女性がやり方を教えて下さることに
困っている私たちを見ていたのか、1人の高齢女性が「教えてあげようか?」と声をかけてきました。娘は「ありがとう!」と女性のやさしさを素直に受け止め、説明を聞くことに。
「教えてあげようか?」という言葉から、てっきり横について口頭でやり方を説明してくれるだけだと思っていたのですが……。
女性は、「1枚借りるわね!」と言って、当然のように娘の持っていたカップからメダルを取り出しました。あまりに自然な動作でゲームを始めたため、私は止める間もありませんでした。
「ここにメダル入れてね、このボタン押すのよ」——説明はほんの一言二言。それだけで、あとは黙々と自分でゲームを楽しんでいるようでした。これでは「教えている」というより、ただ娘のメダルで遊んでいるだけではないか。そんな疑問が頭をよぎりました。
頭をよぎった嫌な予感
その後、次々と娘のメダルを消費していく女性。どうやらその女性は自分のメダルを持っていない様子でした。最初から娘のメダルを使うつもりで声をかけたのかもしれない——そう気づいたときには、もう5枚以上消費されていました。娘のメダルを次々使い続ける姿に、「もしかして、このまま使い切られるんじゃ……」という嫌な予感が頭をよぎりました。
真剣にゲームの様子を見ながらも、メダルが減っていくカップを眺め、だんだん不安な表情になる娘。大人からすればわずかな枚数ですが、娘にとっては1枚1枚が大切です。
しかし、教えてもらっている手前、すぐに「やめてください」とは言い出しづらく……。「せめて10枚まで。それを超えたら、さすがに声をかけよう」と心の中で決めて、様子を伺っていました。すると5分ぐらいたったころのちょうどメダルを10枚ほど消費したタイミングで、ついに12枚の当たりが出たのです。
メダルゲームが初めての娘にとっては、12枚のメダルが山盛りの宝物のように見えたはず。ジャラジャラと音を立てて機械から出てきたメダルを集めて、娘はとても喜んでいました。
耳を疑った女性の発言
娘のメダルを使われたことに少しモヤっとしましたが、うれしそうな娘の姿を見て、「ご親切にありがとうございました!」と女性にお礼を伝えました。すると次の瞬間、女性は「このメダル、おばちゃんが取ったから、半分こでいいかな?」と娘に問いかけたのです。元々娘のメダルを10枚使って出た当たりです。しかも「教える」と言いながら、ほとんど自分で遊んでいただけ。それなのに、当たりは半分……? 一瞬、耳を疑いました。
一瞬、明らかに戸惑った表情を見せた娘。せっかく手に入れたメダルを半分も取られてしまうことに、きっと納得していなかったはずです。それでも、断りきれずに「教えてくれたし、いいよ……」と、小さな声で答えました。私から断ろうかとも思いましたが、娘がOKしているのに私が口を挟めば、娘が板挟みになってしまうと思い私は口をつぐみました。ただ、なんとも言えない後味の悪さが残りました。
お金を支払ってメダルと交換した私たち。一方、子どものメダルで遊び、その一部を自分のものにしてしまった女性。そのあまりの「ちゃっかり」ぶりには、呆気にとられるばかりでした。
今回のことは、「世の中にはいろんな大人がいる」と学ぶための、少し高い授業料だったと割り切ることにしました。ただ、娘の「教えてくれたし、いいよ」という純粋なやさしさにつけこまれたことだけは、親としてやはり心が痛みます。
たとえ親切そうな顔で近づいてきても、違和感を覚えた時点で「結構です」と断る勇気を持つべきだったと反省。その場では「娘を困らせたくない」と躊躇してしまいましたが、次は娘の笑顔とメダルをしっかり守れるよう、私がもっと強くなろうと心に誓いました。
著者:夏目 しおり/30代女性/2021年生まれの娘を育てるママ。10年間、中学校教員として勤務。現在は非常勤講師として働きながら子どもとの時間を大切にし、ライターとしても活動中。特技はサックスの演奏。吹奏楽と水族館が大好き。
イラスト:きりぷち
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)
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