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「中卒の三十男は不要」突然の宣告…家族に切られた私が、農業の現場で再出発した結果

私は、祖父から受け継いだ田んぼと畑で、米と野菜を育てています。この日も、作物が順調に育っているかを確認していました。稲の苗は順調に育ち、「そろそろ田植えの準備だな」と考えていたそのとき、弟と両親が連れ立って現れたのです。胸騒ぎを覚えながら、私は鍬(くわ)を置きました。

 

突然告げられた「交代宣言」

田んぼに入ってきた父は、前置きもなく言いました。

 

「この田んぼは、弟に継がせる」

 

弟は軽い調子で「今日までご苦労さん」と笑い、父はさらに「俺も早期退職して手伝う」と続けました。私は内心、「やはり、そう来たか」と思いました。

 

祖父から農地を引き継いだ当初、両親も弟も「きつくて汚くて厳しい農業なんて無理だ」「すぐに収入にならない仕事だ」と、口をそろえて否定していたのです。

 

それが、私が何年もかけて経営を安定させた途端、この話でした。私は多くを語らず、「……わかったよ」とだけ答えました。

 

現場を知る人の沈黙

すると、その場に居合わせていたA子さんが、言葉を失いました。A子さんは農機メーカーに所属し、私が現場経験を生かして自作した土壌センサーや自動散水装置の検証を担当してくれていた技術者です。

 

父はA子さんに向かい、「現場経験より、大学で農業を学んだ弟のほうが家業に向いている」と説明し、さらに「あなたも引き続き関わってもらえるから安心してください」とまで口にしました。しかしA子さんは、静かに首を横に振ります。

 

「私は雇われている立場ではありません。彼の現場の工夫があってこその仕事です」。その言葉に、弟と両親は顔を見合わせ、どこか嘲るように笑いました。「中卒の三十男は、もう役目を終えたってことだ」。そのひと言で、すべてがはっきりしました。

 

弟は「大卒」を誇りに、AI導入やドローンによる効率化、大口契約の構想を語り始めました。「兄貴みたいな、細かいやり方じゃなくていい。全部まとめて効率化する」。父と母は、その話に大きくうなずいていました。

 

私は、農業の現実を何も理解していないと感じましたが、あえて口を挟みませんでした。そして覚悟を決め、「じゃあ、私が自作した機械や、個人で借りていた設備は全部引き上げる」と告げたのです。

 

弟は鼻で笑いながら「そんなの、邪魔なだけだ。むしろ助かるよ」と言いました。

 

 

崩れ始めた理想論

それから2カ月後。私はA子さんの所属先に迎えられ、大規模農園で農業機械の開発に携わっていました。これまで現場で培ってきたセンサーや自動散水装置は、改良を重ねて製品化が進んでいます。その間、弟から何度も着信がありましたが、私は出ませんでした。「どうせ、良い話ではない」と判断したからです。

 

数日後、弟と両親が突然、私の職場に押しかけてきました。

 

「トマトが枯れたのは、お前の嫌がらせだろ!」

 

私は即座に否定しました。原因は北側区画の日照不足でした。「トマトは日当たりが命だ。AI以前の問題だろ」と感情を抑えつつも、はっきり伝えました。数値の平均だけでは、畑ごとの土壌や日照条件の違いまでは判断できません。農業は、机上の理論だけで成り立つものではないのです。

 

切り捨てた責任の行き先

さらに1カ月後。収穫はできたものの品質が基準に届かず、契約先から厳しい指摘を受けたと聞きました。加えて、組合費用の支払いも滞っていたようです。

 

弟から、弱々しい声で「今は金がない。代わりに払ってくれないか」と電話がかかってきました。私は、静かに「自分たちで選んだ道だろ。切り捨てた相手に、今さら頼る話じゃない」と答えました。

 

それだけ伝え、電話を切りました。最終的に、弟と両親は祖父の田んぼを手放すことになったそうです。家業を失い、新たな仕事を探していると聞きました。

 

一方、私とA子さんが関わった農業機械は販売が始まり、導入しやすい価格と実用性が評価され、少しずつ現場に広がっています。私はその収入で、祖父の土地を買い戻しました。現在は、友人や知人と協力しながら、有機野菜の栽培を再開しています。都内のオーガニックレストランでも取り扱ってもらえるようになり、忙しくも充実した毎日です。

 

まとめ

遠回りにはなりましたが、祖父の土地も買い戻し、今は信頼できる仲間とともに有機野菜づくりを再開しています。大切なのは学歴や立場ではなく、現場と真剣に向き合い続ける姿勢――そのことを、身をもって実感した出来事でした。

 

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

 

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