「ただの布」に1500円は無駄という夫
ある日の休日、買い物から戻った私はテーブルをさっと整えました。数日前にテーブルクロスを新しいものに替えたばかりで、少し気分が上がっていたのです。ところが夫は、クロスを見るなり顔をしかめました。
「おい、テーブルクロス変えたのか?」と聞かれ、私は「前のは汚れてたでしょ? お客さまが来たとき恥ずかしいから」と説明しました。すると夫は鼻で笑うように、「客なんてほとんど来ないだろ」「無駄なことに金を使いやがって」と言ったのです。
私は「セールで1500円。でも安っぽくなくて、かわいいでしょ?」と返しました。すると次の瞬間、夫の声が強くなりました。「高いわ。ただの布に1500円もかけるな。無駄遣いはするなって言ってるだろ。学ばないやつだな、お前は」そして、とどめを刺すように言ったのです。「生活費、来月から2万減らす」
私は思わず声を上げました。今の生活費でもギリギリで、食費も日用品も、毎月電卓を叩きながらやりくりしています。私は、「そんなにお金を使わせたくないなら、私にも働かせて」と伝えました。でも夫は、きっぱりと否定しました。「それは絶対ダメだ。じゃないと俺の甲斐性がないみたいだろ」結局、私は「生活費を減らさないで。お願い」と頭を下げるしかありませんでした。あのときの惨めさは、今でも忘れられません。
突然、義母が訪問。ある相談をすることに
それから1年後のこと。10時を少し過ぎたころに、インターホンが鳴りました。画面に映っていたのは義母でした。驚いて玄関を開けると、義母はいつもの柔らかい声で「お久しぶり。元気かしら?」と笑いました。
「近くまで来てるの。用事があってこっちに来たんだけど、予想外に時間が余っちゃって。ちょっと寄ってもいい?」と言い、義母は私の好みを覚えていてくれて、手みやげにチーズケーキを買ってきてくれていました。
けれど、お茶を飲みながら、義母がふとこぼした言葉に、私は固まりました。「最近あの子、自慢話ばっかりでね。大企業で働いてるからって、完全に天狗よ。あなたも大変ね……毎日あの子の自慢話に付き合ってるんじゃない?」義母は笑いながらも、どこか呆れたように続けました。
「あれじゃ、周りに嫌われちゃうわ。友だちだって相手にしたくないはずよ」私は曖昧に笑ってうなずきながら、心の奥に押し込めていた“相談したいこと”が、喉元までせり上がってくるのを感じていました。そして意を決して、口にしました。「……実は、お義母さんに相談したいことがあるんです。さっき、気になる電話がありまして」
「母さんが倒れた!」夫の“嘘”が目の前で…
同じ日のお昼、私は夫に「さっき、あなたの友だちから電話が来たの。お金のことで話があるって。帰ってきたら連絡してほしいって言ってたよ。いったい何の話なの?」と伝えました。すると夫は苛立ったように、「仕事中に連絡してくるな」「今バタバタしてて無理だ」と突き放しました。そして言い訳のように続けたのです。
「……母さんが倒れた。かなり重病らしい。しばらく入院になりそうだから、今から実家に行ってくる」一瞬、血の気が引きました。けれど——私は視線をテーブルへ向けました。そこには、さっきまで笑ってお茶を飲んでいた義母がいます。
私は静かに言いました。「……それ、おかしくない? お義母さん、今うちにいるよ。お茶、飲んでるけど」電話の向こうで、夫の息が止まったのがわかりました。「は?」という声が、情けないほど裏返っていました。
私はもう逃がしませんでした。「どこの“お義母さん”が倒れたの? 完全に嘘ついたよね? 友だちと何があったの? 説明して」夫は最初、「お前には関係ない」と言いました。でも私が「じゃあ、さっき電話をかけてきた友だちに電話して聞く」と言った瞬間、声色が変わりました。「やめろ! わかった、話す!」
夫の貯金がゼロ。借金までしていた理由は…
夫が吐き出したのは、「借金した」という事実でした。しかも理由を追及すると言葉を濁し、「貯金が底をついて……」と。私は混乱しました。私は限られた生活費で必死にやりくりしてきたのに、なぜ貯金がなくなるのか。
その夜、義母は帰宅した夫を真正面から問いただしました。「どうして貯金が底をついて、人からお金を借りる事態になったのか。説明しなさい」夫が口にしたのは、「会社を解雇された」という告白でした。しかも、それは半年前のことだったのです。
義母は、うすうす気づいていたと言いました。私から「最近お金にうるさくなった」「旅行もしなくなった」と聞いていたからだそうです。夫は、私にバレないように貯金を切り崩し、さらに友人にお金を借りて何とか“体裁”を保っていました。
さらに義母は、夫がまだ隠していることがあると見抜きました。そして追い詰めるように言ったのです。「母親だからわかる。正直に話しなさい」夫が最後に白状したのは、会社の経費を水増し申告していたことでした。発覚後に返金し、被害届は出されなかったものの、解雇は当然の結果でした。言い訳の余地もありません。
夫から「働いてくれませんか」と言われた私は
そして夫は、震えるように言いました。「……そういうわけなので、働いてくれませんか」
その瞬間、私の中で何かが切れました。専業主婦になってほしいと強く望んだのは、夫のほうでした。私は仕事を辞め、節約を頑張り、文句も飲み込み、見下されても耐えてきた。それなのに、自分がやらかして困った途端、今度は私に働けと言うのです。
だから私は告げました。「離婚したい。私はずっと前から考えてた」
私は夫と別れ、実家でしばらく過ごしました。幸運にも友人が仕事を紹介してくれ、生活できるだけの収入を得られるようになりました。今は実家を出て、ひとり暮らしをしています。
一方の元夫は、借金で首が回らず、就職先を探しながら日雇いで働いていると聞きました。私は今回のことで学びました。仕事に誇りを持つことは悪くありません。でも、調子に乗って他人を見下した瞬間、足元は簡単に崩れるのだということ。環境が変わっても、謙虚さだけは失わずにいたい。そう、心から思っています。
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「俺のほうが稼いでる」「養ってやっている」という意識が強くなるほど、相手の努力や気持ちは見えにくくなってしまうもの。夫婦は本来、どちらが上でも下でもない対等な存在。きちんと話し合い、互いを尊重できる関係でいられるかどうか――それこそが、夫婦にとって何より大切なのかもしれませんね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※一部にAI生成画像を使用しています。