「姪っ子が周りと同じものを持てずに仲間外れにされたらかわいそうだ」というのが夫の言い分。しかし、それは実の娘も同じではないでしょうか。
私が文句を言うと、「自分が冴えないからって美人の妹に嫉妬してるのか? かわいい姪っ子が羨ましいのか?」と返され、話になりません。確かに近所では、義妹親子は美人だと評判ですが、それが娘をかわいがらない理由にはなりません。
そんな夫が溺愛する姪っ子は、恋バナで盛り上がるお年ごろ。たくさんの男子生徒から「好きだ」と告白されているのだとか。夫は私に「さすが俺の妹の娘だよな〜あいつ(娘)は俺じゃなくてお前に似ちゃったから、男の子から言い寄ってもらえないだろうな〜」などと、まだ幼さの残る娘と姪っ子を比較し、娘が聞いたら傷つくようなことを平気で口にするのです。
娘の誕生日をドタキャンした理由
そんな中、娘の誕生日がやってきました。家族でお祝いする予定でしたが、夫は「急な仕事で泊まりになった」とドタキャン。しかしその翌日、私は義妹のSNSを見て怒り心頭に……。
夫は私と娘に嘘をつき、姪っ子の「推し活旅行」に義妹と一緒に付き添っていたのです。義妹のSNS投稿によると、夫が旅費を負担していたようで、日帰りで帰ってこられる距離にもかかわらず、奮発して高級ホテルに泊まったそう。
娘の誕生日より姪っ子を優先した夫に電話で詰め寄ると、夫はヘラヘラしながら「だって仕方ないだろ?」と言い、信じられない発言をしてきました。
「俺の妹に似た姪っ子のほうがかわいいだろ?」
「お前に似た娘は不憫だよな」
そう言って、私たち家族と一緒にいるよりもかわいい義妹親子と一緒にいるほうが楽しい。「一緒にいるだけで笑顔になれて癒されるんだよな〜」と悪びれる様子なく言ってきました。
あまりにひどい発言にがく然とし、涙が溢れてきてしまった私。何も言い返せずに私が黙っていると……。
娘に愛想を尽かされた夫
「かわいい娘じゃなくてごめんね?」
泣いていた私に気づいて隣に寄り添ってくれた娘が、電話口に叫びました。自分をあざ笑う父親の声が、漏れ聞こえてしまっていたのです。娘は、父親のひどい言葉ですべてを察したようで、今までも薄々感じていた「自分は父親から大切にされていない」ということに、はっきり気づいてしまったのでした。
「え?!」
娘から謝罪の言葉を聞いて、慌てる夫。「い、今のは冗談だ! 誕生日プレゼントは何がほしい?」と必死に取り繕いましたが、娘は夫からの誕生日プレゼントなど「いらない」と即答。そして、「パパもいらない!」と言ってのけたのです。
それから数日間、娘は夫とまったく口を利きませんでした。夫は私に取りなしを頼んできましたが、それを断り、記入済みの離婚届を突きつけた私。「私たちはもう邪魔しないわ。愛する妹と姪っ子とお幸せに」 そう言い残し、私は娘を連れ、実家へ戻りました。
私と娘が家を飛び出してから2週間。夫からはまだ離婚届が送り返されてきません。催促の連絡を入れると、夫は泣きそうな声で電話に出たのです。
「今、離婚どころじゃないんだ……」
なんと、義妹の不倫が発覚し、不倫相手との子を妊娠したというのです。しかもその不倫相手というのが、姪っ子の友だちのお父さんで……。
シスコン夫の悲惨な末路
この衝撃の事実に、姪っ子が義妹にブチギレ。壮絶な親子喧嘩が勃発し、間に挟まれ離婚どころではないという夫。不倫と妊娠が姪っ子の友だちのお母さんにバレ、とんでもない修羅場だと言います。「もう俺、どうしたらいいかわからない。妹がかわいそうで……」と弱音を吐き、「姪っ子も動揺してて、帰ってきて2人を支えてやってくれ……」と私に懇願してきました。
こんなとんでもない状況でも、追い込まれていてかわいそうだと義妹の心配をしている夫に、私は心底あきれ、何も言い返す気になれませんでした。
義妹親子や夫が困ろうと、もう他人になる私に助ける義理はありません。私は夫に、改めて離婚の意思を告げ電話を切りました。その後、弁護士を通じて親権や養育費についての条件を夫に伝え、無事に離婚が成立し、養育費も、給与から天引きで支払われることとなりました。
風の便りでは、結局、夫は義妹が請求された慰謝料を肩代わりし、妊婦で働けない義妹に代わって、義妹親子の生活費から、姪っ子の学費まで工面するため、昼夜問わず働いていると聞きました。一方の私と娘は、実家で両親と穏やかな日々を過ごしています。夫の言動によって娘は、とても傷ついたと思いますが、落ち込んでいる様子はなく、幸せな毎日を送っています。
◇ ◇ ◇
何をどう間違えたら、わが子より大切なものができるのでしょうか。自分にとって、本当に大切なもの、大切にしなければならないものとは何なのか。間違ってしまう前に、立ち止まって、胸に手を当て考えたいものですね。家族を捨ててまで義妹親子を優先した夫。せめて、これ以上周囲に迷惑をかけることのないよう、自らの責任を果たしてほしいものです。
【取材時期:2025年10月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。