僕が転職を決めた理由
僕は専門学校を卒業後に、小さな会社でエンジニアとしてシステム改修などを担当していました。人手が足りなかったため、働きづめの毎日。自分の時間はまったく取れず、僕は憂うつな日々を過ごしていましたが、周りの人には相談できずに抱え込んでいました。
転機になったのは、大雨の帰り道に、ある女性と偶然出会ったこと。僕が働く会社近くの道で、傘が壊れて困っていた彼女に、傘を貸したことがありました。
後日、会社までの道を歩いていると、あのとき傘を貸した女性が。彼女も僕に気付いてくれ、「あの日はありがとうございました」と声をかけてくれました。そして、「何かの縁なので」と連絡先を交換したのです。
彼女……A子とは日々やりとりが続きました。やりとりを重ねるうちに、「A子なら、僕の悩みを聞いてくれるかもしれない」と勇気を出して相談してみることに。するとA子から、「うちの会社にもそういう仕事あるよ!」と言われました。これをきっかけに、僕は転職サイトを見るようになったのです。
大した技術も持ち合わせていない僕を採用してくれた会社を辞めるのは怖かったですが、A子の励ましもあって転職を決意。そして、A子がいる会社の中途採用を受け、晴れて入社したのです。
「合わない上司」との日々
僕が中途採用でA子のいる会社に入社して1年が経ったころ。僕にとって、新しい職場に飛び込むのは大きな挑戦でしたが、仕事自体はやりがいがあり、毎日が学びの連続でした。
ただ、最初の数カ月は良かったものの、次第に上司との価値観の違いが目立つように。上司は慎重で根回しを重視するタイプ。対して僕は、前職で長年、小規模開発を任されていたため、自走してどんどん作ることに慣れていました。
ある日、社内システムの改修を任され、僕は早めに仕事に取り掛かることに。さっそくデータを作成していました。ところが翌日、上司から「新しく取り掛かる前に、今までのデータを整理しろ。そんなこともわからないのか、これだから高卒は」と注意をされました。
上司は「大学卒しか認めない」というところがあり、僕はこうしてよく「高卒は」と言われることがあったのです。
A子への相談
上司との行き違いが続いたときのことです。休憩室で頭を抱えていた僕を見て、A子が声をかけてくれました。
「顔色悪いけど、大丈夫ですか?」
その一言で、張りつめていたものが緩んだ気がしました。事情を話すつもりはなかったのですが、いつも僕の話を真剣に聞いてくれるA子には相談してみようと決意。思い切って上司とのことを相談すると、A子は親身になって僕の話を聞いてくれて……。「一度、上司と話をしてみたらどう?」と言うA子に僕は頷きました。
A子は、人事部にいたということもあって、翌日、僕の部署に来て、上司との面談の場を設けてくれました。A子は、面談を通して、お互いのことをしっかり理解したほうがいいと言ってくれたのです。
面談が始まって早々、上司は僕にきつくあたりすぎていたと謝ってくれました。僕自身も歩み寄りができていなかったと思うと伝え、上司とは和解。
この面談がきっかけで、僕と上司の関係は少しだけ改善しました。A子がいてくれなければ、きっと辞める方向に気持ちが傾いていたと思います。
支えてくれる人の存在
面談の後、帰り際にA子とエレベーターで一緒になりました。
「今回みたいに、つらいときは誰かに頼っていいんですよ。誰かに相談することで、解決できることもあると思います」
そう言われたとき、僕は「確かに」と思いました。前職では、誰かに仕事の悩みを相談する余裕すらなく……。相談すれば、相手の迷惑になると思い込んでいました。その結果、社内の人には誰にも悩みを相談できず、辞めることになったのです。
でも今は、この会社に入る前から支えてくれるA子がいます。上司とは今も完璧に噛み合うわけではありませんが、僕も遠慮せずに意見を出し、必要なときにはA子にも相談に乗ってもらいながら、仕事の進め方を調整しています。
最近では、僕が担当したシステムをお客様が評価してくれ、部署内でも少しずつ信頼されるようになりました。会社は仕事をする場所ですが、人が集まって働く以上、同僚など人とのコミュニケーションは避けられません。今回の件で、僕は人とのコミュニケーションをとって働くことの大切さを知りました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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