「味が薄い」と不満を並べ、せっかく作った料理に醤油やソースをドバドバとかけるようになったのです。時には一口食べただけで「食えない」とゴミ箱へ捨ててしまうこともありました。夫の健康を願う私の配慮も、費やした時間や労力も、すべて踏みにじられる日々が始まりました。
結婚まで隠し通されていた、夫の本性
つい最近まで、夫は私の料理をおいしいと言って食べていたはずでした。突然の変貌に驚きましたが、どうやら彼は結婚前からずっと我慢して食べていたようでした。
後で知ったことですが、夫は独身時代、その異常なまでの調味料のかけ方に周囲から引かれ、何人もの女性に振られてきた過去があったそうです。結婚したのだから、もう自分を偽る必要はないと開き直ったのでしょう。それまで被っていた猫はどこへやら、遠慮なく本性を出し始めたのでした。
特に耐え難かったのは、外食をしたときです。イタリアンに行けば粉チーズを山のように追加し、フレンチに行けばパンが見えなくなるほどベッタリとバターを塗る……。一緒にいるのが恥ずかしくなるほどの光景でした。
これでは体を壊すのも時間の問題だと思い、何度もやめるように説得しましたが、夫はまったく聞く耳を持ちませんでした。
義母が伝授する“真っ黒な料理”の衝撃
私の料理は、素材のうま味やだしの味を生かしたもので、決してまずいものではなかったと自負しています。しかし、夫が求めていたのは、こってりと塩辛い「義母の味」だったのです。ついには夫が義母を家に呼び寄せ、私に手料理を習うよう強要してきました。
義母の味を知ろうと一緒にキッチンに立ちましたが、案の定、作られた料理はすべて味が濃く、色は真っ黒。醤油を煮詰めたようなにおいが家中に染みつくほどでした。
おいしそうに食べる二人を横目に、私はたった一口でギブアップ。夫の味覚を狂わせたのは、幼少期からこんなに濃い味付けばかりを食べていたからなのだと、妙に納得したのを覚えています。
「味覚が合わない」と突きつけられた離婚届
義母に習っても一向に改善されない私の食事にいら立ちを募らせた夫は、ついに私に離婚を申し出ました。理由は「味覚の不一致」です。
料理の味付けは、生活を共にする上で私にとっても譲れない部分でした。何より、本気で夫の体を心配していた自分自身がバカバカしくなり、私は離婚に応じることを決めました。
しかし、一生懸命作った料理に必要以上の調味料をかけられたり、目の前で捨てられたりした屈辱は忘れられません。夫婦最後の晩餐には、夫が望む通り、ギトギトでコテコテの脂っこい料理を並べてあげました。もう彼の体がどうなろうと、私には関係のないことでしたから。
5年後の再会…変わり果てた元夫
それから5年後。職場の近くで声をかけてきたのは、変わり果てた姿の元夫でした。かつての面影はなく、不摂生がたたったのか激太りし、肌もボロボロ。すっかり老け込んでいました。
聞けば、あの義母は倒れて寝たきりになり、自分自身も入退院を繰り返して仕事もままならないと言います。「お前の言うことを聞いていれば良かった、また一緒に暮らしてくれ」と身勝手なことを言ってきましたが、もちろん断りました。
立ち去ろうとする私を慌てて引き止めようとして、足がもつれて転倒し、自力で起き上がるのも一苦労な彼の姿を見て、改めて食事の大切さを痛感したのでした。
食は生活の基本です。健康に長生きするためには、健全な食生活は欠かすことができません。日常的なバランスの良い食事を、これからも大切にしていきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。