生後間もない赤ちゃんの頭にこぶのようなものができることがあり、不安になるママも多いのではないでしょうか? その症状は産瘤(さんりゅう)・頭血腫(とうけっしゅ)・帽状腱膜下血腫(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)と、大きく3つに分けられます。今回は、頭血腫について解説します。
頭血腫とは?
経腟分娩の場合、赤ちゃんは陣痛(子宮が収縮する力)に押し出されるように、頭で産道や子宮口を押し広げながら生まれてきます。このとき、赤ちゃんは頭を一時的に変形させることで、スムーズに産道を通ることができるようになっています。とはいえ、狭い道を通って出てくるので、産道や子宮口での圧迫によって体液の流れが滞り、むくみやコブができたり、出血したりすることがあります。
生まれてきたばかりの赤ちゃんのコブには種類があります。その1つである頭血腫は、産道を通るときに頭が圧迫されたり、吸引分娩や鉗子分娩など強い圧力が一時的に加わったりした際に、頭の骨と頭の骨を覆っている骨膜が剥がれて出血し、骨膜の下に血液が溜まった状態のことをいいます。帝王切開や逆子での出産でも発生することもあります。
頭血腫の特徴
頭血腫は、手で触るとプヨプヨした柔らかさを感じるコブのようなものです。産瘤とは違って、触った後の跡形は残りません。頭の骨と骨膜の間で、ある程度出血した後に、自然と出血は止まり、血液が溜まります。
赤ちゃんの頭蓋骨は数枚の骨がパズルのように組み合わさって作られているため、頭血腫は一カ所だけでなく、別々の骨の上に同時に発生することもあります。ただし、骨の継ぎ目を超えてコブができることはありません。
頭血腫は生後1~2日目から目立ち始め、生後数週間経つとコブの周辺部から硬くなり、触るとピンポン玉のようにペコペコ凹むようになって、やがて吸収されて消えます。小さいものでは生後1~2カ月で自然と消えますが、大きいものでは1歳ごろまで硬いコブのように触れることもあります。
赤ちゃんの頭蓋骨は、脳の成長に合わせて自然と少しずつ丸い形になっていきます。頭血腫のない赤ちゃんと頭の形を見比べてしまうこともあるかもしれませんが、焦らず見守りましょう。
頭血腫による赤ちゃんへの影響
頭血腫は頭の骨の外側での出血なので、脳への影響はありません。自然に吸収されるため、基本的に治療の必要はなく数カ月かけて目立たなくなり、ほとんどの場合、その後の頭の形には影響しません。
気を付けなければならないのが黄疸です。黄疸とは、ビリルビンと言う物質が皮膚や白目の部分に溜まり、全身が黄色っぽくみえることをいいます。
頭血腫がある赤ちゃんは、頭の骨と骨膜との間で出血を伴った状態であるため、出血した際に壊された赤血球がビリルビンという黄色い色素を作ります。ビリルビンは肝臓で処理されて、便と共に排泄されます。おなかの中にいたときは、赤ちゃんのビリルビンはお母さんの肝臓で処理をしていましたが、生まれてからは自分の小さく未熟な肝臓で処理するため、処理が間に合わず黄疸が強く出る傾向にあるのです。
生後1週間は、外見でわかる黄疸が起きることは生理的な黄疸なので問題はありません。入院中は生理的な黄疸の程度を毎日診察していますので、治療が必要となれば医師から説明があります。基本的に黄疸の程度が強くなるピークは過ぎたころに退院となります。出産した施設を退院した後に、赤ちゃんの見た目が黄色くなったような気がする、おっぱいやミルクをなかなか飲まないなど赤ちゃんに気になる様子があれば、出産した施設へ連絡して相談しましょう。
頭血腫のある赤ちゃんのお世話について
頭血腫の部分を強く圧迫することだけは避けましょう。頭血腫を触ると痛みを感じるのでやさしく触れるようにしましょう。授乳や沐浴(入浴)など、赤ちゃんの日常生活については通常どおりで大丈夫です。生後間もない時期に頭血腫の皮膚表面が傷ついていたり、赤くなっていたりする場合のケアについては、医師や助産師から教えてもらいましょう。
まとめ
生後間もない赤ちゃんの頭にコブのように頭血腫ができると、とても心配になると思います。入院中は医師や助産師に観察してもらいながら過ごすことができますが、不安であれば説明を聞いて、安心できることが重要です。頭血腫は時間の経過と共に、自然と消えてなくなります。赤ちゃんの発育にも影響しませんので、心配しすぎず育児を楽しみましょう。
【参考文献】
『新生児学入門』(医学書院)