フライト中に起きたトラブル
家族3人で旅行をしたときのことです。初めての飛行機に、膝の上に乗った1歳の息子はうれしさでソワソワ。席の予約がいっぱいで、夫とは席が離れてしまいましたが、私は息子が飽きないよう好きなおもちゃも持ってきていたので、大丈夫だろうと考えていました。
フライトも中盤に差し掛かり、息子は持ってきていた絵本をおとなしく眺めていました。ところが、鼻がムズムズしたのかごそごそする息子。慌てて手で口元を囲おうとしましたが、時すでに遅し。「ハックション!」と大きな音を立てて、くしゃみをしたのです。しかもゴソゴソしていた息子を抑えきれず、運の悪いことに、隣の席を向いて……。隣の席の50代くらいの男性の腕に飛沫が少しかかってしまいました。
「大変申し訳ありません」と頭を下げると男性は眉間にしわを寄せ、「チッ」と舌打ちをしてこちらを見てきたのです。そして「ったく、ガキ連れて飛行機になんか乗るなよ」「常識のない迷惑な親だな」とひと言。ティッシュを差し出して「これで拭いてください」と言うも、荒々しく奪い取るようにして、「そんなもんで済むかよ」と見るからに不機嫌。申し訳なさでいっぱいになりつつも、男性の言い方に悲しい気持ちになってしまいました。
その後も男性は、私たちから露骨に距離をとる仕草を見せ、息子が動くたびに「うるせえよ」「じっとさせとけよ」と周囲にも聞こえるような声で何度もつぶやきます。そして足をドカッと広げ、私の膝に乗る息子の足をギューッと押し返すような素振りまで……。
見かねた乗務員さんが「どうされましたか」と来てくれましたが「こっちは金払ってんのに不快でしかないんだよ」「席替えてくれよ」とブツブツとずっと言っています。乗務員さんが「あいにく席の移動は……」と言っても「ふざけんな、いつまでこの汚ねえガキの横じゃなきゃいけねえんだよ!」と罵倒。その度に息子は怯えて小さく体を縮こまらせ、私の気持ちは申し訳なさから悔しさと悲しさに変わり、涙が出そうでした。
しかし、ようやく着陸し、荷物をまとめようとしたとき、その男性の態度が急変したのです。離れた席に座っていた夫が、荷物の手伝いに席まできてくれました。すると、男性は夫を見るや否や、慌てて深々と頭を下げ「○○さん、お世話になっております。同じ飛行機に乗られていたんですね」と言ったのです。夫は「え! 偶然ですね! しかもうちの妻たちの横ですか!」とにこやか。
その男性は、夫の会社に来る、地方の取引先の営業部長さんだったのです。ドラマのようなあまりの偶然に、私は思わず「えっ……!?」と声が出そうになりました。どうやら彼らは前日にも商談をしていたばかりで、男性はこれから地方に戻るところだったそう。夫が「息子がご迷惑かけてませんでしたか」と言うと男性はみるみるうちに顔が青ざめ、「いえいえそんな……」としどろもどろ。愛想笑いを浮かべているものの、その目は明らかに泳いでいました。
あとで夫から話を聞くと、男性の罵倒する声は夫の席まで聞こえており、息子が迷惑をかけていないか聞いたのも、わざとだったそう。「フライト中だったから席も立てなくて。助けられなくてごめんね」と言ってくれました。そして後日仕事中に会った際、男性は夫に対して気まずそうにしていたそうです。自分の横柄な態度が知り合いに知られてしまい、まずかったと思ったのでしょう。
今回の出来事で、人前での振る舞いは誰が見ているかわからないということを痛感しました。息子のくしゃみがかかってしまったことは申し訳なく思っていますが、今回の男性を反面教師に、相手によって態度を変えるのではなく、誰に対しても思いやりのある行動ができる大人でありたいと思ったと同時に、息子にもそう育ってほしいと思った出来事でした。
著者:遠山奈津子/30代・会社員。お出かけ大好きな1歳のひとり息子を育てるママ。休日は公園巡りで息子のエネルギーを発散中。
作画:ひのっしー
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年7月)
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