2019年6月には“年金2000万円問題”がさまざまなメディアで報道されましたが、実際もらえる年金はどれくらいか把握している人は多くないと思います。今回は、夫が会社員、妻が扶養範囲内(第3号被保険者)とした場合の現在の制度で支払われる厚生年金・国民年金の金額についての概要をお伝えしようと思います。
※この記事は2019年6月時点を基準にしております。
夫:33歳・会社員(20歳~22歳は学生、23歳~60歳は会社員・38年間の平均年収400万円と仮定)
妻:30歳・扶養範囲内の主婦(20歳~26歳は会社員、27歳~60歳は扶養範囲内で主婦かパート勤務)
子: 1歳
老齢年金について
65歳以降に支給される年金を老齢年金と言いますが、会社等に勤務した場合にお給料から支払う厚生年金保険料が1か月以上ある場合は、老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されます。老齢基礎年金は20歳~60歳までの間、国民年金保険料か厚生年金保険料を欠かさず納めた人は、年間約78万円(2019年度基準は780,100円)が支給されます。老齢厚生年金は加入期間や給料等に連動する保険料によって支給額が異なりますが、勤務中38年間の平均年収を400万円とした場合、年間約85万円が支給されます。厚生年金保険料を払っている期間が短い場合は、年間数千円程度、勤務中の平均年収が1000万円を超える場合には、年間約150万円程度となることもあります。
夫婦の年齢差がある場合、加給年金が受け取れる場合があります。加給年金とは老齢厚生年金が支給される時点で、年金受給者によって生計が維持されている65歳未満の配偶者または原則18歳までの子がいれば、年金額が加算される制度で、2019年度では、390,100円です。また、配偶者が65歳になった時点で加給年金は打ち切りとなります。その代わりに配偶者に加算される振替加算の制度もありましたが、昭和41年4月1日生まれ以降の方は対象外となります。
今回対象のご家族は、夫が65歳から支給できる年金は約163万円(妻が年金支給を受けるまでは約202万円)、妻が65歳から支給できる年金は約79万円となります。夫婦合計で年間約242万円(妻が年金支給を受けるまでは約202万円)となりますので、この年金額が夫婦二人で老後の生活のやりくりができるか考える前提の金額なります。
なお、ご自身の国民年金・厚生年金の試算をしたい方は、日本年金機構のねんきんネットに登録すると今まで払った年金保険料と今後の収入の推移で試算できますので、興味を持った方はアクセスしてみてください。
遺族年金について
国民年金・厚生年金は老後の生活費だけでなく、生計の主体である方が亡くなった場合は、遺族年金としてご家族に支給されます。遺族年金の詳細は以前お伝えした記事「老後の支給だけでない?遺族給付や障害給付もある公的年金」をご確認ください。
今回対象のご家族で、直近に夫が亡くなった場合には、遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。子が18歳到達年度末日までは、遺族基礎年金が約100万円、遺族厚生年金が約41万円、合計約141万円が、それ以降(子が19歳になる年度以降)から妻が65歳以降老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るまでは、遺族厚生年金約41万円と中高齢寡婦加算約58万円(2019年度基準は585,100円)、合計約96万円が受け取れます。
生命保険を検討する場合は、この遺族年金の支給も念頭に置いて、それでも足りない生活費や子の教育費を保険で用意すると生命保険に入り過ぎといった状況を防げます。上記以外にも、勤務先によっては退職金や企業年金(厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、中退共等)が用意されている場合もあります。老後の2000万円はあくまでも平均値の比較に過ぎず、ご家族ごとに必要金額は異なります。
子育て中に、老後資金の準備は難しい面もありますが、現状どのような状況になっているか把握することも大切です。今回の内容でご自身やご家族の年金の内容が気になるようでしたら、ねんきんネットの試算やねんきん定期便の確認、年金事務所への問い合わせなどをすると良いでしょう。不安の解消や今後の対応をするためにも、年金の概算は確認するといいですね。