余裕のない私にかけられた言葉
数カ月前、夫が一時的に単身赴任をしていたため、私は、4歳の息子と2歳の娘の2人をフルワンオペで育てていました。娘はイヤイヤ期真っ只中で、とにかく感情の起伏が激しく、大変です。
靴が気に入らない、服がイヤ、おにぎりが三角じゃなかった、バナナの皮がむかれていた……など、理由がわかることもあれば、何が地雷か予測不能のこともあり、毎日がカオス。公園やスーパーなど、所構わず、あお向けにひっくり返って大声で泣き叫ぶ姿は、まるで嵐のようで、毎日がサバイバルです。「すみません」「あ、イヤイヤ期で……」と謝り続ける毎日に、私のメンタルはすり減り、心はボロボロ。正直、笑える余裕なんて1ミリもありません。
そんなある日、車で1時間ほどの義実家に半年ぶりに子どもたちと顔を出したときのことです。ちょうどその日も、娘は何かが気に入らず、義実家に着くなり玄関で靴を投げて大泣き。「またか……」と私は半分あきらめモードで、「イヤイヤ期なんです」と気まずさを誤魔化すように言いました。すると義母は、「そうそう、嫌なときもあるわよね~、さぁ、こっちへ来ておやつを食べましょう」と、娘に寄り添ってくれ、私はホッとしたのです。それでもしばらく大泣きしていた娘でしたが、その後はあきらめたように泣き止み、おやつを頬張って笑っていました。
しかし、問題はここから。義父は娘の一部始終を見て、眉をひそめながら「いつもこうなのか?」と言うのです。私が「そうです~、ほんとに対応が大変で……」と口にすると、「これはなぁ、普段の育て方だよ。甘やかしてるから、そうなるんだろ。しっかり言い聞かせなさい。それとも、兄のほうをかわいがっていて、ほったらかしにしているとか?」と、さも原因を探しあてたような言い方をされ、心がモヤモヤしました。私は、「2歳のイヤイヤって、感情が爆発してるだけで、言い聞かせとか効かないんだよ……」「甘やかしてるわけじゃないし……。ワンオペで余裕のない私に、ほったらかしとか言われたら傷つく」と、喉まで言葉が出かかったものの、空気を壊すのが怖くて言い返せず、悔しさだけが取り残されていました。
義母が「まぁまぁ、お父さん……」と何かを言いかけたそのとき、近くで黙っておもちゃで遊んでいた4歳の息子が、突然、顔を上げて声を発したのです。「じいじ、ちがうよ。妹ちゃんは、まだ自分の気持ちが言えないだけなんだよ」と真剣な表情。その場が一瞬、静まり返りました。息子はおもちゃを置いて、さらに続けて「だから泣くんだよ。ママはわかってるよ。だからママは、ぎゅってするんだよ。こわい声で怒られたら、もっと泣いちゃうもん」と、義父のほうを見つめて言いました。
私は、びっくりして息を飲み、同時に涙が出そうに。義父も、何も言い返せずに「あぁ、そうか」と小さな声でつぶやくだけでした。義母は「お父さん(義父)よりも、孫くんのほうがママと妹ちゃんのことよくわかってるわね」「心配なのかもしれないけど、余計なこと言わなくていいのよ」と微笑みます。義父は「孫に教えてもらうなんてな……」と気まずそう。私の苦労も悩みも、息子だけはちゃんと見ていて、感じてくれていたんだと知れて、救われた瞬間でした。普段の状況を知らない誰かに何を言われても、これだけ息子がやさしい子に育っているのだから、私の子育ては間違っていないはず、と自信にもなりました。
子育てに正解はなく、どのママ、パパたちもただ一生懸命に向き合っているのだと私は思います。アドバイスや正しいと思うことを言われるよりも、やさしい言葉をかけられることのほうが、しんどいママ、パパの心を救うこともあるのだと実感。私も息子に恥じぬよう、誰かの頑張りや苦労をくみ取って、やさしい言葉をかけられる大人でなければと、改めて思った出来事でした。
著者:川中あいこ/40代・ライター。マイペースな4歳の息子と、おてんばな2歳の娘を育てるママ。夫は帰宅時間が遅く平日ほぼワンオペ。転勤族で、日本中のおいしい物が食べたいと思っている。老後はどこに住むか想像するのが好き。
作画:sawako
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年8月)
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