こんにちは! 助産師のREIKOです。赤ちゃんが生まれるまでもう少し! といったとき、赤ちゃんあるいはママの状態が悪くなってしまったら……。そんなときは、急いで赤ちゃんを出産させてお産を終わらせなければなりません。でもどうやって?
みなさんが一番に思いつくのは帝王切開なのではないでしょうか? お産の進行具合によっては、帝王切開ではなく「鉗子分娩」や「吸引分娩」が選択されることもあります。
そこで今回は、急いで赤ちゃんを出産させる方法の1つ、「鉗子分娩(かんしぶんべん)」について、私が働いていた病院を例にお話ししたいと思います。
鉗子分娩の「鉗子」って?
日本産婦人科学会によると、鉗子分娩の歴史は古く、お産に取り入れられたのは1600年代とのこと。日本国内では、ネーゲル鉗子(ネーゲレ鉗子ということも)という鉗子が最も多く使われています。ほかにもシンプソン鉗子、キーラン鉗子などの種類があります。
これらの鉗子は、金属でできていて、だいたい40cm弱。手に取ると、ずっしりきます。鉗子分娩が可能な施設では、いつでも使えるように準備されていますよ。
鉗子分娩になるケース
ママの疲労などでお産が進まなくなってしまった、赤ちゃんが降りてくる向きが違っていてお産が進まない、赤ちゃんに苦しいサインが出ているなど、赤ちゃんを急いで出産させなければならないケースはいろいろあります。
鉗子分娩は、子宮口が全開大したあと、赤ちゃんを急いで出産させなければならない場合の選択肢の1つです。ただし、赤ちゃんが鉗子分娩が可能な位置まで下がってきていること、赤ちゃんが生存していることなどの条件があります。赤ちゃんが向いている方向によっては、鉗子分娩ができないこともあります。
鉗子分娩は、吸引分娩に比べて、より確実に赤ちゃんを出産させられるというメリットがありますが、技術的には難しいというデメリットも。そのため、一般的に吸引分娩が選択されることが多いようですが、私が働いていた病院では鉗子分娩も比較的多くおこなわれていました。
鉗子分娩だと、どのようにして生まれるの?
▲本来なら、下を向いて生まれてくるはずなのですが……
鉗子分娩は簡単にいうと、鉗子で赤ちゃんの頭を挟んで、赤ちゃんを引っ張り出すお産の方法です。鉗子は右側と左側に外せるようになっていて、それを1つずつ赤ちゃんの頭から頬にかかるように、ママの産道の中に入れていきます。両方の鉗子が入ったら、鉗子を合体させ、赤ちゃんをゆっくり引っ張り出していきます。
この一連の処置は、もちろん鉗子分娩の技術に長けた医師がおこないます。鉗子分娩の際には、産道が傷付いたり、会陰裂傷を起こしやすいので、助産師は医師と息を合わせて、しっかり会陰保護をおこないます。私が働いていた病院では、あらかじめ会陰切開をすることが多かったです。
鉗子分娩のリスクって?
鉗子分娩では、鉗子という大きな器具を使うこともあって、ママの傷が大きくなる恐れがあります。そのため、出血が増えてしまったり、お産後の痛みが強くなったりすることもあります。
赤ちゃんも、鉗子で挟んだ痕が見られることもあります。これは日に日に薄くなって消えていきます。また、鉗子をかける位置がズレて、目にかかってしまったりする恐れも。そのため、赤ちゃんが生まれたら、赤ちゃんが元気かどうか確認するのと同時に、鉗子の痕や変な場所に鉗子がかかっていなかったかなど、医師や助産師が確認していました。
私もお産の担当のとき、医師から「鉗子出して!」といわれると、やはり緊張感が増しました。緊急を要するのでママも不安になってしまうかもしれませんが、その都度、きちんとお話をします。万が一、鉗子分娩になってしまったとしても、赤ちゃんに会えるのは、本当にあと少しですよ。
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監修者・著者
助産師 REIKO
医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
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