【医師監修】妊娠中の結婚式の準備や計画の際に気をつけること
今回は妊娠中に結婚式を挙げたいと思っている妊婦さんのために、結婚式の準備や計画の際に気をつけることについてお話しします。
妊娠中に結婚式を挙げても大丈夫?
妊娠経過が順調で、挙式や披露宴をおこなう当日の体調が良ければ、結婚式をおこなうことはかまいませんが、自己責任かつ慎重な判断をしましょう。
下記のいずれの場合も、妊婦さん本人の体調やおなかの赤ちゃんの健康状態を優先すること、妊婦さんとパートナーの人生において優先すべきことを考えながら準備や計画をすることが大切です。
・妊娠をきっかけに結婚を決めて、出産前の結婚式を予定する場合
妊娠初期の心身が不安定な時期から準備を始めることになります。妊婦さん本人が「妊娠していること」を自覚して行動しなければならない時期ですので、無理をしないように気をつけましょう。妊婦さんの外見だけでは、体調の変化はわかりにくいので、パートナーと妊娠経過を共有して、十分に話し合いながら準備や計画を進めましょう。具体的な準備や計画については、経験豊富なウェディングプランナーを頼りましょう。
・結婚式の準備や計画をしている間に、妊娠しているとわかった場合
出産予定日から逆算をして、予定通りにおこなうのか、日時の調整をしたほうが良いのかなど、それまでの準備に変更が必要なこともあるので、早めに担当プランナーへ相談しましょう。
妊娠中に結婚式を挙げるなら、どの時期がよい?
一般的には安定期に入ってからと言われがちですが、妊娠経過は個人差があり、週数によって起こりやすい症状やトラブルは異なるため、医学的に安定期と言える時期はありません。
妊娠中に結婚式をおこなう予定があれば、担当医や助産師へ伝えましょう。妊婦健診では、妊婦さんの変化やおなかの中の赤ちゃんの成長を確認しますが、結婚式当日の妊婦さんや赤ちゃんの健康状態を確約するものではありません。
結婚式場を探す段階から、結婚式当日を迎えるまで、最短でも1カ月程は必要です。結婚式をおこなうと決めたときに妊娠経過が順調であっても、その後いつ・何が起こるかは誰にもわかりません。無事に結婚式当日を迎えるためには、普段以上に体調管理が大切ですので、担当医や助産師からアドバイスを受けましょう。
妊娠各期と結婚式をおこなう時期については下記を参考にしてください。
妊娠初期(妊娠0~15週)
つわりなど体調が優れないことが多く、心身が不安定になりやすい時期。妊娠をきっかけに、結婚式の準備に取りかかるという場合は、体の負担にならないように、パートナーやプランナーと打ち合わせする回数や方法について相談しましょう。
結婚式の準備をしている途中で妊娠が判明して、この時期に結婚式を予定している場合は、あまりおなかが目立つ時期ではないので、ドレスや着物選びに影響することは少ないですが、腹部の締め付けすぎはいけません。余裕のある服装を心がけ、挙式や披露宴の途中に休憩を取りやすい進行に変更したほうが良いでしょう。また、ゲストに対して妊娠を公表して挙式や披露宴をおこなうのかどうかについてもパートナーや家族と話し合いましょう。
妊娠中期(妊娠16~27週)
初期に比べて、心身が安定しやすい時期。挙式には最適な時期として、この時期に合わせて計画や準備を進めるようにプランナーから提案されることが多いでしょう。
バストやおなかが大きくなっていく時期ですので、ドレスや着物選びは直前で変更となる可能性があります。事前にドレス選びをする場合は、バスト部分が調整でき、おなか周りの大きさの変化に影響されないようなタイプのドレスを選ぶようにしましょう。
立ちくらみや足のむくみが起こりやすい時期なので、挙式や披露宴の途中に休憩を取りやすくするなど、体に負担のかからない進行が望ましいでしょう。
妊娠後期(妊娠28週以降)
出産の時期が近づいてくることで、おなかの張り、破水や性器出血など異常が起こりやすい時期。式場や施設によっては、この時期に結婚式をおこなわないように規則を設けているところもありますので、プランナーへ相談しましょう。
結婚式の準備をしている途中で妊娠が判明して、この時期に重なる場合は、予定を早める、あるいは出産後の落ち着いた時期におこなうことを検討してもいいかもしれません。特に、妊娠36週以降にあたる場合は、いつ生まれてもおかしくない時期に入りますので予定を変更しましょう。
妊娠中に結婚式を挙げるときに気をつけること【準備編】
妊娠中の結婚式の準備や計画に慣れているウェディングプランナーが在籍している式場を選んで相談しましょう。担当プランナーが、妊娠中の結婚式について十分な知識や経験をもっていること、妊娠経過を確認した上で希望に合わせた内容を提案してくれること、気軽に相談できる相手であることが重要です。
・式場選びについて
