彼女と婚約
僕は実家の農地を継ぎ、地方で農業を営んでいます。派手さはありませんが、珍しい野菜の栽培などで飲食店や直売所と安定した取引を続けてきました。
規模は小さいものの、生活に困ることはなく力を入れて仕事をしていました。
そんな中で、付き合っていた彼女と婚約することに。周りの人からも祝福の声をもらって、僕は幸せな気持ちでした。彼女との出会いは、僕が野菜を卸している都内の有名レストラン。
お客さんとして来ていた彼女が、僕が作った珍しい野菜を見て「何これ!!」とスタッフに詰め寄っていたときのこと。僕は、彼女にその野菜の魅力を知ってもらいたくて、野菜の説明をしたことが、出会いのきっかけでした。その際、名刺を渡して「一応、経営をやっています」と伝えたところ、彼女の態度が一変。
「若き経営者」という肩書きに惹かれた彼女は、猛烈なアプローチをしてきました。僕も彼女の華やかさに舞い上がり、交際を経て婚約に至ったのです。しかし、彼女は僕の仕事を「きれいなオフィスで働くIT社長」のようなものだと勘違いしていたようでした。
突然の裏切りと彼女の「本音」
ある日、取引先との打ち合わせを終えた僕の目に、信じられない光景が飛び込んできました。彼女は、見知らぬ男性と親密そうにしていたのです。
その男性は、僕も見覚えがありました。僕が野菜を卸していたレストランの若手オーナーシェフです。僕が彼女に「何してるの…?」と声をかけると、
「あなたって、社長は社長でも『農家』だったんだ。単に趣味でやっていて、本業は別だと思ってたのに……。婚約は破棄させてもらうね」
と彼女。僕が農業をしているのは知っていたのですが、細かい仕事内容は知らなかったようで……。仕事の話をする間もなく、彼女とは婚約したのです。彼女にとって、僕は「お金を持っていそうな経営者」という側面だけが大切だったみたいで……。農家の仕事や僕自身の努力には、少しの敬意もなかったのです。婚約までしていたのでショックでしたが、同時に「結婚前に本性がわかって良かった」と、どこか冷めた気持ちでいる自分もいました。
現場にいたのは
その場に、仕事の同行で居合わせていたのが僕の右腕として事務や発送業務をこなしてくれているA子でした。彼女はいつも冷静で、農作業も嫌な顔せずやってくれる真面目な女性です。
A子は、僕が彼女たちに話しかけた後にやってきて
「失礼ですが、彼の実績を『泥臭い』のひと言で片付けるのはあまりにも失礼ではないですか?」
と言いました。さらに、「あなたのレストランとは、ちょうど契約更新の時期ですね。今回の件も含めて検討させていただきますね」とひと言。
実は、彼女と一緒にいた男性のレストランは、彼が経営者となってから売り上げがかなり下がっていたのです。クレームも多く出ていたようで、厳しい経営状況から、僕もA子も契約を考え直したいと思っていたところでした。
男性は、「変わりなんていくらでもいるはずだ」と強がっていましたが、僕たちが作る珍しい野菜は、その店の看板メニューを支えていたはずでした。
元カノからの申し出
その後、元カノが乗り換えたシェフのレストランは、僕たちが野菜の提供を止めたことで看板メニューが作れなくなり、客足が遠のいたそうです。
やはり経営も危うかったようで、元カノは「話が違う」と彼を捨て、再び僕に連絡してきました。
「あのときは言い過ぎた。やっぱり農家って素晴らしい仕事だよね。またやり直さない?」
彼女の言葉に呆れた僕は、ひと言だけ返しました。
「君が好きなのは僕じゃなくて、僕の『肩書き』だったよね。僕は、僕自身やこの仕事に敬意を払ってくれる人を大切にしたいんだ」
それ以降も、何度か彼女から連絡がありましたが僕は無視することに。しばらくすると彼女から連絡もこなくなりました。
現在、僕の会社は新しい取引先も増え、さらに規模を拡大しています。隣には、以前と変わらず冷静に対処してくれるA子もいます。派手さはありませんが、土を耕し、芽が出るのを待つような、着実で温かい毎日を過ごしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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