【医師監修】低出生体重児とは?原因やリスク、成長や障害など誕生後の経過について
赤ちゃんが小さく生まれたら心配になると思いますが、低出生体重児について知識があれば、不安に思っていても赤ちゃんを見守っていくことができます。
今回は低出生体重児の原因やリスク、成長や障害など、誕生後の経過について解説します。
【目次】
低出生体重児とは?
以前は「未熟児」と呼ばれていましたが、2,500g未満の体重で生まれた赤ちゃんのことを「低出生体重児」と呼びます。
「未熟」という言葉が、さまざまな誤解を生むことから呼び名が変わりました。低出生体重児はさらに、1,500g未満を「極低出生体重児」、1,000g未満を「超低出生体重児」に分類することがあります。
40年前に比べ、低出生体重児の出生は増えています。その要因のひとつは医療の進歩だとも言われています。(※1)
低出生体重児の原因は?
低出生体重児の出生が増えていると同時に、全体に赤ちゃんの平均出生体重も低くなっています。厚生労働省の調査によると、出生時平均体重はこの40年間で男女ともに約200g減少したということです。
全体的に赤ちゃんが小さく生まれる傾向にあるなかで、低出生体重児となる原因は何でしょうか?
ほとんどの低出生体重児は、早産が原因だと言われています。それ以外に在胎週数に比べて小さい体重の児がいます。この在胎週数に比べて体重が小さい児が出生する原因は、胎内での栄養不良、妊娠高血圧症候群などの母体の合併症、胎盤や臍帯の異常、染色体異常などの先天異常などがあります。
また、妊娠中の喫煙や大量飲酒も低出生体重児の原因の1つです。 つわりが強く、長く続くときも胎児の発育が悪くなります。
そのほかにも、妊娠高血圧症候群になると、胎盤にも血液が行きにくいという影響が出るため、赤ちゃんが栄養不足になると言われています。
低出生体重児のリスク
在胎37週以上、2,000g程度の体重があれば、保育器に入らなくても体温調節ができますが、低出生体重児の多くは保育器で管理をします。
在胎37週より前、つまり早産で生まれた赤ちゃんは、体重だけでなく未熟性をもっているので、以下のような問題が出やすくなります。
・感染症になりやすい
・合併症(新生児仮死、低血糖、電解質異常など)が多い
・高ビリルビン血症になりやすい
・体温調節が未熟
・育児用ミルクを飲む力が弱い
・無呼吸発作が起こりやすい
など
その他、在胎週数が短く、出生体重が小さいほど、「動脈管開存症」や「新生児壊死性腸炎」「高カリウム血症」「脳室内出血」「未熟児網膜症」「脳室周囲白質軟化症」などのリスクが高くなります。
このようなリスクのある低出生体重児は、出生後にNICU(新生児集中治療室)に入院し、治療を受けることが多いです。
低出生体重児の届出
母子保健法によると、2,500g未満または妊娠37週未満の低出生体重児が出生した場合は、現在地の市町村に届け出なければならないとあります。
届け出る方法は「低体重児出生届」を保健所もしくは役所の母子健康担当部署へ提出します。養育医療の支援を受けるためには、さらに「養育医療給付申請書」と医師による「養育医療意見書」が必要です。
届けを出しておけば、保健師や母子訪問指導員など、専門家の訪問を受け、相談やアドバイスをもらうことができます。発育状況が心配な低出生体重児であれば、安心感にも繋がります。
提出期限は定められていませんが、できるだけ早目に提出しましょう。
母子手帳に添付されている「出生連絡票」が低体重児出生届を兼ねている自治体もありますが、「低体重児出生届」は自治体によって窓口が違うので、お住まいの役所で確認してください。HPからダウンロードして郵送、EメールやFAXでの返信、電話でOKという自治体もあるようです。
特に2,000g以下での出生の場合は、「未熟児養育医療制度」を受けることができ、入院や治療費の負担が軽減されます。こちらも自治体によって異なるため、お住まいの自治体に確認してみましょう。
低出生体重児の成長について
小さく生まれた赤ちゃんは、その後の発育曲線にあてはまらず、やきもきしてしまうパパやママもいるかもしれません。
発育や発達は早産児の場合は予定日からの月齢で評価します。週数に比べて身長や体重が小さいお子さんは、しばらくは正常の発育とは異なることが多いですが、3歳ぐらいになると追いついてきます。もし、3歳になっても低身長である場合は、内分泌の専門の先生に検査等をおこなってもらい、成長ホルモンを使うこともあります。
極低出生体重児や超低出生体重児になると、知的発達や運動発達にも心配が出てきますが、首のすわり、つかまり立ち、歩くといった発育は、出生時の体重が低いほど遅れる傾向にあると言われています。こまめに発育、発達の評価をしてもらえば安心できます。
低出生体重児の障害について
厚生労働省の調査によると、超低出生体重児の6歳児の障害頻度は、
・脳性マヒ 17.3%
・視力障害 2.4%
・聴力障害 3.2%
・知能、発達評価遅滞 26.6%
となっています。(※2)
まとめ
低出生体重児は、実は少なくはないことがわかりました。赤ちゃんが小さく生まれてしまったら心配事も多いかと思います、保健福祉センターや医療助成制度の助けを借りながら、わが子の成長を見守っていきましょう。
参考: