夫の要望は化粧だけにとどまりませんでした。「スカートを履くな」という見かけのことに始まり、しまいには「男性のいる職場はダメだ。辞めろ」と、私の生活を制限しようとしてきたのです。
仕事にやりがいを感じている、ほかの男性とどうこうなるつもりはないと必死に伝えても、彼は聞く耳を持ちません。「俺が管理してやらないと、不倫するかもしれないだろ」と詰め寄られ、まるで見えない鎖で繋がれた所有物のような扱いを受け始めたのです。
ついに彼は「言うことが聞けないなら離婚だ。新婚ですぐ離婚なんて恥ずかしくて周囲に言えないだろ?」と、脅しをかけてきたのです。
エスカレートする支配
私がどれだけ譲歩しても、夫の暴走は止まりませんでした。そんなある日、衝撃の事実が判明します。夫が私の職場に勝手に電話を入れ、「妻は仕事を辞めるので受理してほしい」と上司に執拗に迫っていたのです。
私が大切にしてきたキャリアや人間関係を、彼は土足で踏みにじりました。
問い詰めると、彼は悪びれる様子もなくこう言い放ちました。「付き合っているときは他人だったから自由にさせたけど、今は俺の嫁だ。俺には意見を言う権利がある」
さらに、外出の禁止やスマホのチェックまで強要。彼は「自分は男だから何をしてもいいが、妻は夫にだけ尽くし、謙虚であるべきだ」という歪んだ価値観を押し付けてきたのです。
私は絶望の淵で、ある決意を固めました。
あなたの嫁を辞めます
数週間後、夫から1通のメッセージが届きます。駅前で私が男性と歩いているのを見かけ、浮気だと決めつけたのです。
「男と歩くなんて、俺をコケにするのも大概にしろ。帰ったらタダじゃ済まないからな」という脅しに対し、私は冷静に告げました。
「今日であなたの嫁を辞めるから。もう家には帰らないよ」彼が見かけたのは、浮気相手などではなく、私が事前に相談し雇っていた離婚弁護士でした。
夫は「離婚なんて認めない」「笑いものになってもいいのか」と喚き散らしましたが、私にとって彼と一緒にいる苦痛に比べれば、世間の目などどうでもいいことでした。
立場が悪くなったと悟った夫は、「化粧も仕事も許すから戻ってきてくれ」と手のひらを返して泣きついてきましたが、もう手遅れです。彼の「心配」は愛ではなく、ただの支配欲だった——その事実は、二度と消えることはありません。
夫婦の結末
離婚の話し合いは難航しましたが、何度も話し合いを重ね、無事に離婚が成立しました。
彼は最後まで「妻が不倫した」と周囲に吹聴しようとしていましたが、私はすでに義両親や友人たちに、夫の暴言の録音やLINEの記録を見せ、根回しを済ませています。味方がいなくなって取り乱す元夫の姿を、私はどこか冷めた目で見ていました。
私は今、大好きな化粧をして、お気に入りの服を着て働いています。上司や同僚も温かく迎えてくれ、心から「自分らしくいられる場所」の大切さを噛み締めています。
◇ ◇ ◇
パートナーを大切に思うからこそ、相手の希望に添いたいと思うのは自然な感情です。しかし、それが一方的な制限や人格の否定であるならば、それは愛ではありません。過度な制限や人格を否定するような言動は、心の暴力を伴うDVの一種かもしれません。
自分を守るための第一歩として、公的な支援機関や専門の相談員を頼ることも一案です。
※よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
ガイダンスで専門的な対応も選べます(外国語含む)
0120-279-338 つなぐ ささえる(フリーダイヤル・無料)
岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226 つなぐ つつむ(フリーダイヤル・無料)
※こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施している「こころの健康電話相談」等の公的な相談機関に接続します。
0570-064-556 ※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
※DV相談ナビ
全国共通の電話番号(#8008)に電話をすると、お近くの都道府県配偶者暴力相談支援センターにつながります。
#8008(はれれば)※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。