快適で幸せな家族3人の食卓
お義母さんと私たち家族は、完全に食事を別にすることが決まり、増築して使わなくなっていたキッチンを掃除して、お義母さん専用にすることに……。













「冗談ではないです。今後はご自分で食事を用意いただくので、必要なものを買ってください」
義母の「ケンの話を本気にしたの? おバカさんね」という嫌みをさらりと受け流し、ユリさんは義母をスーパーへ連れて行き、淡々と買い物を済ませました。
そして迎えた、義母のいない初めての夕食。
食卓に並んだのは、辛いものが嫌いな義母に合わせて今まで我慢していた『キムチ鍋』です。
「うまっ! 最高!」
大喜びで鍋を頬張るレンくんを見て、ケンさんも「静かに飯が食えるっていいな……」としみじみつぶやきます。
「え? どうしたユリ?」
ふとケンさんが顔を上げると、そこには涙を流すユリさんの姿が。義母に会話を遮られることも、不快な食事マナーを見せられることもない……ただ、家族で笑ってごはんが食べられるという当たり前の光景に、ユリさんは感動してしまったのです。
「快適! お義母さんがいないだけでこんなに幸せなんだ」
ユリさんは、あたたかく幸せな家族3人の時間を過ごし、義母と離れることで手に入れた「平穏な食卓」をかみしめました。
しかし、ふと義母専用のキッチンがある廊下の先に明かりがついていないことに気づき、「傷ついちゃったかな……」と心配になる心やさしいユリさんなのでした。
◇ ◇ ◇
「お義母さんがいないだけでこんなに幸せ」と、平和な食卓に涙するユリさんの姿が印象的でした。これまでどれだけ神経をすり減らし、当たり前の幸せを奪われていたかが痛いほど伝わってきますね。
「家族だから」「家族なら」などという固定観念や情けが、実は自分たちを追い詰めていることもあるのですね。もし自分が同じ状況になったら、世間体や一時の罪悪感に惑わされず、自分と大切な家族が心から笑って、安心して過ごせる環境を守るために、相手が家族であっても、必要なときは勇気を持って「距離を置く」という選択をしたいですね。
小出ちゃこ