫は、当時のバイト先で出会いました。
音楽という共通の話題で意気投合し、夜な夜な語り合う中で、深い仲になるのにはそう時間はかかりませんでした。その後、元夫から「一緒にロックをやらないか?」と誘われた母は「ロックはやったことがないけれど、譜面も読めるし、音楽理論もわかるからなんとかなるかな」と話に乗り、一緒にバンドを組むことになりました。
生活に追われる日々
その後、2人は結婚し、夫婦で音楽の仕事に携わることになりました。音楽の仕事という不安定な仕事ながら、母は家庭を支えようと、昼はピアノの生徒さんを教え、夜は夫と音楽の仕事をするなど、文字通り日夜問わず身を粉にする思いで頑張っていました。
そして、もともと音楽大学で学んだ知識と技術を生かした母の仕事の評判はどんどんと伸びていきました。
しかし母の元夫といえば、せっかく契約できた仕事もすぐ放棄してきてしまったのです。理由を聞けば「音楽性の違い」や「もっと大きな仕事が請け負えるはずだ」など、結婚してなお夢を追い続ける姿勢を崩しませんでした。
夫からの無視に耐えかねて
そんな2人の距離が離れていくのは時間の問題で、疲れ果てた母はある日ついに家を飛び出し、実家へ逃げるように帰りました。そこへ、元夫が家族に連れられ、母の実家へ話し合いにきたものの、何を言われても、下を向いて黙り、頑として話さないまま。元夫不在の話し合いの中「母の実家に元夫も同居する形で暮らす」という形でいったん丸く収まりました。
元夫が母の実家へ引っ越すための作業中も、引っ越し作業を手伝ってくれた共通の友だちに対してはニコニコと話しかけるものの、母のことはまるで空気かのように無視をしていました。
時を同じくして、元夫は好きなバンドのライブを見にアメリカへ行く旅行計画を立てていました。その旅に母が「一緒に行きたい」と言っても、当然のように無視をし、そして母の実家からアメリカ旅行へ行ったきり、元夫は帰ってこなくなってしまったのです。
どんなに連絡してもつながらず、何かあったのではないかと心配して元夫の実家へ連絡したところ、なんと元夫は、元夫の実家に帰っていたのです。再度母の実家で話し合いを試みるも、何時間たってもひと言も話さない状態に、もうどうにもならないため離婚をすることになりました。
市役所に離婚届を提出すると、ようやく元夫が口を開き、母に「またしばらく時間がたったらやり直そう」と告げたのだそうです。そのあまりにも自分勝手で一方的な言葉に、母は返す言葉もありませんでした。
離婚し、お互いの実家に戻った後も、元夫は近所の人に「離婚はしたけど、またそのうちやり直すから」と話して回り、わざわざ近所の人から母に心配の連絡があったほどと聞きました。
離婚から10年後に届いた元夫からの手紙

それから10年ほどの月日がたち、母が私の父と再婚し、そして私が生まれてしばらくたったころ、母は婦人科の病気で入院することになりました。そして、どこからかその話を人伝てに聞いた母の元夫がお見舞いに来て、1通の手紙(上の画像が実物)を渡されました。
元夫から渡された手紙には「自分が夢を追いかけ続けたばかりに、母に多大な苦労と迷惑をかけたこと」「母のことが大好きで、感謝していたのに、それを口に出してこなかったこと」「夢を追えば追うほどに、自分の力不足に悩み、同時に母の音楽性に嫉妬をしてしまったこと」「世界で一番愛している人が、同時に一番の嫉妬の対象であった葛藤」が、2人の歴史をなぞるように丁寧につづられていました。
手紙を受け取ってから40年近くたっても母が手紙を捨てずに大切に取ってある理由は、未練や過去への執着ではなく「あのときの私は十分頑張った。悪くなかった。私にできることはもうなかった」という「自分が誠実に生きた証し」としてなんだよと話してくれました。
まとめ
この話を聞き、また手紙を読んで、私は「どんなに手を尽くしても、そのときには伝わらないものの、時間がたってから伝わることもある」のだと学びました。それはもしかしたら、親の教えもそうかもしれません。だからこそ、日々柔軟に物事を受け入れようとする素直な心・自分の心の余白が大切なのではないかと思わされた出来事でした。
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※AI生成画像を使用しています
著者:磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)
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