ある日、娘が高熱を出しました。薬を飲んでも熱が下がらず、医師によると、何らかのウイルス性の可能性があるとのこと。別の薬をもらい、様子を見ることになりました。
しかし夫は、翌日から予定していた友人・Aくんとの温泉旅行に行くと言って譲りません。「旅費も払ったし、有給も取った。子どもの風邪ごときでキャンセルできない」と、私たちを置いて旅行の準備を始めました。
私が残りわずかの有給を使って看病しているにもかかわらず、夫は「旅行中は邪魔されたくないから電源を切る」と言い放ちました。こちらの緊急事態など想像もしていないのでしょう。
高熱で苦しむ娘を気遣う素振りもなく、夫は足取り軽く出かけていきました。
夫の嘘
夫が出発した直後、娘の容態が急変し、緊急入院することになりました。夫に連絡しようとしましたが、宣言通り電源が切られていて繋がりません。
不安な夜を病院で過ごしていると、廊下で見覚えのある男性を見かけました。夫が旅行に行っているはずの友人「Aくん」です。
声をかけると、彼は「彼女がインフルエンザで夜間診療を受診している」と言いました。その瞬間、夫の嘘が明るみに……。夫は友人と旅行に行くと偽り、別の誰かと出かけていたのです。
私はスマホを取り出し、ドライブレコーダーの管理アプリを開きました。わが家の車についているのは、位置情報や車内の音声を確認できる通信型のドライブレコーダー。私の運転が心配だと言って夫が取り付けたものです。
きっと夫は、この機能の存在など忘れているのでしょう。画面に表示された車の位置は、夫が言っていた温泉地とはまったく違う場所でした。夫は不倫相手と思われる女性と、旅行に出ていたのです。
夫の哀れな懇願
3日後、悠々と帰宅した夫に、私は記入済みの離婚届を突きつけました。Aくんとの旅行が嘘だったことを問い詰めると、夫は最初こそシラを切ろうとしましたが、私が病院でAくんに会ったこと、そしてドライブレコーダーの音声データがあることを告げると、顔面蒼白になりその場に崩れ落ちたのです。
「浮気相手との旅行が娘よりも大事だったんでしょ? これ以上ない離婚の理由よね」
私が淡々と告げると、夫は泣きついてきました。「もう二度としない」「これからは家事も育児も全部やる」と必死にすがってきます。
夫はさらに食い下がりました。「ひとりで子育てなんて大変だろ? 俺が稼いだ金は全部渡すし、家のことだって何でもやるから!」
しかし今まで学童の迎えひとつできなかった人間に、家事や育児ができるはずがありません。今さら何を言われても、私の心には何ひとつ響きませんでした。
そして、離婚の決め手がもうひとつ。娘は入院中、うわ言でパパを呼ぶことは一度もありませんでした。娘にとっても、夫はすでにいないも同然の存在だったのです。
自業自得な夫の末路
何度か話し合いをしたのち、離婚が成立。慰謝料と養育費は公正証書を作成して厳格に取り決め、浮気相手からも慰謝料を請求しました。
元夫は不倫相手とも破局し、会社と家の往復に加え、支払いのために深夜のアルバイト生活を送っているそうです。仲の良かったAくんにも、浮気の隠れ蓑にしていたことが知られ、距離を置かれているのだとか……。
一方、私と娘の生活はとても穏やかです。母娘二人三脚で、新しい生活を楽しんでいるのでした。
◇ ◇ ◇
子どもが病気で苦しんでいるとき、すぐに治してあげることもできず、もどかしい気持ちになることがあります。できることは、ただそばに寄り添うことだけかもしれません。
でも、それだけでも子どもは大きな安心感を得られるものです。子どもが一番つらいときに背を向け、自分を優先してしまえば、家族としての信頼は二度と戻らないかもしれません。
苦しいときやつらいときにこそ、一番近くで安心を届けられる存在でありたいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。