年の初めに倒れた義父。幸いにもすぐ回復したのですが、夫と私は外食ばかりの義父の食生活が気になっていました。義母はすでに亡くなっており、義父は料理が苦手だったのです。
そこで、週に何回か、私が作ったおかずを義父に届けることに。義父は大変喜んでくれたのですが、義姉は気に入らないようで……?
義妹の許せない発言
義父におかずを届けに行くと、義実家には義姉がいました。義姉は私を見るなり、「お父さんから聞いていた通りじゃない」「手作りのおかずって露骨すぎるくらいにいい嫁アピールよね」と嫌味を連発。
私が悲しくなって目を伏せても攻撃は止まらず、「父が倒れたとたんに媚を売るなんて……」「どんなに必死にポイントを稼いだって、父の遺産は渡さないからね」と、私の行動をすべて遺産目当てだと決めつけてきたのです。
たしかに、うちは裕福な義実家に比べたらお金はなかったと思います。しかし、母は私が真っ当な人間になるよう、必死で育ててくれました。家庭環境で勝手に私に「貧乏人」「意地汚い」のレッテルを貼ってくるなんて、許せませんでした。
私が「母は私を何不自由なく育ててくれました。実家や母を馬鹿にされる筋合いはありません」と精一杯反論しても、義姉は鼻で笑うだけ。
「貧乏人の言葉なんて信用できるわけない」「弟に父の遺産が渡るのは当然だけど、あんたには一銭もやらないからね!」と言い返されてしまったのでした。
義父の葬儀で、義妹に帰れと言われた私の返答
そして数年後――。
義父は穏やかな最期を迎えました。おかずを届けるたびに、「いつもありがとう」「とてもおいしいよ」と微笑んでくれた義父。私は涙をこらえきれず、葬儀中も何度もハンカチを目に押し当てていました。
葬儀の準備中、夫が打ち合わせで席を外した隙を狙って、義姉が現れました。「あら、泣いたって遺産は増えないわよ?」 義姉はニヤニヤしながら、「遺産目当てでうちに嫁いだ貧乏義妹は帰れ!」「あんたがいると父の葬儀が台無しになるわ」と暴言を吐き捨てます。あまりの言われように私が言葉を失っていると、義姉はさらに「どうせ弟との結婚も金目当てなんでしょ?」と畳みかけてきました。
いつもなら言い返していた私。しかし、ここはお世話になった義父の葬儀場です。ここで騒ぎになれば、喪主である夫や、何より天国の義父に迷惑がかかってしまいます。言い返したい気持ちをぐっとこらえ、私はあえて夫には告げずにその場を去る決意をしました。
「わかりました、帰りますね」「もうお義姉さんには関わりません」その代わり、お義姉さんも私に関わらないでくださいね」 そう言い残し、私は静かに葬儀場を後にしたのです。
明らかになった義父の遺言書と、義妹の末路
翌日――。
「ふざけんじゃないわよ!」と顔を真っ赤にして、わが家に怒鳴り込んできた義姉。「あんた、全部知ってたんでしょ!?」「しらばっくれてるんじゃないわよ!」と喚き散らしますが、何のことやらさっぱりでした。
私を背中に隠し、義姉の前に立ったのは夫。「姉ちゃん、まだ言ってるのかよ」「弁護士の前でちゃんと確認しただろ?」とあきれたように義姉に語り掛けます。
夫によると昨日、葬儀が終わった後に親族と弁護士立ち合いで遺言が明かされたそうなのです。夫は昨夜のうちに私に伝えたかったそうですが、泣き疲れて眠ってしまった私を起こすのは忍びなく、今日の朝改めて話そうと思っていた矢先の出来事でした。
どうやら義父は生前、「長女には法的に最低限保証される『遺留分』のみを残し、残りの財産はすべて次男の嫁に遺贈する」という内容の公正証書遺言を残していたらしいのです。それを知った義姉は激昂。
「なんで私が最低限の額しか貰えないのよ! 他人の嫁に多く渡るなんておかしいでしょ!」とその場でも暴れたそうですが、法的に有効な遺言である以上、どうすることもできません。
さらに、遺言書の最後には、義父の直筆で『遺産の配分についてはすべて私の独断である』『実の娘以上に尽くしてもらった、そのお礼のつもりだ』と書いてあったそうです。
「姉ちゃんは父さんが体調悪くなってからも一切看病しなかったよな」「配食サービスやヘルパーだって『金がかかる』って文句を言ってばっかりで……」 夫は静かに、しかしきっぱりと告げました。「そんな薄情な娘に、これ以上財産を遺したくないって気持ちになっても当然じゃないか!」
「で、でも……」としどろもどろになっている義姉。勢いのなくなった義姉を、夫は玄関の外に追い出し、「これ以上うちに関わるな!」とぴしゃりと扉を閉めたのです。
その後――。
夫は私の代理人として弁護士を通じ、義姉に対し法的に定められた最低限の「遺留分」をきっちりと支払う手続きを進めてくれました。「金の切れ目が縁の切れ目だ。これだけ払えば、姉貴も文句はないだろう」と、夫は寂しそうに、けれど毅然と決断してくれたのです。
後日、義父の法要の件で連絡をくれた叔母が、その後の顛末を教えてくれました。
予想よりもはるかに少ない金額しか手にできなかった義姉は、親族中に「弟夫婦に騙された!」と触れ回ったそうです。しかし、義父の生前の想いを知る親族たちは誰ひとりとして耳を貸さなかったとのこと。「あの子が親の介護もせずにお金だけ欲しがっていたのは、みんな知ってるからね。誰も相手にしてないから安心して」と叔母は笑っていました。結局、義姉は親族の集まりにも顔を出せなくなってしまったそうです。
私たち夫婦は、そんな義姉と連絡を絶ち、穏やかな日々を取り戻しました。
そして、私は義父が遺してくれた財産を受け取りました。通帳に記されたその重みのある数字は、ただのお金ではなく、義父からの「ありがとう」という精一杯のお礼であり、私を本当の娘のように想ってくれた温かい愛情そのもののように感じられます。
「ありがとう、お義父さん」 空に向かってそう呟きながら、私は義父が守ってくれたこの幸せな家庭を、夫と二人で大切に守り抜いていこうと心に誓ったのでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。