当然、部屋数は足りません。本来なら娘の部屋になるはずだった部屋を義母が占領し、私たち夫婦と娘の荷物は寝室に押し込まれ、足の踏み場もないほどの寿司詰め状態になってしまいました。
「捨てられない」義母とのストレスフルな同居
同居してすぐに、義母の「ある癖」が私たちを苦しめ始めました。義母は新しいもの好きで次々と買い物をするのに、物を捨てられない性格だったのです。 義母の部屋に入りきらない趣味の置物や段ボールがリビングにまで侵食し、狭いアパートはさらに圧迫されていきました。
「そのうち出ていくから」。 義母は口癖のようにそう言っていましたが、新居を探す素振りは一切ありません。それどころか、私が共働きで忙しくしているのを知りながら、家事を一切手伝ってくれません。散らかしたゴミもそのまま、脱いだ服もそのまま。
たまりかねて私が掃除や片付けをお願いすると、義母は決まって涙を浮かべます。
「私は30年以上、主婦として家事を頑張ってきたのよ。ここに来てまでやれって言うの? ひどい……」
そんな義母の姿を見て、夫は私を庇うどころか「母さんの言う通りだろ」と私を責める始末でした。
狭いアパートに義姉まで呼び寄せる!?
そんなある日、義母がとんでもない提案をしてきました。
「娘(義姉)が妊娠したのよ。出産が不安だって言うから、ここに里帰りさせることにしたわ」
私は耳を疑いました。この家はすでにキャパシティオーバーです。義母一人でさえ手狭なのに、妊婦の義姉、さらには生まれてくる赤ちゃんまで……?
しかも義母は、家事どころか自分の身の回りのことさえしない人です。誰が義姉と赤ちゃんの世話をするというのでしょう。どう考えても、すべての負担が私にかかってくるのは目に見えていました。
「うちはただでさえこんなに狭いのに、無理ですよ! どこに寝かせるつもりですか?」
私が猛反対すると、夫と義母は「自分のことしか考えられないの?」「 冷たい女だな」と、信じられない言葉を返してきました。
「じゃあ、私たちが実家に帰ります」
私の反論に腹を立てたのか、義母が言い放ちました。
「そんなに嫌なら、あなたが実家に帰ればいいじゃない!」
すると夫も、その提案に便乗してきたのです。
「あ、いいじゃんそれ! 姉貴が里帰りしている3カ月くらい、お前と娘が実家にいればスペースも空くし。姉貴が出て行ったら戻ってくりゃいいだろ」
家族である私と娘を邪魔者扱いし、自分たちの都合だけで追い出そうとする夫と義母。その瞬間に、私の中で何かがプツリと切れました。
「わかりました。じゃあ、私と娘も里帰りしますね!」
私が冷静にそう告げると、夫は予想外だったのか一瞬「え!?」と驚いたような顔を見せました。おそらく、「出て行けと言えば妻が折れて、同居を受け入れるだろう」と高をくくっていたのでしょう。私が食い下がることもなく、すんなり了承したことが意外だったようです。
しかしすぐに「まあ、せいぜいゆっくりしてこいよ」と余裕の表情に戻り、夫は私を送り出しました。私は夫たちの気が変わらないうちに手早く荷物をまとめ、二度と戻らない覚悟を決めて家を出たのでした。
家を出てから1週間後のSOS
それから私たちは自分の実家に身を寄せました。両親は事情を聞いて激怒し、私たちを温かく迎え入れてくれました。
そして家を出てから1週間もしないうちに、夫から慌てた様子で電話がかかってきました。
「おい、早く帰って来てくれ! 家の中がぐちゃぐちゃで足の踏み場もないんだよ! 洗濯物はたまるし、飯もない!」
どうやら、私が家事をしなくなったことで家の中が瞬く間にゴミ屋敷化してしまったようです。さらに、義姉と義母は1日中言い合いをしており、夫はその板挟みで休まる暇もないとのこと。
「それに、俺の給料だけじゃ生活費が足りないんだよ。金だけでも送ってくれ!」
夫の情けない言葉に、私はあきれてものも言えませんでした。私が家計を管理し、共働きだからこそ生活が成り立っていたことに、彼はようやく気づいたのです。
「その家にはもう帰りません。離婚しましょう」
私がそう告げると、夫は絶句していました。 私は、これまで家事育児を放棄してきたこと、義母の横暴から私を守ろうとしなかったこと、そして私と娘を軽んじて追い出したことが婚姻関係を継続しがたい重大な事由になると伝え、弁護士を介して話し合うことにしました。
現在、私は離婚が成立し、実家で両親と娘と穏やかに暮らしています。 もしあのとき、無理をして義姉の里帰りを受け入れていたら、狭い部屋でストレスに押しつぶされ、義母と義姉、そして赤ちゃんのお世話までひとりで抱え込んでいたことでしょう。
自分と娘を大切にしてくれない人たちとは縁を切り、新しい人生を歩み出して本当によかったと心から思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。