義弟は夫と顔こそ瓜二つですが、性格は正反対。義弟は昔から金遣いが荒く、ギャンブルにのめり込んでいます。定職に就いても長続きせず、年がら年中、義両親や夫にお金の無心にやってくるのです。
そんな義弟を長らく援助してきた義両親でしたが、ついにさじを投げてしまい……義弟の依存先は私たち夫婦へと集中しました。
恐れていた事態が…
「兄貴は結婚して冷たくなった」お金の援助を断るたび、義弟はそう嘆きます。夫から「絶対に渡すな」ときつく言われているため、私が毅然と断ると、捨て台詞を吐いて去っていくのが日常茶飯事でした。
義両親から見放され、私たち夫婦からも援助してもらえない義弟は、とうとう消費者金融での借り入れを重ね始めました。借金はあっという間に膨れ上がり、返済が滞り、夫に泣きついてきました。
夫が「自分でなんとかしろ!」と拒絶すると、「家族だろ! 弟を守るのも兄の使命だ!」と逆上。ついには「離婚しろ」「兄貴を返せ」と私にまで詰め寄ってくるようになりました。そして、恐れていた事態が起きたのです。
夫の海外出張中、私に塾に行っていた娘から授業が始まるであろう時間に、メッセージが届きました。
「ママ! お迎え来なくていいよ!」
「パパが来てくれたって!」
「ダメ! パパじゃないの!」
私は背筋が凍りました。夫は今、日本にいません。娘もそれは知っているはずですが、パパが予定を早めて帰ってきたと喜んでいる様子です。娘を迎えに行ったのは、義弟に違いないと直感しました。お金欲しさに娘を利用しようとしているのでは……?
「え?」
娘からひと言返信が来たあと、私は「おじさんが勝手に会いに行ったみたい」「パパじゃないよ!」「ダメ! 教室から出ないで!」とメッセージを送りましたが、授業が始まったのか既読にならず……。
常軌を逸した義弟の行動
私は震える手で塾へ電話をかけ、事情を説明し、私が迎えに行くまで義弟が娘と接触できないよう、娘を保護してほしいと依頼しました。その後、私は塾へ急行。塾側の迅速な連絡により、ビルの警備員が対応し、義弟は塾内に入れずに足止めされていました。娘が私を信じて塾の先生の指示に従ったこともあり、義弟との接触を未然に防ぐことができました。
義弟は何食わぬ顔で「迎えに来ました」と塾の入り口で告げていたそう。夫が娘を迎えに行くこともあるため、夫と同じ顔の義弟が来ても塾の先生やスタッフの方が不審に思うことはありません。それを利用して、義弟は夫になりすますためか、わざわざスーツまで着用していました。
帰りは塾の先生が義弟に遭遇しないようにと、私と娘をビルの従業員用出入り口から外に出るよう案内してくれました。帰宅した後、私が義弟に電話をかけると、「ただ姪っ子を迎えに行っただけだろ。家族なんだからいいじゃないか」と言います。何をしようとしていたのかは話しませんでしたが、娘を人質にお金を要求しようとしていたのでしょう。さすがに危害を加えるつもりはなかったと思いますが、私は強い口調で非難しました。
「次に同じことをしたら警察に通報します」私がそう告げると、ようやく事の重大さに気づいたのか、義弟は黙り込みました。
しかし数日後、義弟から再び泣きつくような連絡が入りました。「今すぐ200万円用意してくれ。じゃないと大変なことになる」怪しい金融機関からもお金を借りていたようで、家に押しかけられ、返済を迫られているというのです。
実は、孫に危険が及んだことを知った義両親が、義実家に義弟の借金を取り立てにきた債権者に義弟の住所を伝えていたのです。なんと義弟は、自分のところに取り立てが来ないよう、義実家の住所と連絡先を申告してお金を借りていたのでした。
義両親と私たち家族の決断
親に売られたと嘆く義弟ですが、自業自得。義弟と縁を切る決断をした義両親は、義実家を売却し、引っ越しの準備を進めました。そして、新居の住所は義弟には知らせず連絡先もブロックし、遠くへ引っ越しました。
義弟はその後も「これからは心を入れ替えて働くから今回だけ助けてくれ」と懇願しましたが、夫も私も一切の手助けはしませんでした。そしてこれを機に、私たち家族も以前から夫に打診があった海外赴任の話を受けることに。物理的に距離を置いて、平穏な生活を取り戻すためです。
義両親も私たちも新天地へ引っ越し、平穏に暮らしを手に入れました。私たちも義弟の連絡先はブロックしてしまい、完全に連絡を絶っているため、どんな生活をしているかはわかりませんが、きっと苦しい生活を送っていることでしょう。
義両親とは定期的にビデオ通話で近況を報告し合っていますが、2人は現在、のんびり夫婦水入らずの穏やかな生活を送っています。私たち家族3人も、慣れない海外生活に困ることも多いですが、何でも楽しみながら幸せな毎日を送っています。
◇ ◇ ◇
保護者を装って子どもを迎えに行く行為は、状況によっては誘拐などの法的問題に発展するおそれがあります。もし不審に感じる場面があれば、まずは塾・学校へ相談し、必要に応じて110番通報を含む対応も考えましょう。
家族だからといって、無制限に支え続けることが正解とは限りません。毅然とした態度で突き放すことが相手のためになることもありますよね。そして、それは自分たちの生活を守るための防衛策にもなり得ます。義弟に自立を促すには、必要な決断だったのだと思います。
誰かと距離を取りたいとき、自分がその場を去るという選択はなかなか勇気のいる決断ですが、何よりも守るべき子どもと自分たちの生活を最優先に行動したいですね。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。