時代錯誤な価値観を押しつける上司
新しく上司として赴任してきたB山部長は、いわゆる男尊女卑的な考え方が色濃く残る人物でした。発言の端々から偏った価値観がにじみ出ており、職場全体の雰囲気も一気に重くなりました。私自身、次第に働きづらさを感じるようになっていました。
そんな折、後輩のA子さんが次の昇格試験を受けるべきか悩んでいる様子に気付きました。彼女は誰よりも現場を回り、技術力も信頼も十分にある努力家です。それでも自信を持てずにいる姿を見て、私は思わずこう声をかけました。
「受けてみたら? A子さんならきっと大丈夫だよ」
昇格への意欲を打ち砕いたひと言
意を決したA子さんは、その意思をB山部長に伝えに行きました。しかし、返ってきたのは想像以上に冷たい言葉でした。
「昇進? 君は女性だろう。感情に左右されやすい人間は、人の上に立つ役職には向かない」
A子さんは言葉を失い、ただ立ち尽くすしかありませんでした。B山部長はさらに、「男性中心の現場ではなめられる」「古い取引先との付き合いも難しい」といった理由を並べ立て、昇格試験を受けること自体を否定したのです。
正論のように装ったその言葉に、A子さんの目から光が消えていくのがわかりました。その様子を聞いた私は、強い違和感と嫌な予感を覚えずにはいられませんでした。
理不尽さに向き合い、覚悟を決めた夜
話を聞いた私は、居ても立ってもいられず、B山部長に直接意見を伝えました。A子さんがこれまで積み重ねてきた努力や、確かな技術力、周囲からの信頼について説明し、「不安要素はあっても、挑戦する価値は十分にある」と訴えました。
しかし返ってきたのは、「彼女のためを思って言っている」「背伸びして無理な役職に就くものじゃない」という言葉だけ。昇格試験を受ける機会すら与えない姿勢に、私は悔しさでいっぱいになりました。
その夜、雨の中で必死に外回りをしていたA子さんを見かけました。泣きはらした顔で「背中を押してもらったのに、ごめんなさい」と謝る彼女に、私は思わずこう口にしていました。
「よかったら、一緒に起業しない?」
私は、前社長への恩義があったこと、この会社が好きだったこと、そしてB山部長が来てから職場が変わってしまったこと、さらには本当は自分の会社を持ちたかったという思いを、正直にA子さんへ打ち明けました。A子さんは、「部長の言葉がすべて意地悪だったとは思わない。自分に足りない部分もある」と冷静に受け止めた上で、それでも「一緒にやりたい」と答えてくれました。
数日後、私たちは退職届を提出しました。その際、B山部長に「私の代わりはいるかもしれません。でも、A子さんの代わりはいません。後悔することになると思います」と静かに伝えました。
立場が逆転した、その後の現実
実際、私たちが去った後、会社では少しずつ取引がうまく回らなくなったと聞きました。特に、A子さんが一件一件丁寧に築いてきた信頼関係が失われた影響は大きく、B山部長はそこで初めて自分の判断の重さに直面したようです。
一方、私は数名の仲間とともに新しい会社を立ち上げました。A子さんも社員のひとりとして参加してくれています。誠実で的確な対応と確かな技術力で、彼女は次々と案件を広げ、期待以上の活躍を見せてくれました。
それから約1年後。A子さんが大切にしてきた相手から、大きな仕事の話が舞い込みました。それは偶然にも、以前の会社と取引のあった相手でした。
結果的に、仕事の流れがこちらに移る形になりましたが、B山部長の古い価値観は、取引先の間でも以前から疑問視されていたようです。日ごろから信頼関係を築いてこなかった結果だと考えれば、特別なことではないのかもしれません。
大型案件も無事にまとまり、祝賀会の後、A子さんは静かに「あのとき誘ってくれて、信じてくれて……本当にありがとうございます」と言ってくれました。私は笑って「こちらこそ。信じてついてきてくれて、ありがとう」と答えました。
まとめ
性別という一面的な理由だけで人の可能性を判断し、結果として大きな機会を逃してしまった人もいます。能力や実績ではなく、先入観で線を引いてしまえば、誰がどれほど力を持っていたとしても正当に評価されることはありません。立場や肩書きに惑わされず、人そのものを見て信じること。簡単なようで難しいことですが、その大切さを改めて実感しました。今はただ、信頼できる仲間とともに前を向き、選んだ道を歩めていることに、静かな確信を持っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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