受付で遭遇した「最悪な再会」
いよいよ迎えた親子面接の日。早めに会場に到着し、受付付近の控室で待機していた時のことです。
「あら……あなた、まさかここを受験しに来たの?」
声をかけてきたのは、学校の職員バッジをつけた女性でした。顔を見て絶句しました。
大学時代、僕のことを「貧乏で将来性がない」とこっ酷く振った元カノだったのです。
彼女は僕の落ち着いた、しかし華美ではないスーツを上から下まで眺めると、鼻で笑いました。
「相変わらずね。うちは超有名私立よ? あなたみたいな貧乏人は場違いだから帰りなさい(笑)。どうせ面接でボロが出て落とされるんだから、恥をかく前にね」
娘が隣にいるのも構わず、彼女は声を潜めて「身の程を知りなさい」と追い打ちをかけてきました。
「じゃあ、帰ります」と言った僕
娘は彼女の刺々しい空気を感じ取ったのか、不安そうに僕の袖をギュッと握りしめています。
これから大事な面接だというのに、こんな悪意に満ちた人間に娘を晒したくない。そう思った僕は、彼女を冷ややかに見据えて言いました。
「……わかりました。職員が志願者の親に対してこんな失礼な態度を取る学校なら、こちらから願い下げです。〇〇(娘の名前)、行こう。じゃあ、帰ります」
僕が娘を連れて出口へ向かおうとした、その時でした。
「――お、お待ちください!!」
廊下の窓から、険しい表情をした年配の男性が現れました。この学校の運営を取り仕切る理事長です。
理事長が慌てて飛び出してきた理由
理事長は、ポカンとした表情の元カノと、立ち去ろうとする僕を交互に見ました。
実は、僕は父から継いだ会社を急成長させ、現在は若手実業家としてこの学校の教育支援プロジェクトに携わっていたのです。理事長とは、寄付金の件や新講堂の建設予定について、何度も打ち合わせを重ねる仲でした。
「社長、申し訳ございません!彼女が何か無礼を……!?」
理事長は元カノに向き直ると、震えるような怒声で言い放ちました。
「君、この方は我が校にとって欠かせない恩人だ。それ以前に、受験生とその保護者に対してそのような態度は断じて許されない。今すぐ自分の発言を撤回し、謝罪しなさい!」
元カノは腰を抜かさんばかりに驚き、「そんな、彼が社長だなんて……」と震えながら謝罪してきました。
理事長はさらに続けました。
「今回の件は、後日改めて厳重に指導する。ひとまず、今日の面接に関わることは一切禁ずる。すぐに下がりなさい!」
そして理事長は、僕と娘に向かって丁寧に頭を下げました。
「不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありません。彼女は選考には一切関わらせませんので、どうか、安心して面接を受けていってください」
その後、僕と娘は落ち着いて面接に臨むことができました。娘は練習の成果を出し切り、後日、実力で合格を勝ち取りました。
元カノはその後、配置換えとなったようで、二度と僕たちの前に現れることはありませんでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。