結婚式当日に何らかの症状があってもすぐ受診できるように、かかりつけの産婦人科から遠く離れていない式場や会場を選んだほうが安心です。式場や会場の近くに病院があっても、状況によってかかりつけではない妊婦さんの診察は断られる場合はあります。かかりつけの産婦人科から離れた場所で結婚式をおこなう場合は、当日に何らかの異常が起きた場合にどうするのか、パートナーやプランナーと話し合いましょう。
新婚旅行を兼ねて、リゾート地や海外での挙式を希望する妊婦さんもいますが、もし結婚式当日にその土地で入院や早産した場合を想像して慎重に判断しましょう。海外旅行の傷害保険では基本的に妊娠出産に関わる医療費はカバーされません。
・ドレスや靴などの衣装選びについて
妊娠中の体型変化に合わせて調整ができるドレスやインナーを選びましょう。おなかの部分だけでなく、胸や二の腕の部分もサイズアップするので、妊婦さん用にデザインされたドレスを選ぶとよいでしょう。妊娠によって、嗅覚や触覚が敏感になった妊婦さんは、ヘッドドレスやブーケは香りの少ないものを選びましょう。また、体型の変化に合わせて調整できる和装を選んでも良いでしょう。着物の重さや締め付けている感覚をやわらげるために、お色直しの衣装を準備すると安心です。
体型の変化だけでなく、体の重心も変化するため、かかとに高さのある靴や履き慣れない靴(ヒール、草履など)では、疲れやすく、転ぶ危険性もあります。写真撮影などのときだけ履いて、それ以外はかかとの低い靴を履くなど工夫しましょう。
・ブライダルエステ、ヘアメイク、ネイル、マツエクなどの美容について
結婚式当日までに美容に磨きをかけたいという妊婦さんもいると思います。妊婦さんの対応に慣れている施術者によるエステやトリートメントであれば受けてもかまいません。
妊娠による生理的な変化によって、肌質や嗅覚が敏感になりやすいので、結婚式当日は肌にやさしく、香りの少ない化粧品や整髪料を使ってヘアメイクしてもらうように事前に打ち合わせしましょう。衣装に合わせたネイルをする場合は、すぐに除去できるチップやマニキュアを選びましょう。ジェルネイルやスカルプチュアは簡単に除去できないため、緊急手術が必要となった場合に、治療や処置の妨げとなります。
また、マツエクも同様に、治療や処置の妨げとなります。妊娠中に結婚式をおこなうからこそ、妊娠している体を気づかいながら準備しましょう。
妊娠中に結婚式を挙げるときに気をつけること【当日編】
・母子健康手帳などを持参する
結婚式当日に体調が変化する可能性を考えて、母子健康手帳、かかりつけの産婦人科の診察券、保険証を持参しましょう。破水や性器出血が起きたときに使用するために、生理用ナプキンも持参したほうが安心です。つわりの時期で、特定の飲食物しか摂れない場合は必ず持参しましょう。
・「妊娠していること」を忘れない
おなかが大きくなると、同じ姿勢を保つことがつらいこともあります。ゲストへの気づかいも大切ですが、妊婦さんが立ちっぱなし、あるいは座りっぱなしという状態は避けたほうが良いです。挙式や披露宴の間に、適宜休憩を取るようにしましょう。胎動が感じられる週数であれば、いつものように胎動があるか気にかけましょう。
・生ものを食べない
妊娠中は妊娠していない状態よりも抵抗力が弱まるため、細菌やウイルスなどに感染して、食中毒を起こしやすいです。特に、食中毒を起こすリステリア菌や先天性トキソプラズマ症の原因となるトキソプラズマに感染しないように注意が必要です。結婚式の定番メニューで十分に加熱調理していない食材(例:生レバー、レバーパテ、ローストビーフ、生ハム、フォアグラ、生の魚介類)や、加熱処理されてないナチュラルチーズ(例:ブルーチーズ、カマンベールチーズ、チェダチーズ、モッツァレラチーズ)は食べないようにしましょう。
・アルコール飲料は飲まない
妊娠中に母親がアルコールを飲むと、おなかの中の赤ちゃんの体の発育、脳の発達へ深刻な影響を与え、胎児性アルコール症候群の赤ちゃんが生まれる可能性が高まります。アルコールの耐性については個人差が大きいため、妊娠中の飲酒量や赤ちゃんへ影響しない許容量は定められていません。乾杯程度でも飲酒することは避けましょう。
・結婚式を終えたら、婚約指輪や結婚指輪の保管方法を考える
妊娠中に、婚約指輪や結婚指輪のサイズが合わなくなる妊婦さんは少なくありません。サイズがゆるくて紛失した妊婦さんもいれば、妊娠に伴うむくみによってサイズがきつくなる妊婦さんもいます。特に帝王切開術のときは、貴金属を付けていると感電や火傷の原因となるため、産婦人科から出産前に外すように促すことがあります。結婚式を終えて落ち着いた生活に戻ったときには、すでにむくんで外せないこともあるので、早めに大切な指輪の保管方法を考えましょう。
まとめ
妊娠を理由に挙式や披露宴をあきらめたくないという気持ちもあるかもしれませんが、妊娠中だからこそ、妊婦さん本人の体調やおなかの赤ちゃんの健康状態を優先することが大切です。正しい助言やサポートを受けながら、自己責任で慎重に準備や計画をしましょう。
参考:
・産婦人科診療ガイドライン産科編2017