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女将「高級旅館よ!?薄汚れた人はイヤ」夫を見てボソッ→聞こえてます♪数日後、予約キャンセルの嵐!だって私は♡

数年前、夫は仕事で心身ともに限界まで追い詰められた時期がありました。眠れず、食事も喉を通らず、それでも「少し休めば立て直せる」と自分に言い聞かせていたころがありました。

そんな夫が、安らぎを求めて選んだのが、ある高級旅館でした。初めて泊まったときの対応があまりにも素晴らしく、「疲れたら、またここに来よう」そう思えるほどだったのです。そして、もう一度限界が来たときも、迷わず同じ旅館を選びました。——しかし、そこで待っていたのは、癒やしではありませんでした。同じ旅館で、ここまで露骨に扱いが変わるとは、そのときは思いもしませんでした。

 

完璧すぎるほど、上質な対応

夫が最初にその旅館を訪れたのは、数年前。仕事は忙しかったものの、まだ心に余裕があり、身なりも整っていたころでした。

 

玄関に着くと、すぐにスタッフが駆け寄り、荷物を受け取りながら静かに頭を下げました。受付で名前を告げると、女将は一瞬こちらを見てからにこやかに笑い 「お待ちしておりました。本日はどうぞ、ごゆっくりお過ごしください」と深々と頭を下げてくれました。声のトーンも、間の取り方も完璧。夫はその時点で「大切なお客様として扱われている」と感じたそうです。部屋までの案内中も丁寧で「こちらは今の時期、景色が一番きれいでして……」「お食事も、季節の食材をふんだに使用しご好評いただいております」と、さりげなく“選ばれている宿”であることが伝わってきました。夕食の席でも説明は丁寧で、質問をすると目を見て答えてくれ、丁寧だけれど、距離は近すぎない感じがとても心地よく感じました。

 

帰り際、女将は笑顔で「また、ぜひいらしてください」と一言。夫はその言葉を、社交辞令だとは思いませんでした。その言葉に、嘘は感じなかったそうです。ただ今思えば、あの心地よさは、誰にでも同じように向けられていたものではなかったのかもしれません。

 

同じ丁寧語なのに、意味が違った

数年後。夫は仕事で追い詰められ、心も体も余裕を失っていました。顔色は悪く、身なりに気を配る気力もない。それでも夫は「ここでもう一度立て直したい」と思い、あの旅館を選びました。心から安らげる場所で自分を見つめ直し、もう一度立て直せる……そう思っていたからです。夫は再びあの高級旅館を予約しました。

 

高級旅館に到着した瞬間、女将はチラッとだけ夫を見て「……確認いたしますね」と一言。言葉は丁寧でしたが前のような温度はなかったと言います。戻ってきた女将は、視線を合わせずに「本日はありがとうございます。早速ですがお部屋へ……」と一言。でもそれは、歓迎とは言い難い言葉でした。そして次の瞬間、女将が少しだけ身を引いて男性スタッフに対し「うちは高級旅館なのに……。あのような薄汚い身なりで来られては他のお客様の手前、困ります。必要な案内だけして、あとは距離を置いて」と呟いた言葉が聞こえてしまったのです。部屋への案内は女将ではなく男性スタッフに交代し、笑顔はなく必要最低限の対応のみ。景色や料理の話はなく、説明だけが淡々と続くのでした。立ち直るために来たのに、ここでは“休む前に心が削られる”そんな感じがして、胸が苦しくなったのでした。

 

自宅に戻った夫は「前は、あんな扱いじゃなかったのに……。見た目で俺が弱ってるのが分かったんだろうな」と話し始めました。そして最後に「客って、こんなに簡単に格付けされるんだな」と呟いたのでした。

 

小さな会社の、静かな判断

私は夫の話を父に伝えました。父は、高級旅館の対応よりも、夫がどんな顔で帰ってきたかを黙って聞いていました。怒ることも遮ることもなく……。そして、最後まで聞いたあと「……それは、社員を連れて行ける宿じゃないな」と呟いたのです。父は小さな会社ですが会社経営をしていて、社員旅行だけは毎年必ず行くと決めていました。

 

実は—— 夫が最初に高級旅館に泊まったときの「素晴らしい対応」を聞いて以来、ここなら安心して社員を連れて行けると、ここの高級旅館を毎年利用していたのです。父は「社員旅行は、頑張った人が少し息を抜くためのものだ。立て直そうとしている人間が、余計に傷つく場所は選べない」とキッパリ。父は、会社として入れていた予約をすべてキャンセルしたのです。すると、旅館側が「差し支えなければ、理由を伺えますか」と尋ねてきたそうです。父は少し考えてから「家族が利用した際の対応がちょっとね。私の大事な社員を連れて行ける宿ではないと判断しました」と一言。電話口は一瞬静かになり、父はそれ以上は語らず電話を切ったのでした。

 

その後、父の社員や親族たちも高級旅館を利用することは無くなりました。かつては高級旅館と呼ばれていましたが、今では以前ほど名前を聞かなくなりました。私たちが尋ねた後にキャンセルが続いたので「あのときの客は、誰だったのか」気づいた人はいたのだと思います。でも、もう確かめようはありません。もうあの旅館へ行くことはないから……。

 

◇ ◇ ◇

 

見た目で人を値踏みする場所より、人としてちゃんと扱ってくれる場所を選ぶ。その選択が、大切な人を守る一歩になるのかもしれません。

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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    ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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