久しぶりの再会は「退職した先輩」の独演会
先日、2年前に退職した先輩を囲むささやかな飲み会が開かれました。先輩は在職中、何かと高圧的でマウントを取りたがるタイプ。「正直苦手だった」というのが私の本音でしたが、幹事をする後輩に同情して、渋々参加することに。
最近、会社は何かと慌ただしく、現場もバタバタしていましたが、そんな愚痴でも言い合えたらいいかと思っていました。
居酒屋に現れた先輩は、開口一番、驚きの言葉を放ちました。
「お前ら、まだそんな会社にいるの?」
乾杯もそこそこに、先輩の独演会がスタート。「今の会社は評価制度がしっかりしてる」「俺、転職して大正解だったわ」。古巣である今の会社を「沈みかけの船」呼ばわりし、自分がいかに良い選択をしたかを語り続けます。
「元気ないんじゃないか?まあ、あの会社じゃ無理もないか」
うわぁ……始まったよ。私は心の中でため息をつきながら、愛想笑いを浮かべるしかありませんでした。
止まらない「給料マウント」にうんざり
話は次第にエスカレートし、ついに一番聞きたくない「お金」の話へ。
「俺さ、今のペースだと、もうすぐ月給40万届きそうなんだよね」
チラチラと高そうな腕時計を見せながら、"お前らの給料じゃ、将来不安だろ?”と言わんばかりの視線を向けてきます。財布を出すついでに、クレジットカードのランクまでさりげなくアピール。
「はあ、すごいですね……」
私は愛想笑いを浮かべるしかありませんでした。場の空気は完全に冷え切っています。後輩も「すごいっすね」と口では合わせるものの、白けきった様子。
その時です。
「すみませーん!遅れました!」
遅れてきた同僚が放った「無邪気な爆弾」

息を切らせて駆け込んできたのは、同僚でした。彼は真面目で、少し天然なところがある愛されキャラです。
先輩はここぞとばかりに声をかけました。
「おお、遅いぞ!相変わらず残業続きか?安月給でこき使われて、可哀想になあ」
すると、同僚はジョッキを片手に、ニコニコしながらこう言ったのです。
「いやー、最近、ウチの会社が大手企業と業務提携し始めたじゃないですか!そのせいで増産増産で現場がてんてこ舞いで……」
えっ?という顔をする先輩をよそに、同僚は続けます。
「でもそのおかげで、業績がめっちゃ良いらしくて!社長が『特別ボーナス』を2回も追加してくれたんです。おかげさまでベースアップもあって、今が稼ぎ時でふんばってますよ!」
「……て、提携?特別ボーナス……?」
先輩の表情が、みるみるうちに曇っていきました。そう、実は先輩が退職した直後、会社は水面下で進めていた大手企業との提携契約を締結。業績はV字回復し、社員への還元も大幅に増えていたのです。
基本給+年2回のボーナス+今回の特別ボーナス2回……。冷静に計算すれば、会社に残ったメンバーの年収は、先輩が自慢していた「もうすぐ40万」という額を優に超えているのは明らかでした。
「へ、へえ……。そうなんだ。よかったじゃん……」
先輩の声は震えていました。さっきまでの威勢はどこへやら。急にスマホをいじりだし、視線を合わせようとしません。その滑稽な姿に、私は胸の中で小さくガッツポーズをしました。
逃した魚は大きかった
その後、先輩は給料の話を一切しなくなり、「明日は早いから」と二次会にも行かずにそそくさと帰っていきました。「沈みかけの船」だと思って見下していた会社が、自分が降りた後に豪華客船に変わっていた……。そのショックは計り知れません。
会社に残るという選択も、決して間違いではなかった。意気消沈して去っていく先輩の小さな背中を見送りながら、私は「明日からも頑張ろう」と清々しい気持ちで帰路についたのでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています。