「このままだと姪は施設行きだ……。姉ちゃんが見つかるまで俺たちが預からないか?」と夫は言います。思わぬ展開に、私は言葉が出ませんでした。
「俺たちが親になれるチャンスじゃないか」「かわいい姪を見捨てられない」夫は必死になって姪の預かりを主張してきました。
さらに返答に困っている私に対し、「自分たちの子どもはもう望めないかもしれないんだし、これも縁だよ」と、子どもがいない私の負い目を突くような言葉さえ口にしたのです。
拭えない違和感
情に流されそうになる私でしたが、どうしても拭えない違和感があります。そもそも、なぜ義姉の子どもだと断定できるのか。そして会ったこともないはずなのに、なぜそこまで必死に「かわいい姪」と呼ぶのか……。
私は夫に内緒で義姉に連絡を取ることにしました。連絡先は知りませんでしたが、以前結婚のお祝いが送られてきたときの伝票を念のため保管していたはず……。
古い記憶を頼りに伝票を見つけ出し、そこに書かれていた番号をスマホに打ち込みました。もし夫の言うことが嘘だったら……そんな嫌な予感を打ち消すように、私は思い切って発信ボタンを押しました。
暴かれた嘘
私からの連絡に義姉は驚いていました。そのまま話をしていると、話が噛み合いません。そこで私は衝撃の事実を知ったのです。
私はすぐさま夫を問い詰めました。「お義姉さんと話したけど……。子どもなんていないって言ってた。今も独身だって。本当は誰の子なの?」
私が義姉と連絡を取る手段などないと、夫はタカを括っていたのでしょう。激しく動揺し、しどろもどろになりながら必死に言い逃れようとします。
「姉さんが嘘をついている」とあまりにも苦しい嘘を重ねる夫にしびれを切らし、私は再度義姉に電話をかけました。
義姉は激怒。やっと夫は観念し、真実を話し始めました。その子どもは、義姉の子でも親戚の子でもなく、夫が外で作った「隠し子」だったのです。
謝罪の裏にある本音
夫と不倫相手は、私に隠れて子どもを作ったものの、今になって不倫相手が「ひとりで育てるのは無理だ」と言ったそう。子どもを引き取るか、離婚して不倫相手と再婚するかの二択を迫られたようです。
そこで夫は、義姉の子だと嘘をつけば、私は断れないと考えたと言います。怒りを通り越して深い嫌悪感を抱きました。
夫は「君を愛している、やり直したい」と涙ながらにすがり付いてきました。しかし、もし私と離婚し、父の会社から任されている仕事を打ち切られれば、彼の会社が即座に立ち行かなくなるのは明らかです。
結局、彼が必死に守ろうとしているのは私との夫婦関係ではなく、私の実家が提供する「収入源」に過ぎないのだと、気付きました。
私はその場で離婚を宣言しました。夫は最後まで「子どもを引き取るのは諦めるから、頼むよ」と、実の子さえ保身の道具として切り捨てようとしたのです。そのあまりに無責任な姿を見て、私の心は完全に決まりました。
結婚で得たもの
その後、夫と不倫相手に相応の慰謝料を請求し、離婚が成立。さらに「信頼できない」と判断した父が業務提携を打ち切ったことで、夫の会社は倒産しました。こうして彼は自業自得の末路を辿ることになったのです。
騒動の後、義姉とは不思議な縁で繋がっています。彼女は「うちの弟が本当にごめん」と何度も謝ってくれ、今ではたまに飲みに行く仲になりました。夫との縁は切れましたが、義姉という友人を得られたことは唯一の救いです。
◇ ◇ ◇
人の「情」を都合よく利用し、コントロールしようとする行為ほど卑怯なものはありません。「情」は人が持つあたたかく大切なものですが、自分を犠牲にしてまで捧げるものではないのではないでしょうか。毅然と「NO」を突きつける勇気も、時には大切かもしれませんね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。