疎遠な家族と、一通の招待状
両親は昔から妹のことばかりを溺愛し、僕にはあまり興味を抱いてくれませんでした。僕が大学への進学を希望したときも、両親は「妹の学費のために使うから」と取り合ってもくれなかったほど。
そんな関係のため、僕と妻との結婚式にも、家族は誰も来てくれませんでした。
ある日、僕たち夫婦のもとに妹の結婚式の招待状が届きました。僕は「なぜ今さら?」と戸惑いましたが、差出人は妹ではなく新郎。その名前を見た妻が、「えっ!?」と驚いていました。聞いたところ、新郎は、なんと妻の職場の部下だったのです。
僕は妻の会社の雑務を手伝ってはいますが、社員全員の顔と名前を把握しているわけではなく、彼の名前も知りませんでした。
後日、妻が新郎に確認したところ、彼は僕たちが兄妹であること、そして関係がうまくいっていないことを知っていたようでした。「僕たちの結婚式で、家族が和解できるきっかけになればと思って…。あの人(妹)には内緒で送らせていただきました」とのこと。
新郎は純粋な善意で、僕たちを招待してくれたようでした。妻の部下でもある彼からの招待を無下にすることはできず、僕たちは「大人の対応をしよう」と決め、式に出席することにしたのです。
妹「写真には写らないで!」
結婚式当日。僕たちが式場の親族控室へ向かうと、「なんで来たの! 呼んでない!」と妹。おまけに、式の直前に行われる親族写真の撮影では、
「嫌! この人たちと一緒には写らない!」
と拒絶。両親も「そうよ。絶縁したはずなのに、今さら何を?」と冷たく言っていました。その様子を見ていた妻が、そっと僕の腕を引き、「もう帰りましょう。こんなところで、私たちが無理に祝う必要なんてないわ」と静かに言ってくれました。
僕も、これ以上この場にいるのは無理だと感じ、妻と2人、会場を後にしようとしました。
新郎の失望と破談の結末
そのときです。
「待ってください!」と、慌てた様子の新郎が駆けつけてきました。
「社長(妻)と旦那様(僕)に招待状をお送りしたのは僕です。疎遠とは伺っていましたが、お祝いの席ですから、皆さんに祝福してほしくて…」
彼はそう言って僕たちを引き留め、妹たちをなだめようとしてくれました。しかし、妹の態度は変わりません。
そんな妹の姿を目の当たりにして、新郎の表情がみるみる曇っていきました。
「…僕は、君(妹)が家族を大切にする、やさしい人だと思って結婚を決めたんだ。でも、実のお兄さんに対するその態度は、僕が知っていた君じゃない」
結婚式自体はキャンセルできず、そのまま続行されたようですが、その場の空気は最悪に。
数日後、妻から「あの2人、結婚はなくなったそうだよ」と聞かされました。新郎は、僕に対する妹と両親の態度がどうしても受け入れられなかったようでした。
僕と家族の決別
それから間もなく、僕の携帯電話が鳴りました。表示されていたのは「妹」の文字。嫌な予感がしましたが、恐る恐る電話に出ると、開口一番、妹は「お金を貸してほしい」と言うのです。
事情を聞いて、僕は怒りを通り越して呆れてしまいました。妹と両親は、新郎の高い経済力を当てにし、結婚前から高級マンションに引っ越していたというのです。破談によって金銭的な援助が打ち切られ、妹の給料だけでは家賃が払えなくなり、困窮しているようでした。
「お義姉さん(僕の妻)はバリバリ働いているんでしょ? 少しぐらい助けてくれてもいいじゃない!」
妹の発言を聞いて、僕はきっぱりと拒否。
「僕が大学に行きたいと言ったとき、あなたたちは妹のためだと言って諦めさせたよね。今さら都合よく僕たちを頼らないで」
僕は、この一件で、彼らと完全に縁を切ることを決意。結局、妹と両親は高級マンションから退去し、質素なアパートで3人細々と暮らしているそうです。
一方の僕は、長年のしがらみからようやく解放された気持ちでした。今は妻の会社の仕事を手伝いながら、穏やかな日々を送っています。これからは、僕を支えてくれた妻と2人、温かい家庭を築いていきたいと思っています。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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