「父が亡くなった」と彼に伝えると…
深夜、私は海外出張中の彼に、父の訃報を伝えました。彼は軽い調子で「起きてるよ~。どうした~?」と言ったので、私は息を整えながら、できるだけ落ち着いた声で伝えました。――父が亡くなったことを。
一瞬、驚いたような声が返ってきたあと、短い沈黙。私は「大丈夫?」とか「なるべく早く帰るよ」とか、そういう言葉が返ってくるものだと思っていました。けれど、実際は違いました。「なんだ、そっか~。闘病中だったもんな」
“なんだ”。そのひと言が、胸に引っかかりました。父は、彼との結婚に最後まで首を縦に振らなかった人です。それでも私は、父はただ不器用なだけで、彼を嫌っていたわけではない――そう信じるようにしてきました。
彼は「お義父さん、俺と顔合わせたくなくて、俺がいないタイミングを狙ったのかも」と、冗談めいたことまで言いました。私は笑って流そうとしましたが、胸の奥がじわじわと苦くなっていくのを感じていました。
出張中の彼に「仕事を優先して」と伝えたら…
葬儀の手配、親戚への連絡……。悲しむ暇もないほど、現実は慌ただしく押し寄せてきます。彼も一応、「俺も行ったほうがいいよな?」と言いました。いてくれたら心強い――そんな本音が一瞬よぎりましたが、彼は今、海外出張中です。それに、会社に確認しないとチケットの変更はできないとも言います。
父の葬儀のために無理をしなくてもいいと思った私は、「仕事を優先して。出張は続行でいいから」と伝えました。彼は少し迷うそぶりを見せたものの、最後はあっさりと「じゃあいっか」と言いました。
お通夜にはたくさんの人が訪れ、父がどれほど人に恵まれていたかを思い知りました。葬儀自体は滞りなく終わり……。けれど、本当に大変だったのはそのあとでした。
彼に内緒で早めに自宅へ帰ったら…!
役所の手続き、書類の山、実家の片付け。私はしばらく実家に残ることにし、出張から帰ってきた彼には「疲れてると思うから、ゆっくり休んで。体力が回復したら家の掃除をお願い。急いで出てきたから、家の中がぐちゃぐちゃなの」と伝えました。
彼は「ピカピカにしておく~」と、軽い調子で答えました。その直後、「あと何日くらい実家に滞在する予定?」と聞いてきました。私は「3日くらいかな」と答えましたが、片付けの進み具合次第で、たしかなことは言えませんでした。
私は帰宅の段取りを早め、親戚に車で送ってもらって家へ戻ることになりました。天気予報ではこのあと荒れると言っていて、迷った末の予定変更でした。彼に連絡しようかとも思いましたが、驚かせようと思い、あえて言わずにいました。
そして……玄関に入った瞬間、見覚えのない女性の靴が目に入りました。さらに、脱衣所のほうから、彼と見知らぬ女性の声が聞こえてきたのです。
入浴中の彼と浮気相手。両親の反応は…
頭が真っ白になりながらも、誰かに言いたくなり……私は外に出て、近くに住んでいる彼の両親に電話をしてしまいました。事情を話すと、彼の両親は驚きつつも、すぐに駆けつけてくれました。そして私は彼に、「お義父さんとお義母さん、突入しまーす」というメッセージを送ったのです。
彼からはすぐに「は?」と返信がありました。私は続けて伝えます。「今ね、私、帰ってきてるの。そして、あんたが入ってるお風呂場の前にいるの。お義母さんとお義父さんも一緒だよ」
彼は「冗談だろ」と誤魔化しました。私は「脱衣所にあるこのミニのワンピ、あんたの?そんな趣味ないよね?じゃあ、誰のかな〜」と返しました。すると彼は、一瞬で言い訳を変えたのです。
「いや、それ俺の!最近そういう趣味なんだよね!」――あまりにも苦しすぎる言い訳でした。私は呆れて、笑いすら出ませんでした。
逃げ場がなくなったとわかると、彼は苛立ちをあらわにし始めました。「だからって、なんで俺の両親が来てるんだよ!ふざけんなよ!」私は「ひとりじゃ無理だった。だから応援を呼んだの。あなたの両親にね」と答えました。お義父さんは怒りで顔を真っ赤にし、お義母さんは泣いていました。
浮気じゃなかった…?私と彼、女性のその後
2人が出てくるのを待ち、話を聞くことになりましたが……彼は「今回が初めてで、魔がさした!許してくれ!」と訴えました。ところが、彼女のほうは「これまで何度も会ってます。プロポーズもされました」と、衝撃的な告白をしたのです。
すると彼は、「俺にとっては、どっちも本命なんだよ!」と、ゾッとする言葉を放ちました。その後、彼の両親も交えて話し合い、婚約は破棄に。父は、彼の本性を最初から見抜いていたのかもしれません。彼には引っ越し費用と慰謝料を支払ってもらいました。
後日、彼の両親から聞いた話では、浮気相手の女性はあの場での修羅場と恥ずかしさが相当こたえたのか、連絡がつかなくなったそう。私は新しい部屋で、少しずつ生活を立て直しています。
恋愛は、しばらくいい。父の墓前で「お父さん、ごめんね。私、見る目がなかった」と手を合わせた瞬間――どこからか「ほーら見ろ」と笑われた気がして、私は泣きながら、少しだけ笑ってしまいました。
◇ ◇ ◇
相手を思いやる気持ちは、言葉や態度の端々に自然と表れるもの。つらいときに寄り添ってくれないことや、冗談で流されてしまうことに感じた違和感を、「気のせい」と飲み込まなくてよかったのかもしれません。自分が感じたサインを大切にし、安心して人生を共にできる相手を選んでいきたいですね。
【取材時期:2026年2月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。