インターホンには隣人の男性の姿
私は夫と1歳の娘と3人暮らし。夫の転勤で約3年前に九州へ引っ越してきました。私たちが住むマンションの部屋の隣には、50代後半くらいの強面男性がひとり暮らしをしています。その男性とは会えばこちらからあいさつをしていましたが、男性はいつも愛想なく頭を下げるだけ。私は「ちょっと感じの悪い人だな」と思っていました。
そんなある日、夫は出張中で不在のなか、私たちの住む街は強い風を伴う大雨に見舞われることに。私は最低限の備えはしていたものの、ニュースで各地の大雨被害や物流が停滞しているという情報を見ては、娘と無事にこの期間を乗り切れるのかと不安に駆られていました。夕飯とお風呂を済ませたころには雨風が強くなり、私の不安は増すばかり。そんな私の気持ちが伝染したのか、この日は娘の夜泣きがひどく、なかなか寝てくれません。「この声が隣の男性に届いていないか」という恐怖も感じていました。「大丈夫、大丈夫よ」と自分と娘に言い聞かせながら、娘を抱っこしてリビングと寝室を行ったり来たり……。
そして、時計が午後10時を回ったころ、ピンポーンとチャイムが鳴ったのです。「こんな夜遅くに誰だろう」と私は恐る恐るインターホンを見ると隣に住む男性が立っています。驚いてしばらくどうしよう……と考えていると、再びチャイムが鳴りました。私が意を決してインターホン越しに「どうかしましたか?」と返事をすると、男性は低い声で「ちょっと出てきてほしい」と言うのです。「とうとう夜泣きがうるさいと苦情になったか……」と思った私は、謝る覚悟で玄関のドアを開けました。
すると、その瞬間男性は私に向かって何かを差しだしたのです。私は驚き「これは……?」と聞くと、男性は顎で娘を指しながら「腹減ってるんじゃないのか。こんな天気で買い物には出られなかっただろ」とビニール袋を押しつけてきました。中を見ると子ども用のお菓子とおにぎりが入っています。男性は続けて「コンビニくらいしか開いてなくて、こんなものですまんな」と言って部屋に戻って行ったのです。私はしばらくあっけにとられていましたが、改めて渡された食料を見て心があたたかくなる思いでした。
その翌日、大雨は何事もなく過ぎ去り、お礼を言いそびれた私は娘と一緒に男性の部屋へ。男性はぶっきらぼうに「大したことない」と言いましたが、娘を見る目は少し微笑んでいるように見えました。
聞くと男性には娘と同じ年くらいの孫がおり、自分の低い声で泣かせてしまった経験から、私たちと会っても言葉を発せなかったそうです。感じが悪いと思っていた態度は、娘を怖がらせないための男性なりの不器用な気づかいでした。人を見かけで判断してはいけないなと実感したとともに、愛想のなさや不器用さを乗り越えて、私たちのことを心配し、手を差し伸べてくれた男性を見習いたいと思った出来事でした。
著者:佐藤きなこ/30代・ライター。1歳の食いしん坊な女の子を育てるママ。娘と同じく食べることが大好きで、暇さえあれば飲食店の情報をリサーチしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)
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