聞こえてきた声
女性2人は並んで、娘たちの目の前のつり革につかまりました。すると1人の女性が「最近の親はみんな子どものほうを座らせるのよね。子どもなんだから立たせておけばいいのにね」と、私に聞こえるように話し始めたのです。
席を譲ろうか悩んだそのとき
私が自分ではなく子どもたちを座らせたのは、この電車がいつも途中で大きく揺れるのを知っていたから。子どもたちを立たせていた場合、揺れに耐えきれず転んでしまう可能性があります。その結果、周囲に迷惑をかけてしまう恐れも。
また、1歳の末っ子に関しては、抱っこひものまま座ると機嫌が悪くなるので、私は抱っこしたまま立っていたほうが都合がいいという理由もありました。しかし女性たちはそんな理由を知るはずもありません。私が「子どもたちに席を譲らせたほうがいいのだろうか」とモヤモヤしていると、案の定、電車が大きくガタンと揺れたのです。
娘に助けられて
すると、先ほど小言を言っていた女性がバランスを崩し、つり革を持つ手がくるり!その結果、座っている娘たちの上に倒れこんできたのです。咄嗟に娘たちが女性を支え「大丈夫ですか?」と声をかけました。
しかし女性は啞然としたまま何も答えず、私を一瞥し、気まずそうにしながら、もう1人の女性とそそくさとその場を去って行ったのでした。
1人で3人の子どもを連れて出かけるとどうしても目立つようで、よかれと思っての行動でも批判的に見られることもたまにあります。それが今回は、嫌味を言った女性が娘たちに助けられるという、まさかの展開になったのでした……。
女性にとって、予期せぬ出来事と、娘たちの「大丈夫ですか?」という真っ直ぐな一言によって、「子どもにはこうすべき」という女性の中の正しさが、もろくも崩れ去ったのかもしれません。気まずそうに去っていく後ろ姿を見ながら、私の中にあったのは反感ではなく、不思議な静けさでした。ほんの数分間の出来事が、女性の心に何か小さな変化を残してくれていたら、と今では思います。
著者:河原りさ/30代女性/2016年生まれと2018年生まれの女の子2人、2024年生まれの男の子のママ。花屋に勤務。都会のおでかけスポットや植物に関心あり。
イラスト:はたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)