みんなが嫌がる役員制度
娘が通う小学校の役員決めは「ポイント制」です。役員を経験すると「1ポイント」入り、未経験の「0ポイント」の人から優先的に次の役員を選抜するしくみになっています。
娘の入学時、周りのママさんから「早めに役員を済ませておかないと、高学年になってからもっと大変なPTA本部役員に選ばれる可能性があるよ」とアドバイスされていたため、私は早々に立候補するつもりでした。
実際の役員決め当日は、私と同じように「早めに終わらせたい」と考えるママさんが何人か立候補しましたが、ジャンケンの末、私はなんとか役員の座を勝ち取ることができたのです。
やがて年度末になり、3学期の保護者会が近づいたころ。「0ポイントの方は来年度のPTA役員選出のくじ引きにご参加いただきます。なお、やむを得ない事情により引き受けが困難な場合は、必ず期日までにお申し出ください」という通達がありました。
そして迎えた保護者会当日、事件は起こりました……。
「無理なので帰ります」突然の宣言に騒然!
保護者会の最中、私の隣の席にいたお母さんが突然立ち上がり、「先生、すみません……ここで失礼します」と言い出したのです。 そして私に向かってこう言いました。
「今日このあと役員のくじ引きがあると思うけれど、上の子の中学校で役員をやることになったので、小学校の役員まで対応できません。今日もこれから用事があるので帰ります」
そのお母さんは、本来ならくじ引き参加対象の方でした。私は驚きつつも、こう返しました。
「たしかに、掛け持ちだと難しいですよね……。でも、私の一存で『帰っていいですよ』とは言えないんです。これからくじ引きの手伝いにPTA本部の方が来るので、それまで少し待ってもらえませんか? 私から事情を伝えますので」
しかし、そのお母さんは「いや、できないから無理です」と聞く耳を持ちません。その場がざわつき始め、私はどうしていいか分からず困り果ててしまいました。
沈黙を破った勇気ある発言!
そのときです。あるお母さんが、毅然とした態度で一喝してくれたのです。
「みんな、やりたくなくても参加するんですよ。 できないなら、申し出る期限内に『できない』って伝えればよかったんじゃないですか? とりあえず、くじ引きのときに自分の口からPTA役員さんに伝えてください。誰も無理してやれと言ってるわけじゃないんですから」
正論を突きつけられ、帰ろうとしたお母さんは静かになり、席に戻ってくれました。
その後、くじ引きの手伝いに来た現PTA役員の方へ、彼女自身ができない理由を説明。
役員の方から全体へ「みなさんがよろしければ、今回は彼女をくじ引きから外しますが、いかがですか?」という提案がなされ、反対意見が出なかったため、そのお母さんは対象から外れることに。最終的に他の方が役員に決まり、会は終了しました。
波乱の役員選出くじ引きを無事に終えて、ホッとしました。 それと同時に今回の出来事を通して、物事を伝える際の言葉遣いや順序、態度は、人と関わっていくうえで本当に気をつけなければいけないと改めて痛感。
あの張り詰めた空気の中、みんなが言いにくいことをはっきりと、かつ的確に伝えてくださったあのお母さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
著者:藤井はな/30代女性・主婦。2017年生まれの女の子と2021年生まれの男の子のママ。出産を機に専業主婦になり、たまに在宅ワークをしている。元気いっぱいでやんちゃな2人に振り回されながら毎日育児に奮闘中! 趣味はピアノを弾くことと、簡単でおいしい料理を作ること。
イラスト:ちゃこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)