【医師監修】妊娠中に注意したい食中毒の原因となる感染症の種類とは?

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医師太田 篤之 先生
産婦人科 | おおたレディースクリニック院長

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。

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助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

食中毒のイメージ

 

今回は、妊娠中に注意するべき食中毒についてお話しします。

 

 

妊婦さんが食中毒に注意しなければならない理由とは? 

妊娠中は妊娠していないときよりも抵抗力が弱まるため、細菌やウイルスなどに感染して、食中毒を起こしやすいです。細菌は温度や湿度などの条件が揃うと食べ物の中で増殖して、その食べ物を食べると食中毒を起こします。ウイルスは細菌のように増殖しませんが、食べ物と一緒に人間の体内に入ると増殖して食中毒を起こします。

 

すべての食中毒が胎児へ影響するわけではありませんが、食中毒を起こす一部の菌や寄生虫の種類によっては、妊婦さんが感染すると胎盤や胎児へ移行して、流産や早産、死産、あるいは生まれた赤ちゃんに影響を及ぼすことがあるため、日ごろから食中毒を起こさないように予防することが大切です。

 

 

特に妊婦さんが感染しないように気をつけるべき食中毒

妊娠中は特にリステリア菌とトキソプラズマに感染しないように注意が必要です。妊婦さん本人が感染しても必ず下痢などの症状が起こるわけではなく、無症状なこともあります。

 

リステリア菌

食中毒の原因となる菌。発育する温度の幅が広く、塩分に強く、冷蔵庫の中でも増殖する菌です。感染しても何も症状が起こらないケースもありますが、妊婦さんが感染すると倦怠感や発熱などインフルエンザのような症状を起こし、時に吐き気や下痢を起こすことがあります。

 

【リステリア菌による食中毒を起こす危険性のある食品】
生肉
レアステーキ ローストビーフ 生レバー 馬刺し 鳥刺し
ジビエ(野生鳥獣の肉) ユッケ

加熱殺菌されていない食品
生ハム 生ベーコン 生サラミ スモークサーモン 肉や魚のパテ
未殺菌の牛乳 コールスローサラダ コーンサラダ カニカマ

加熱処理されていないナチュラルチーズ
ブルーチーズ カマンベールチーズ チェダチーズ モッツァレラチーズ 

※日本製のものは加熱処理されている製品もありますが、製品によって異なるため食品表示を確認しましょう。輸入品は加熱処理していない製品が多いので、食べないほうが安心です。

 

トキソプラズマ

加熱が不十分な肉や、感染したばかりのネコの糞や土の中にいる寄生虫で、妊婦さんが妊娠中に初めて感染した場合は、流産や死産、赤ちゃんの脳や視力に障害(先天性トキソプラズマ症)が生じることがあります。

 

すべての妊婦さんが必ずしも先天性トキソプラズマ症を発症するというわけではありません。妊娠前からトキソプラズマに対する免疫を持っていれば胎児に感染しないと言われています。妊婦さん本人がトキソプラズマに対して免疫を持っているかは血液検査でわかりますので、心配であればかかりつけの産婦人科へ相談しましょう。

 

 

そのほか、気をつけたい食中毒

以下の菌も食中毒を引き起こします。流産や早産の直接的な原因にはなりませんが、母体の体力を消耗しないために、以下のような食中毒を起こさないように予防することが大切です。腹痛や下痢、嘔吐などの症状が続いて、感染源に心当たりがあれば、早めに受診して治療を受けましょう。

 

カンピロバクター

感染源:加熱が不十分な肉料理。
菌が付着した調理器具や手指が更なる感染を起こすこともある。
特 徴:加熱に弱い菌であるが、低温に強いため冷凍庫や冷蔵庫の中でも死滅しない。
潜伏期:2~5日
症 状:腹痛、下痢、発熱など
予 防:肉類は十分に加熱する。調理後の調理器具や手指は、しっかり洗浄・消毒する。

 

