当時、私は昇進したばかりで、年収が夫を上回っていました。自立して働く私に対し、夫は「家では常に完璧に片付いた部屋で、温かい料理を作って自分を立ててくれる妻」を求めていたようです。
プライドを傷つけられた夫は、自分を頼って、依存してくれる彼女を選び、私たちは離婚。その後、2人はすぐに再婚したと風の便りに聞きました。
私が産んでいない私の子?
離婚から1年と数カ月ほどが経ったある日、突然元夫から怒りに震える電話がかかってきたのです。
「育児を放棄してどこいった!?」
「他人に赤ん坊を預けるなんて何考えてる! 母親失格だぞ!」
いきなり怒鳴りつけられ、私はあぜんとしました。あまりに話が見えず問い返すと、元夫はさらにヒートアップ。
「とぼけるな! 彼女(元夫の不倫相手だった現在の妻)から全部聞いたぞ。お前が毎週のように、赤ん坊を彼女に無理やり預けてるんだろうが! 自分の子どもを他人、それも別れた夫の今の妻に押しつけて、恥ずかしくないのか! そもそもなんで勝手に産んだ!? 今さら認知もしないし、養育費も払わないからな!」
まだ何を言われているのか理解できていませんでしたが、私は冷静に返しました。
「出産したことないんだけど?」
私は、元夫の子を妊娠した過去も、もちろん出産したこともありません……。
「は?」
一体誰の話をしているのかと私が問うと、電話の向こうで、なぜか元夫は絶句していました。
真実を知り、絶望する元夫
それからポツリポツリと話し出した元夫の話を整理すると、驚愕の事実が浮かび上がってきました。
ここ1カ月ほど、彼女がたびたび「あなたの元妻(私)が『不倫の過去を会社や近所にバラされたくなければ、子どもを預かれ』と脅してきた」と言って、生後半年ほどの赤ちゃんを私から無理やり預けられていたというのです。そして、「自分が産んだわけではないのにあなた(元夫)に似ていてお世話をするのがつらい」と泣きつき、元夫にお世話を押しつけていたそう。
元夫は、社会的な立場を守りたい保身と、私からの理不尽な命令に逆らえない、か弱い彼女を守らねばという義務感から彼女の言葉を信じ込み……彼女の口ぶりから自分の子だという責任感もあったようで、慣れない育児に奔走していたと言います。
しかし、自分ばかりに負担がかかることに限界を迎え、私に抗議してきたというわけでした。もちろん私には、彼女を脅迫した覚えなどありませんが……。
「私、あなたと離婚してから彼女と連絡なんて一度も取ってないし、そもそも居場所も知らないわよ?」
元夫の話を聞き終え、淡々と事実を告げた私。すると、信じていた彼女への疑念が一気に膨らんだのか、嘘に気づいて絶望したのか、元夫は言葉を失っていました。
不倫し、不倫され、苦しむ結果に
私は、元夫と彼女と話し合う場を設けました。私と元夫の追及によって、彼女の嘘は次々と破綻していったのです。まず明らかになったのは、赤ちゃんの正体。私が無理やり彼女に預けていたという「私と元夫の子」は、なんと「彼女の妹の子」でした。
彼女は、シングルマザーで多忙な妹から「ベビーシッター代」として小遣いをもらい、子どもを預かっていたのです。しかしお世話は面倒なので、私の名前を使って「元妻から脅迫された」という作り話で元夫にお世話を丸投げ。自分はその間、受け取ったベビーシッター代で遊び歩いていたのでした。
さらに衝撃だったのは……彼女は自ら預かった妹の子のお世話を元夫に丸投げしている間、自分は別の男性とデートを満喫していたという事実。これは、元夫が興信所に彼女の調査を依頼したことで明らかになりました。彼女は「繊細で守ってあげたくなる女性」などではなく、平気で嘘をつき、他人を利用する女性だったのです。
すべての嘘が露呈し、元夫は彼女との離婚を決意。彼女もすべてを認め、すぐに2人の離婚は成立したそう。しかし、信じていた彼女に裏切られていたことがよほどショックだったのか、彼女との離婚後、元夫は仕事も続けられなくなり、実家に戻ると、ひきこもり生活をするようになったのだとか……。
一方私は、やさしく誠実なパートナーとめぐり会い、今は彼と2人で幸せに暮らしています。この幸せを大切にして、温かい未来を築いていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
誰かを傷つけて得た幸せは、長くは続かないものです。嘘や裏切りは、形を変えて必ず自分に返ってくるものなのでしょう。理不尽な出来事に遭遇したとき、怒りや悲しみに沈んでしまうこともあります。しかし、事実を冷静に見極め、自分の人生をしっかりと歩んでいくことで、いつかつらい過去を乗り越えられる日が来るはず。過去にとらわれるのではなく、自分の幸せを守るために自分を貫きたいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。