私が愛した夫は「敵」だった
「普通の母親は家事も育児も仕事も全部やってんだよ! お前は普通じゃない。人より努力して、普通になれ」
突然、外で働けと怒鳴られた私は、かつてのやさしいマサトを思い出していました。
















「お前は普通じゃない。半人前以下だ」
マサトさんに罵倒されたあと、蹴り飛ばされた洗濯物の中にあったアミちゃんのTシャツを震える手で握りしめ、涙を流すマミさん。
脳裏によぎるのは、かつてのマサトさんの言葉――。
「マミの生きやすいところで生きればいい。俺がそばにいる」
「他と同じ普通を目指すんじゃなくて、マミだからこそできることを見つけて、それを頑張ったらいい。俺がマミを守る」
過去に、職場の人間関係に悩み、傷ついていたマミさんを、全肯定してくれたやさしい人。味方でいてくれて、寄り添ってくれた人。それがマサトさんでした。
しかし今のマサトさんは、マミさんに「普通の奥さんは……」「普通の母親は……」と、自分の価値観や理想の家族像を押しつけ、怒鳴り散らしています。
泣きながら心の中で「普通になれなくてもいいって言ってくれたのは、あなたじゃなかったの?」とマサトさんに問いかけるマミさん。
「違う……」
ハッと顔を上げたマミさんは、「自己肯定感の低い私は都合が良かった……やさしさは支配するためだったんだ」とマサトさんの本性に気づいたのです。
「逃したくない」「この人しかいない」と思い、両親の反対を押し切って強引に結婚した夫。マミさんは、一番の味方だと思っていた存在が、敵に見えるようになってしまい、絶望するのでした。
◇ ◇ ◇
かつては「普通じゃなくていい」と言っていたのに、今は「普通になれ」と罵倒。この矛盾こそが、相手を油断させたり、依存させたりして支配するための手口だったのかもしれません。弱っている心につけ込み、「君を守ってあげられるのは僕だけ」と思わせる。純粋に感謝していたやさしい言葉の数々が、依存させるための毒だったと気づいたときの絶望感は計り知れませんね。
パートナーの言葉が、過去と現在で都合よく書き換えられ、自分が振り回されていると感じたら、それは愛ではなく支配のサイン。相手のやさしさが、自立や自由を奪うためのものではないか。一度立ち止まって、その言動の裏にある意図を冷静に見つめ直す強さを持ちたいですね。
抜け出せなくなってしまうに周囲に助けを求めましょう。頼れる人が思い当たらない場合は、専門機関に相談してみてください。相談窓口をいくつかご紹介します。
※よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
ガイダンスで専門的な対応も選べます(外国語含む)
0120-279-338 つなぐ ささえる(フリーダイヤル・無料)
岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226 つなぐ つつむ(フリーダイヤル・無料)
※こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施している「こころの健康電話相談」等の公的な相談機関に接続します。
0570-064-556 ※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
※DV相談ナビ
全国共通の電話番号(#8008)に電話をすると、お近くの都道府県配偶者暴力相談支援センターにつながります。
#8008(はれれば)※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
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ゆる山まげよ