サルモネラ

感染源:卵
特 徴:食中毒を起こす代表的な菌。
食品を低温で保存し十分に加熱調理することで死滅する。
潜伏期:8~48時間
症 状:吐き気や嘔吐から始まり、腹痛や下痢を起こす急性胃腸炎が起こることが多い。
予 防:妊娠中は生卵を避ける。卵は必ず冷蔵庫に保管して、短期間に消費する。調理する際は、卵黄も卵白も固くなるまで十分に加熱して菌を死滅させる。

 

ウェルシュ菌

感染源:菌が付着した肉や魚の入ったカレーやシチュー、スープなどの煮込み料理。
特 徴:熱に強く、空気を嫌う。
潜伏期:6~18時間
症 状:腹痛や下痢
対 策:加熱調理したものを常温で放置しない。一晩以上、常温で放置した煮込み料理は食べない。

 

ノロウイルス

感染源:主に加熱調理が十分でない二枚貝(牡蠣、ホタテ、ムール貝など)
ウイルスに感染した人が調理した食品。
特徴:冬場に流行する食中毒や胃腸炎の原因となる。
潜伏期:1~2日
症状:嘔吐や下痢などの急性胃腸炎を起こす。
予防:貝類は十分に加熱する。調理後の調理器具や手指は、しっかり洗浄・消毒する。

 

 

妊婦さんが食中毒を防ぐポイント

妊娠中に家庭内で食中毒を防ぐには、食材を買うときから食べるまでの流れで、普段以上に気をつけたほうが良いポイントがあります。

 

1.買い物
消費期限をチェックする
肉や魚などは汁が他の食品に付かないように分けてビニール袋に入れる
肉や魚などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
寄り道をしないで、すぐに帰る

 

2.家庭での保存
肉、魚、卵などを取り扱うときは、取り扱う前と後に必ず手指を洗う
冷蔵庫は10度以下、冷凍庫は−15度以下に保つ
冷蔵庫は詰めすぎると冷気の循環が悪くなるため、7割程度を目安にする
冷蔵や冷凍の必要な食品は、帰宅したらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に保管する
肉や魚はビニール袋や容器に入れ、肉汁などが他の食品にかからないようにする

 

3.下準備
調理の前後、調理中はこまめにせっけんで手を洗う
野菜などの食材は流水でよく洗う
生肉や魚は、果物やサラダなど生で食べるものや調理の済んだものと離して置く
生肉や魚、卵を触ったら手を洗う
包丁やまな板は肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて使い分けると安全
冷凍食品の解凍は冷蔵庫や電子レンジを利用し、自然解凍は避ける
冷凍食品は使う分だけ解凍し、冷凍や解凍を繰り返さない
使用後のふきんやタオルは熱湯で煮沸した後しっかり乾燥させる
使用後の調理器具は洗った後、熱湯をかけたり台所用殺菌剤を使用して殺菌する
ゴミはこまめに捨てる

 

4.調理
調理の前に手を洗う
肉や魚は十分に加熱。中心部を75度で1分間以上の加熱が目安
電子レンジを使用するときは食材が均一に加熱されるようにする
調理を中断するときは、食材を冷蔵庫内へ保管する

 

5.食事
食べる前にせっけんで手を洗う
清潔な食器を使う
上のお子さんと食器、箸、スプーン、フォークを共有しない
作った料理は、長時間、室温に放置しない

 

6.残った食品
残った食品を扱う前にも手を洗う
清潔な容器に保存する
早く冷えるように小さい容器に小分けする
温め直すときも十分に加熱。中心部を75度で1分間以上の加熱が目安
時間が経ちすぎたものは思い切って捨てる
ちょっとでもあやしいと思ったら食べずに捨てる
冷蔵庫を過信しない

 

 

まとめ

妊娠中は抵抗力が弱いため、妊娠していないときよりも食中毒が起きないように予防することが大切です。普段よりも慎重に、食べるものを選択しましょう。もし、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が続いて、食中毒に心当たりがあれば、胎児に影響する食中毒、影響しない食中毒があるので、自己判断で下痢止めなど市販薬を内服することはせずに、早めに受診しましょう。

 

【参考】
産婦人科診療ガイドライン産科編2017

厚生労働省 妊娠中と産後の食事について
厚生労働省 食中毒
厚生労働省 これからママになるあなたへ
厚生労働省 リステリアによる食中毒について 
先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症 患者の会HP

 

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