夫は以前から、私のことを「女子力が低い」「もうおばさんだな」などと否定していました。しかし、私は私なりに身だしなみには気を使っていますし、何より仕事と家事の両立に奮闘してきました。
その結果、今では夫よりも収入が高くなり、管理職として責任ある立場を任されています。プライドの高い夫にとって、妻のほうが稼いでいるという事実は面白くないようですが……。
それでも私が家計を支えることで、夫は趣味のゲームやアニメに給料の多くを費やすことができていました。そんな生活の基盤が誰のおかげで成り立っているのか、夫はすっかり忘れているようでした。
突然の離婚宣言
「そのうち目が覚めるだろう」と静観していた私ですが、半年たっても夫の浮かれ気分は収まるどころか、加速する一方でした。そしてある日、信じられない言葉を口にしたのです。
「離婚してほしい。Aちゃんと再婚することになった」
突然のことに、私は思考が停止しました。夫の話では、Aちゃんから「あなたが離婚して独身になったら、あなたと結婚する」と言われたそうで……。
私があきれながら「そんなわけないでしょう? 何かの間違いじゃないの?」と冷静に問い返すと、夫は激昂しました。
「俺は結構モテるんだ! Aちゃんにとっても俺は憧れの存在なんだよ! お前みたいなひねくれたおばさんにはわからないだろうな!」
もし夫の話が本当なら、何か裏があるに違いありません。しかし、私が何を言っても「嫉妬は見苦しい」と聞く耳を持たず、夫は強引に離婚手続きを進めようとしました。
さらに夫は「Aちゃんとの新生活のために、このマンションは俺がもらう」と主張。私は愛想が尽き、「相応の慰謝料と財産分与を支払うなら」という条件で離婚届に判を押し、家を出ることにしました。
夫は「独身になればAちゃんと一緒になれるんだから、金なんて安いものだ!」と借金をしてまで私の提示した額を用意しました。
事実を都合よくすり替えた夫
私が家を出て数日が経ち、離婚が成立した翌日、元夫から「復縁してくれ……とんでもないことになった」と連絡が入りました。詳しく話を聞くと、離婚届を出したあとすぐ、元夫はAちゃんにプロポーズをしたそうなのですが……。
私は元夫から「ひどいだろう?」と送られてきたAちゃんとのやり取りのスクリーンショットを見て震えました。
「Aチャン、お待たせ! 妻と離婚できたよ! 一緒になれるね」
「苗字おそろいにしよっ♪」
見事なおじさん構文でのプロポーズ。元夫のこの愛の告白に対してAちゃんからは……。
「バカなの? 二度と連絡してくんな」
「え〜!?」
Aちゃんからの冷たい返事にもまた、おじさん構文で驚きと焦りを表現している元夫。私は、ついこの間までこの人の妻だったことが、恥ずかしいやら、悲しいやら、何とも言えない感情になりました……。
私は複雑な心境のまま元夫の話を最後まで聞き、整理すると、ことの真相が明らかになりました。飲み会の席で元夫が冗談めかして「俺のお嫁さんになってよ」と言った際、Aちゃんが「◯◯さんは既婚者じゃないですか〜無理ですよ〜」と返したことがあったそうです。
誰がどう見ても社交辞令ですが、元夫はこれを「独身だったらOK」という意味だと都合よく解釈していたのです。さらに、元夫は社内チャットやメールで頻繁にAちゃんに「君のために頑張るよ」「今日の服、似合ってるね」といったメッセージを送っていたそう……。
きっとAちゃんにとっては気持ちの悪いセクハラでしかなかったでしょう。しかし上司と部下という関係上、Aちゃんは仕事がやりづらくならないよう、「頑張りましょう」「ありがとうございます」と、我慢しながら返信していたのだと思います。
勘違いおじさん、大暴走した結果
プロポーズという名の決定的なセクハラ行為を行った元夫は、その後、Aちゃんから会社へ報告されました。調査の結果、これまでの勤務態度や能力不足、周囲への不適切な言動も明るみに出て、元夫は厳重注意の上、地方の関連会社への出向が決まりました。役職も解かれ、年収は大幅にダウンしたそうです。
私と離婚する際に作った借金に加え、給料の減額。さらに、これまで私が負担していた生活費もなくなり、元夫の生活は一気に困窮。この一件を知った義実家からも「いい歳をして恥ずかしい」と絶縁され、援助も期待できない状態なんだとか。
元夫は「一生懸命会社に尽くしてきたのに……」「思わせぶりするなんてひどい……」などと会社やAちゃんに対して嘆いていましたが、すべては身から出たさびです。血のつながった親族ですらあきれるのですから、被害に遭ったAちゃんの不快感は計り知れません。むしろ訴えられなかったことへ感謝すらすべきです。
一方私は、さらに仕事に邁進し、より責任あるポストに就くことになりました。元夫のようなトラブルメーカーが自分の部下に現れないよう、マネジメントには一層気を引き締めていこうと思います。
◇ ◇ ◇
自分の願望のために事実を都合よくすり替え、暴走した結果の代償はあまりにも大きなものでした。一度思い込むと周りが見えなくなることは誰にでも起こり得ますが、重要な決断の前には、一度立ち止まって客観的な視点を持つことが大切です。
一時の感情に流されず、誠実な選択を積み重ねていくことこそが、自分自身を守ることにつながるのではないでしょうか。日常の中で「おや?」と思う違和感や、都合の良すぎる展開があったときは、冷静に事実を確認する姿勢を持っていたいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。