勘違いがエスカレートしたママ
11歳の息子が通うサッカー教室には、息子のひとつ上の学年の子どもを育てるAさんがいます。目鼻立ちがはっきりして華やかな外見のAさんは、普段から注目を浴びることが自分のステータスのよう。「昔から男性にモテた」「チヤホヤされることが多かった」と、自慢げに話している姿を何度も見かけました。
そんなAさんは明らかに、サッカー教室の20代のイケメン監督に夢中の様子。監督が声をかけるだけで、まるで自分だけが特別な存在であるかのように大げさに振る舞います。「私が重い荷物を持っていたら監督が一緒に運んでくれたの」といった日常の些細なことをはじめ、「監督に『保護者の方の応援がいつも子どもたちの励みになっています』って言われた」「監督が息子に『お前の声かけはチームを明るくする』って褒めてくれたの。やっぱり私が日ごろから息子にポジティブな声かけをしているのを聞いてるんだわ」など、保護者全体や自分の子どもに向けられた言葉さえも「自分への好意だ」「監督はいつも私のこと見ている」と、周囲のママたちに自慢げに話していました。
Aさんは監督がいると常にやさしくにこやかで、誰に対しても愛想がよく、子どもたちにも熱心に声かけをします。しかし、その態度は監督がいるときといないときとでは別人のようでした。裏では、あいさつをしても無視をしたり、平気で他のママたちの悪口を言ったりしていました。私を含め周りのママたちは、そんなAさんの二面性に正直うんざりしていたのです。
ある日、監督に気に入られていると勘違いしているAさんは、「うちの息子をもっと攻撃的なポジションにつかせてみるのはどうですか? 他の子と比べてシュートもじょうずですし、合うと思います。それと、最近入ってきたBさんちの息子にやる気を感じられません。うちの息子よりチームへの貢献度も低いし、少し厳しめにしてみては?」と言いました。その口振りや態度は、まるで自分が監督の右腕だと言わんばかり。
すると、監督は一瞬眉をひそめ、「Aさん、子どもたちは一人ひとり自分のペースで成長しています。それぞれの才能や性格を見て、彼らがサッカーを楽しんで行えるようにサポートするのが私の仕事です。人と比べて優劣をつけることや、厳しい言葉で追い詰めることは私の指導方針とは違います」と、他のママたちが聞いている前ではっきりと言いました。
Aさんは、まさか自分がそんなふうに言い返されるとは思っていなかったようで……。顔を赤らめ、何も言えなくなりました。その一部始終をしっかりと目にした私は、正直心の中でガッツポーズするほどスカッとした気分になりました。「自分は監督に気に入られているから大丈夫」という思い込みで指導者に意見する態度が、かえって印象を悪くした瞬間でした。
その後、監督の真意と、自分だけが特別ではないことを知ったAさんからは、これまでの「私は特別」という態度がすっかりなくなりました。他者を下げてまで自分をアピールすることは、かえって自分の評価を下げる原因になると目の当たりにした今回の一件。Aさんを反面教師に、他者を尊重し、謙虚な姿勢でいようと改めて心に決めたのでした。
著者:池田いおり/30代・ライター。11歳と6歳の活発な男の子を育てるママ。仕事と子育てに奮闘しつつも、自分の時間を何とか確保してリフレッシュしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年10月)