【医師監修】低出生体重児とは?原因やリスク、成長や障害など誕生後の経過について

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。

低出生体重児イメージ

 

赤ちゃんが小さく生まれたら心配になると思いますが、低出生体重児について知識があれば、不安に思っていても赤ちゃんを見守っていくことができます。今回は低出生体重児の原因やリスク、成長や障害など、誕生後の経過について解説します。

 

 

低出生体重児とは?

以前は「未熟児」と呼ばれていましたが、2,500g未満の体重で生まれた赤ちゃんのことを「低出生体重児」と呼びます。「未熟」という言葉が、さまざまな誤解を生むことから呼び名が変わりました。低出生体重児はさらに、1,500g未満を「極低出生体重児」、1,000g未満を「超低出生体重児」に分類することがあります。

 

40年前に比べ、低出生体重児の出生は増えています。その要因の1つは医療の進歩だとも言われています。

 

 

低出生体重児の原因は?

低出生体重児の出生が増えていると同時に、全体に赤ちゃんの平均出生体重も低くなっています。厚生労働省の調査によると、出生時平均体重はこの40年間で男女ともに約200g減少したということです。

 

全体的に赤ちゃんが小さく生まれる傾向にある中で、低出生体重児となる原因は何でしょうか?

 

ほとんどの低出生体重児は、早産が原因だと言われています。それ以外に在胎週数に比べて小さい体重の児がいます。この在胎週数に比べて体重が小さい児が出生する原因は、胎内での栄養不良、妊娠高血圧症候群などの母体の合併症、胎盤や臍帯の異常、染色体異常などの先天異常などがあります。

 

また、妊娠中の喫煙や大量飲酒も低出生体重児の原因の1つです。 つわりが強く、長く続くときも胎児の発育が悪くなります。

 

そのほかにも、妊娠高血圧症候群になると、胎盤にも血液が行きにくいという影響が出るため、赤ちゃんが栄養不足になると言われています。

 

 

低出生体重児のリスク

在胎37週以上、2,000g程度の体重があれば、保育器に入らなくても体温調節ができますが、低出生体重児の多くは保育器で管理をします。在胎37週より前、つまり早産で生まれた赤ちゃんは、以下のような問題が出やすくなります。


・感染症になりやすい
・合併症(新生児仮死、低血糖、電解質異常など)が多い
・高ビリルビン血症になりやすい
・体温調節が未発達
・哺乳力が弱い
・無呼吸発作が起こりやすい
など

 

その他、在胎週数が短く、出生体重が小さいほど、「動脈管開存症」や「新生児壊死性腸炎」「高カリウム血症」「脳室内出血」「未熟児網膜症」「脳室周囲白質軟化症」などのリスクが高くなります。このようなリスクのある低出生体重児は、出生後にNICU(新生児集中治療室)に入院し、治療を受けることが多いです。

 

 

低出生体重児の届出

母子保健法によると、2,500g未満または妊娠37週未満の低出生体重児が出生した場合は、現在地の市町村に届け出なければならないとあります。
 
届け出る方法は、「低体重児出生届」を保健所、もしくは役所の母子健康担当部署へ提出します。養育医療の支援を受けるためには、さらに「養育医療給付申請書」と医師による「養育医療意見書」が必要です。届けを出しておけば、保健師や母子訪問指導員など、専門家の訪問を受け、相談やアドバイスをもらうことができます。発育状況が心配な低出生体重児であれば、安心感にも繋がります。提出期限は定められていませんが、できるだけ早目に提出しましょう。
 
母子健康手帳に添付されている「出生連絡票」が低体重児出生届を兼ねている自治体もありますが、「低体重児出生届」は自治体によって窓口が違うので、お住まいの役所で確認してください。HPからダウンロードして郵送、EメールやFAXでの返信、電話でOKという自治体もあるようです。

 

特に2,000g以下での出生の場合は、「未熟児養育医療制度」を受けることができ、入院や治療費の負担が軽減されます。こちらも自治体によって異なるため、お住まいの自治体に確認してみましょう。

 

 

低出生体重児の成長について

小さく生まれた赤ちゃんは、その後の発育曲線にあてはまらず、やきもきしてしまうパパやママもいるかもしれません。


早産児の場合は出産予定日からの月齢で発育や発達を評価します。週数に比べて身長や体重が小さいお子さんはしばらくは正常の発育とは異なることが多いですが、3歳ぐらいになると追いついてきます。もし、3歳になっても低身長である場合は、内分泌の専門の先生に検査等をおこなってもらい、成長ホルモンを使うこともあります。

 

極低出生体重児や超低出生体重児になると、知的発達や運動発達にも心配が出てきますが、首のすわり、つかまり立ち、歩くといった発育は、出生時の体重が低いほど遅れる傾向にあると言われています。こまめに発育、発達の評価をしてもらえば安心できます。

 

 

低出生体重児の障害について

厚生労働省の調査によると、超低出生体重児の6歳児の障害頻度は、
・脳性マヒ:17.3%
・視力障害 :2.4%
・聴力障害: 3.2%
・知能、発達評価遅滞 :26.6%
となっています。

 

 

まとめ

低出生体重児は、実は少なくはないことがわかりました。赤ちゃんが小さく生まれてしまったら心配事も多いかと思います、保健福祉センターや医療助成制度の助けを借りながら、わが子の成長を見守っていきましょう。

 

 

 

 

 

 

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