夫は、ことなかれ主義。夫の前でも義母は平気で私のことをいびるのに、見て見ぬふりでまったく私をかばってくれません。
「財産目当てで息子に近づいた寄生虫め!」
義母は、毎日のようにそんな暴言を浴びせてきます。義父は常識ある、とてもいい人ですが、息子である夫に会社を任せて以降、新たな事業を始めており、そちらが忙しくあまり家にいません。そのため、義母を止める人が誰もおらず、言いたい放題なのです。
私自身のことへの暴言ならまだ我慢できるのですが、義母はシングルマザーに偏見を持っており、おなかの子もいやしい遺伝子を引き継ぐのではないかと言ってきたときにはもう、ショックで仕方なかったです。
私の母は、女手ひとつで私を立派に育ててくれました。父とは、身分違いの恋で結婚できなかったそうですが、母のおかげで私は父親がいないことで、さみしい思いをしたことも、不自由な経験をしたこともありませんでした。
そんな大好きな母を、病気で亡くした私。尊敬する母の悪口を言われるのだけは、どうしても許せません。
家を追い出された、私たち母娘
母を悪く言われると、私が嫌がる反応をしたり、反論したりするため、義母は味を占めたかのように、母を悪く言ってくるようになりました。夫は相変わらず静観するのみで助けてもらえず……。そんなつらい日々を過ごすうちに、私は離婚を考えるようになりました。いつでも離婚できるよう準備を進めつつ、娘を出産。
自分の体調が落ち着いたら、離婚を告げ、娘と義実家を出よう。そう考えていた矢先、産院を退院する日に、義母から連絡が……。
「男の子を産めない嫁は不要!」
「孫と一緒に出ていけ!」
義母は、もう帰ってこなくていいと言います。ひとまず義実家に帰ると、もうすでに私の荷物がまとめられていました。
「わかりました、では」
そうして私は、産後すぐ娘とともに義実家を追い出されることになったのです。夫には何も知らせず、義母が勝手に私の荷物をまとめていたようでした。「顔を見るだけで虫ずが走る。さっさと出ていけ」とまで言われ、何かを言い返す気にもなれず、素直に応じることにした私。とっくに限界だったので、もういいやという感じでした。
「二度と顔を見せないでね~♪」
そう言って、笑顔で私を送り出す義母。初孫を抱こうともしませんでした。私は母が亡くなる直前に、「困ったときは絶対に助けになってくれる人だから」と、連絡先を教えてもらっていた父を頼ることにしたのです。
このとき私は初めて父に電話をかけたのですが、電話に出た父はとても親切に、丁寧に対応してくれました。一度も会ったことはありませんでしたが、父は母からずっと私の成長を知らされていたようで、私が名乗ると、泣きながら「連絡をくれてうれしい」と言ってくれたのです。
突然の連絡だったにもかかわらず、事情を話すと、すぐに迎えに来てくれた父。会って話してみると、母が父を愛していたことに深く納得しました。父は、とてもあたたかく、やさしい人で、母と別れて以降、誰とも結婚せず今も独身を貫いていたのです。
父は医師で、大きな病院のひとり息子でした。結婚相手は医師以外認めないと両親に反対され、母と一緒になれなかったそう。何度お見合いをさせられても、母以外に考えられず結婚しなかったと聞きました。そんな父が、私と娘をやさしく受け入れてくれて、私たちは父の家で一緒に暮らすことになったのです。
その後、私は産前から相談していた弁護士を通じて、夫へ離婚の意思を告げ、親権や養育費などについての取り決めを行い、離婚しました。
とんでもないニュース
離婚が成立して1年ほどが経ったころ、私はとんでもないニュースを耳にしました。なんと元夫が、社長を解任され、多額の借金を抱えたというのです。元義父が「息子からの養育費が滞るかもしれない。もしそうなったら自分が用立てるから、すぐに連絡をしてほしい」と、私へ連絡をくれたのでした。
元義父に事情を聞くと、元夫が社内や取引先の女性複数人と不倫をしていたことが発覚し、芋づる式にすべてがバレて、慰謝料を請求されることになったのだとか。不倫相手は、部下の奥様や大口取引先の社長夫人、パートで清掃に来てくれていた主婦の方も……。元夫は許されない恋が好きなのか、見事に全員が近場の奥様たち。
元義父から話を聞いて、ドン引きしましたが、納得もしました。私が元義母にいびられても無関心だったこと、追い出されたと知っても迎えに来なかったこと、離婚をあっさり受け入れたこと、すべては、もう私に興味がなかったからなのでしょう。
思い返せば、元夫と仲を深めた当時、私には彼氏がいました。私の場合は、関係を整理してから元夫とお付き合いしましたが、元夫は人のものがほしくなる性格なのかもしれません。巻き込まれる前に離婚しておいてよかったとホッとしました。
元夫の失態を知った元義母は、大いに失望し、ののしったそう。この状態では、跡継ぎどころではないので、元義母が荒れてしまっても仕方がありません。出産間もない嫁と孫を追い出す元義母はどうかしていると思っていましたが、元夫のほうがもっとどうかしていました……。
追い出してくれてむしろ感謝
今となっては、追い出してくれたことに感謝したいくらいです。離婚を考えて準備はしていましたが、追い出されていなかったら「体調が落ち着いたら」「娘のお世話に慣れたら」「ひとりで育てるめどが立ったら」などと、未だに踏み切れていなかったかもしれません。
元夫の複数人同時不倫のせいで、会社も家庭も大混乱していることでしょう。もう私には関係のないことなので、元夫や元義母がどんな生活を送っているか知りませんが、きっと精神的に苦しい思いをしているに違いありません。
私は今、娘と父と3人で暮らし、とても幸せな毎日を送っています。母の愛する人から、たくさんの愛を注いでもらっている今、あらためて母に感謝しています。娘にさみしい思いをさせないよう、私も母のような強い人になりたいと思います。
◇ ◇ ◇
「男の子を産めない嫁は不要」と、産後すぐの妻と孫を追い出す義母の言動は常軌を逸しています。しかし、その非道な行いがなければ、決断が先延ばしになっていたかもしれないと思うと、皮肉なものですね。お母様が遺してくれたお父様という強いつながりが、母娘の未来を守ってくれたのではないでしょうか。この先ずっと3人に幸せな日々が続くことを願っています。
【取材時期:2025年10月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。