専業主婦になった瞬間、夫は“上司”になった
結婚して少し経ったころ、夫が当たり前のように「俺の方が稼いでるだろ? お前は家賃払ってるだけで、その他のお金は俺が支払ってるんだぞ! だから、家事は完ぺきにしろよ?」と言い放ったのです。
人が変わったかのように威張る夫の言葉に私は耳を疑いました。私が「ちゃんとやってるよ。何か不満があるの?」と聞けば、夫は「いや、別にないけどさ……」と呟くのです。しかし、次の瞬間、別の角度から「俺の方がお金を多く出してるんだから、しっかり節約しろよ!」と釘を刺してくるのです。私は無駄遣いをした覚えはありません。むしろ物価高の中で、毎日の買い物は頭を使っていました。 それなのに夫は、私が少しでも反論すると決まって「俺が稼いだ金でご飯が食べられるんだろ!? 俺の方が立場は上だ! 俺の言うことを聞け!」と言うようになったのです。
結婚した途端、夫は「夫」じゃなくて「支配する側」になっていました。そして私は「まだ新婚だし」「そのうち落ち着くかも」と、自分に言い聞かせてしまったのです。 しかし、我慢の理由を探している時点で、もうおかしかったのだと思います……。
兄のひと言で、違和感が“現実”になった
ある日、私の兄が家へ遊びにきました。私が笑顔を作って迎えても、兄はじっと私の顔を見て「……ちゃんと寝れてるか? 大丈夫か?」と呟きました。そのタイミングで夫が帰宅し、兄を見るなり面倒そうに「へぇ。妹家に来るなんて、お兄さん暇なんですね〜。俺は仕事でクタクタですよ」と嫌味を言うのです。
さらにキッチンを見て「こういうの、ちゃんとしろよ」と、シンクの端に置いたコップを指して一言。夫の変貌ぶりに兄は「……毎日、こんな言い方されてるの?」と静かに聞いてきました。すると、兄の声が聞こえた夫は不機嫌そうに「何?俺が悪いって言いたいの?」と言うのです。そして、夫はかぶせるように「俺の方が稼いでるんだから、俺に負担かけるなよ。家のことぐらい要領よくやれよ!」と言い放ったのです。共働きなのに、家の中の責任はすべて私。それが当然のような空気になっていました。 兄は落ち着いた声で「それ、分担じゃなくて押し付けじゃないか! 注意のふりして、お前の都合だけ通してる」と夫に向かって指摘しました。すると夫は「口出しするな!」と吐き捨て、自室へ行ってしまいました。
静かになったリビングで、兄は「お前、ここにいたら壊れるぞ」とポツリ。私は最近、笑う前に夫の機嫌を考えていたことに気づいたのです。帰り際、兄は玄関で私をまっすぐ見て「帰れる場所はあるだろ?」と言いました。しかし、私はすぐに答えられませんでした。でも兄の言葉は、胸の奥深くに残りました。
出張の日、私は静かに動いた
私と夫は同じ職場なので、夫の出張の予定も帰ってくる日もだいたい分かっていました。私は夫が不在の間に家を出ようと考えました。話し合おうとしても、夫はいつも 「俺の方が大変」「お前が気にしすぎ」と言って終わらせてしまう……。だから私は、言い訳で押し切られる前に動くしかないと思ったのです。
出張当日の朝、私はいつも通りに夫を見送りました。ドアが閉まった瞬間、私が購入したお気に入りの家電を数点、仕事道具、衣類……生活を立て直すために必要なものをまとめました。この部屋には、楽しかった同棲の時間も、新婚の未来の話も残っています。それでも私は、自分を守るために距離を取ることを選びました。夫の荷物や家具には触れず、私は自分のものだけを持って部屋を出ました。そして数日後、夫が出張を終えて帰宅した夜、夫から着信がありました。電話に出ると「おい、家の中どうなってるんだ!? 物が少ないんだよ……空き巣か!? お前はどこにいるんだ!?」と絶叫するのです。私は「荷物を持ち出しただけだよ。よく見て? なくなっているのは私の荷物だけでしょ?」と伝えました。すると夫は私の気持ちを察したのか黙り込みました。その沈黙を破るように私は「別居しよう……。今まで苦しかったの。もし、向き合う気があるなら、これからのことを話し合いましょう」 そう伝えて、私は静かに電話を切りました。
あの夜、私は自分を守るために一歩外へ出ました。 これからのことは、話し合い次第です。 もし夫が本気で向き合うなら、次に築く関係は我慢ではなく、尊重の上に成り立つものであってほしい――そう思っています。
◇ ◇ ◇
収入や忙しさで夫婦の上下が決まるわけではないでしょう。共働きでも負担や我慢が一方に偏り、「当然」として押し付けられ続ければ、関係は静かに壊れていきます。まず自分が壊れない距離を確保することが、状況を変える第一歩になるのでしょう。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。