子どものための話し合いは、いつの間にか私自身への批判にすり替わっていきました。
休日の眼鏡姿や部屋着を引き合いに出し「女としての努力がたりない」と夫。それが私と子作りをしない本当の理由だと言うのです。
私とは子作りしないのに……
モヤモヤを抱えたまま過ごしていた数週間後の夜、夫から電話がありました。
「包み隠さずいうけど、浮気相手が妊娠した。離婚してほしい」思いもよらない言葉に頭が真っ白になりました。
しかし最近の夫の行動を思い返すと、遅い帰宅や急な外泊、スマートフォンをしきりに気にする行動、香水のにおい——それなりの期間、浮気相手とともに過ごしていたのでしょう。
さらに夫は、「お前のせいでこうなったんだ」と言い、浮気の原因を私に押しつけました。眼鏡姿や部屋着、すっぴん、そして日々の小言が耐えられないと……。
仕事と家事を両立しながら暮らす中で、完璧に振る舞えない日があるのは当たり前だと、私は思っていました。それに、一緒に暮らす以上「こうしてほしい」と伝えることは、小言ではなく、互いが気持ちよく生活するために必要なことだと考えていたのです。
そうして夫は、「家庭に癒やしがなかった」「男はそういうものだろ」と言い、自分の行動を正当化しました。
話し合いを重ねても、その価値観が変わることはありません。最終的に、私たちは離婚を選びました。
変わらない夫
離婚後、元夫は浮気相手と結婚したようです。周囲には「今度こそ理解のある女性だ」「元嫁とは違う」と話していたそうです。
けれど、結婚生活は恋人関係とは違います。一緒に暮らせば生活感が出て、子どもが生まれればなおさらです。身なりよりも、目の前のことで手いっぱいになる日が増えるでしょう。
案の定、離婚してしばらくしてから元夫から連絡が来ました。内容は奥さんの愚痴です。
「最近いつもすっぴん部屋着だ」「疲れていると言われて、前ほど構ってもらえない」と元夫は話します。その言葉を読んだとき、私は妙に納得してしまいました。
相手が誰であっても、同じことを繰り返すのでしょう。元夫は、女性に対して幻想を求めすぎているのです。いつまでも若くきれいで、文句を言わず癒やしを与えてくれる存在。そんな人間は、現実にはいないはずです。
相手が変わっても状況が変わっても、求める理想が非現実的なままであれば満たされることはないのです。きっと元夫はこの先も「思っていたのと違う」と感じ続けるのだと思います。
私はもう、その幻想に付き合う必要はありません。誰かの理想像になるために自分を擦り減らすのではなく、自分として穏やかに暮らしていくのです。
◇ ◇ ◇
夫婦で話し合うべき課題が、いつの間にか一方だけの「努力不足」として扱われてしまうのは筋の通らない話。大切なのは相手に理想を押し付けることではなく、現実の生活や変化を含めて納得のいく形を見つけ出すことではないでしょうか。
誰かの「こうあってほしい姿」を演じ続けなければ成り立たない関係は、長く続かないのかもしれませんね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。