彼の“本音”を聞いて見えたものは…?
ただ、彼は「お前のことは本気だし、将来のことも考えている」とも言ってくれました。そのうえで、「まだ男として自信がない」「仕事でももっと上を目指したい」「結婚するなら、ある程度のポジションについてからにしたい」と、現実的な不安も打ち明けてきました。
私は、その気持ち自体は理解できました。今すぐ結婚を迫るつもりはなく、ただ「そろそろ将来のことをきちんと考えてもいい年齢だ」と思っていたからです。それでも、彼が自分なりに真剣に考えているとわかり、「ちゃんと考えてくれるなら、それでいい」とその場は納得しました。彼も「早く出世できるように頑張るよ」と冗談めかして言い、私はその言葉を信じて、ふたりの未来をどこか当然のように思い描いていたのです。
母が訪れた日、彼の“態度”に胸がざわつき…
それから1年が経ち、付き合って4年目に入ったある日のこと。私のマンションに、たまたま母が立ち寄りました。外出のついでにお米を届けてくれたので、私は「少しお茶でも」と家に上がってもらい、ささやかな団らんの時間を持とうとしていました。しかし、その場に居合わせた彼は、何も言わないまま帰ってしまったのです。
母が帰ったあとで、私は彼に「さっきの態度はさすがになかったんじゃない?」と率直に伝えました。返信がないので、「知らん顔で逃げるように帰るなんて非常識だよ」と送ると、彼は「あーめんど」「そういうの重い」「だるい」と、私の気持ちそのものを切り捨てるような言葉を返してきました。
さらに追い打ちをかけるように、「お前、マジで重いしつまんない」とまで言い放ちました。付き合って4年目、お互い結婚も視野に入れて付き合おうと話していたはずなのに――そう伝えると、彼は「視野に入れようとは言ったけど、結婚しようとは言ってないじゃん」「そういうの真に受けるところがまた重い」と、笑い飛ばすような反応をしました。
「ああ、私が夢を見ていただけだったのね」と、私は心の中で静かに理解しました。そして後日、私から別れを切り出すと、「お前みたいな重くてだるくて面倒な女、結婚したくもねーわ。いや〜お前みたいなかわいくない女に次なんてないと思うけどさ」と捨て台詞を吐かれ……私たちは別れました。
10年ぶりに再会、元彼から届いた“メッセージ”とは
それから10年。取引先との打ち合わせを終えた直後、私はスマホに届いたメッセージを見て、思わず眉をひそめました。差出人は、かつての元彼でした。先ほど名刺交換をしたばかりですが、まさかその直後に個人的な連絡が来るとは思っていませんでした。
メッセージには、「さっきは驚いた」「起業して社長をやっているなんて知らなかった」「しかも自分の会社の取引先になっているなんて、びっくりした」といった、浮ついた文面が並んでいました。久しぶりの再会にひとりで盛り上がっている様子が、文章からも伝わってきます。
しかし私は、もう彼の元彼女ではなく、彼が勤める会社と取引をしている立場です。そこで、「こういった個人的な連絡はやめてください。今後は、あくまで取引先としてご対応をお願いします」と、できるだけ簡潔かつ冷静な返事を送りました。
すると彼は、「今さら苗字呼びか」「一応元カレなんだからそんな冷たくするな」と、まるで昔の関係を持ち出せば距離を縮められるとでも思っているような内容を返してきました。その後もしつこく話を広げようとし、「年下のかわいい子を紹介してほしい」「お前の会社の20代の社員でもいい」などと要求してきます。さすがに呆れ果て、「もうこれで失礼します」と、再度はっきり告げました。
元彼「ちゃんと聞いてほしい」深刻な話とは
1カ月後のある日、元彼から「なんで俺を担当から外したんだよ!」というメールが届きました。私は落ち着いて、「あなたが私に意味のない連絡をしつこくしてくるからです」と伝えました。元彼は「食事に誘ってただけだろ!」と不満げでしたが、私はこれまで何度も「迷惑なのでやめてほしい」「私とあなたは取引先の関係でしかない」「ビジネスの話以外は不要です」と、はっきり伝えてきました。
すると元彼は、「一度しか言わないから、ちゃんと聞いてほしい」と、妙に深刻な口調になりました。渋々「はい?」と応じると、彼はこう続けました。「実は、お前と別れたことをずっと後悔しててさ。今も独身なのは、お前のことを引きずってたからなんだ」
何を言い出すのかと思えば、唐突な“美談”モードです。そして極めつきは、「結婚してほしい。ようやく気持ちが固まったんだ」という“プロポーズ”の言葉でした。私は思わず苦笑してしまい、「そう……。10年かかったね」と返しました。元彼は感極まったように「本当、待たせてごめんな……!」と、まるでドラマの主人公のような調子で言ってきましたが、私の中に湧いてきた感情はひとつだけ。「気持ち悪い」でした。
私は静かに、「気持ち悪いです。もうブロックします」と告げました。すると元彼は慌てて、「え!?なんで!?やっとプロポーズしたのに!」と取り乱しました。私がもう気持ちがないことを伝えると、彼は「本当は寂しいんじゃないの?俺と別れてから起業したんだろ?それってショックをバネにしたってことだよな?」と、自分中心の“感動ストーリー”に持ち込もうとしてきました。私は呆れながら、「起業は元々したいと思っていて、あなたとは無関係です」とだけ返しました。
暴走する元彼に…私が明かした“事実”とは
元彼はなかなかしつこく引き下がらず、「仕事のせいで今まで独身だったんだろ!? 40手前の女と結婚するやつなんていないぞ。お前を理解できるのは俺だけだ。結婚してやれるのも俺だけだと思う」と、完全に上から目線の発言を繰り返してきました。
「最初からずっと勘違いしていますよね?」元彼が「え?」と戸惑うのをよそに、私はさらりと伝えました。「私、結婚していますし、子どももいますよ」一瞬、時が止まったようでした。そして返ってきたのは「……あれ? でも名前、旧姓のままだったよな?」
そこで私は「独身時代に起業したので、仕事上は旧姓のままにしているだけです。戸籍上は夫の苗字になっています。子どもも、もう年長と小学2年生です」と説明しました。「子どもが2人も……?」彼は現実を受け止めきれない様子で、「嘘だよな……?」とつぶやきました。
そして私は、「とにかく、もう関わることはありません。あなたの会社との契約は完全に切ります。ここまでコンプラ意識の低い社員を商談相手として寄こすなんて、正直、絶望しました」と伝えました。元彼はようやく焦り、自分が原因で契約解除になったらまずいと青ざめているようでした。
元彼は「ごめん、もう連絡しないから!会社には言わないでくれ……!」と懇願しました。でも、もう遅すぎました。「ビジネスのことは、ビジネスとしてきちんとしなければなりません。私はあなたと違って、公私混同はしません。報告もしますし、契約も切ります」と淡々と答えました。
その後、私は別の会社に業務を依頼しました。元彼が勤務先でどのような処分を受けたのかはわかりません。ただ、私は今ある幸せをしっかり守っていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
恋人やパートナーとの未来を描くうえで大切なのは、言葉よりも“どれだけ誠実に向き合ってくれるか”。相手を信じること以上に、自分の人生を尊重してくれる人を選ぶことが大事なのかもしれません。自分の軸をしっかり持ち、納得できる選択をしていきたいですね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。