【医師監修】妊娠中に尿もれしやすい理由と改善する方法

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医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

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助産師古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

胃部不快感のイメージ

 

尿もれに悩む妊婦さんのために、今回は妊娠中に尿もれしやすい理由と改善するためのポイントをお話しします。

 

 

妊娠中に尿もれしやすい理由

妊娠中期(16週〜)以降は、大きくなる子宮が膀胱を後ろから圧迫するため、咳、くしゃみ、笑うなど、おなかに力が入ったときに尿がもれてしまう腹圧性尿失禁が起こりやすいです。ホルモンの分泌や、増大する子宮の負荷が原因で骨盤底筋群という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が緩むために起こります。
 

 

尿もれが起きたら気をつけること

一番に注意しなければならないのは、破水ではないかということです。尿もれであれば、もれた液体は黄色っぽく色がついていて、かすかにアンモニア臭がしますが、液体に色がなくにおいがはっきりしない場合は羊水が流れ出た状態、いわゆる破水の可能性があります。判断がつかない場合は、医療機関へ相談・受診して医師の診察を受けましょう。

 

妊娠中は生理的に尿もれを起こしやすいですが、なるべく尿もれを起こす機会を減らすために下記の点に気をつけましょう。

 

・あまり重いものを急激に持ち上げる動作はしない。
・上のお子さんの抱っこは立位ではなく座った状態でおこなう。
・咳やくしゃみが出そうになったら、両足を組んで外陰部に力を加えて尿もれを防ぐ。
・妊娠中に急激な体重増加をすると膀胱の圧迫を強めるので、体重管理に気をつける。
・便秘になると膀胱を圧迫して尿もれの原因になるため、便秘にならないように予防する。
・利尿作用のあるカフェインを含む緑茶、コーヒー、紅茶などの飲み物の摂取を控えるようにする。

 

骨盤ベルトは、緩みやすい骨盤を支え、下がった子宮などの内臓をあげることで、ゆがんだ骨盤や筋肉を整えると言われています。ただし、誤った巻き方をすると、逆に腹圧を高めてしまい、さらに尿もれしやすい状況を招く原因にもなります。骨盤ベルトを巻く場合は、正しい巻き方を販売者に教えてもらいましょう。

 

妊娠中の尿もれは水分の摂りすぎではなく、骨盤底筋群が弱くなることが原因です。水分を控えると、むしろ膀胱炎などを起こしやすくなります。尿もれが起きても水分を摂ることは控えないようにしましょう。
 

 

尿もれを改善・予防するためのストレッチ

妊娠中は骨盤底筋群の筋力を維持あるいは増強することが治療となります。尿もれが起きやすい場合は、骨盤底の筋肉強化のために下記のような運動をおこなうと良いでしょう。この運動は少なくとも1カ月以上、毎日繰り返し続けると効果が現れます。尿もれを予防する運動は、自己流で続けていると効果が出にくいこともあります。尿もれに悩む場合は、まず担当医や助産師へ相談しましょう。

 

①腹式呼吸
あお向けの姿勢で足を肩幅に開き、両膝を立てます。体をリラックスした状態で、おなかに手を当てて膨らみを感じながらゆっくりと深呼吸をします。深呼吸をすると横隔膜とセットで動く骨盤底筋も緊張と弛緩をするため、結果的に骨盤底筋のストレッチになります。起床時や就寝前、日中横になって休憩するときなどに、1日最低3回でもいいので毎日続けましょう。

 

②あお向けの姿勢
①と同じように、あお向けの姿勢で足を肩幅に開き、両膝を立てます。その姿勢のまま、1分間に10~15秒ほど肛門を締めます。おならを我慢するような感じです。残りの45~50秒は全身の力を抜いてリラックスします。この動作を10回、10分間繰り返しましょう。動作をするときに、おなかや足、腰などに力が入らないように意識しましょう。

【医師監修】妊娠中に尿もれしやすい理由と改善する方法

 

③あぐらの姿勢
あぐらの姿勢に座ります。支えがあるほうが安心であれば、壁を背もたれの代わりにして床に座るもしくは背もたれのある椅子を使用してもOKです。背筋を伸ばして、上半身を起こして息を吸いながら、膣や肛門を引き締めます。おならを我慢するような感じです。次に息を吐きながら腰を丸め、膣や肛門部分に入れた力をゆるめます。息を吸ったり吐いたりしながらの動作を10回繰り返します。

 

あぐら
 

①と②は、おなかが大きくなってくると、仰臥位低血圧症候群を起こす可能性があります。普段からあお向けになると気分が悪くなる方やあお向けの姿勢になることが苦痛な方は、③をおこなうなどして対応しましょう。

 

 

産後も尿もれは続く?

妊娠中から尿もれに悩んだ妊婦さんだけでなく、出産をきっかけに産後の尿もれに悩むケースもあります。特に吸引分娩や鉗子分娩などの処置をおこなった場合には、膀胱子宮靭帯が断裂して尿失禁になる頻度が高くなります。産後は産褥体操をおこない、尿もれを改善・予防していきましょう。もし、産後3カ月を経過しても尿もれが自然に治らない場合は、泌尿器科へ相談しましょう。

 

 

まとめ

妊娠中・産後の尿もれは、恥ずかしいと思うかもしれませんが、誰にでも起こる可能性があります。自分自身が尿もれを経験した場合は、骨盤底の筋力強化を心がけ、予防していくことが大切です。産前産後に起こるほとんどの尿もれは良くなりますが、良くなるまでには時間がかかるものです。ただし単純に「妊娠や出産のせいだから」と放置していると、いずれ閉経を迎えるころに膀胱や尿道のぐらつきなど尿失禁のトラブルを招く可能性が高くなるため、妊娠中や産後早めに改善・予防しておきましょう。


■参考■
・マタニティ・エクササイズ・マニュアル/監修:進 純郎 発行:社団法人全国保健センター連合会,ウィメンズヘルス リハビリテーション メジカルビュー社

日本泌尿器科学会HP

女性下部尿路症状診療ガイドライン 2013年11月発行 編集:日本排尿機能学会

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