私の母は、昔から困っている人を放っておけない性格。先日も、母と一緒に入ったカフェで、女性の店員さんと話し込んで、仲良くなり、恋愛相談まで受けていました。
その女性店員さんの名前はA子さん。私も母と一緒にA子さんの話を聞いていたのですが、なんとA子さんは最近、婚約者に裏切られ、結婚資金として貯めていたお金まで持ち逃げされたとのこと……。
母は初対面のA子さんに親身になってアドバイスをして、最後には「何かあったら連絡して」と連絡先を交換するほど打ち解けていました。私はそんな人情味あふれる母を、心から尊敬しています。
彼と彼の両親の本性
彼と交際して数カ月。私はついにプロポーズを受けました。私の返事はもちろんOK。1番に報告した母もすごく喜んでくれました。その後、すぐにお互いの両親へあいさつに行った私と彼。
彼の両親はとても親切で、特に彼のお母さんは「娘ができてうれしい」と言ってくれて、それからは頻繁にショッピングや食事に誘ってくれるようになりました。
しかし、幸せだったのは最初だけ……。彼も彼の両親も、会計のときになると決まって「財布を忘れた」「今度まとめて払う」と言い出し、支払いを私に押し付けるようになったのです。
さらに彼らの行動はエスカレートしていき、たびたび「お金を貸してくれ」と無心されるように。私が「結婚資金のために貯金したい」と断ると、彼らの態度は急変。彼のお母さんは「これから家族になるのに冷たい」「嫁になる気はないのか!」と怒鳴り、私がお金を出し渋ると、連絡も無視されるようになったのです。
彼も同様に、私がお金を出し渋ると、デート中も不機嫌になり、私が話しかけても無視。私は精神的に追い詰められ、婚約破棄の4文字が頭をよぎるようになりました。
そんな日々を過ごし、1カ月ほどがたったころ、両家顔合わせの食事会が行われることに。私は両親にこれまでの経緯をすべて相談し、ある決意を固めて当日を迎えていました。
会場の料亭に、彼と彼の両親は大幅に遅刻して到着。謝罪のひと言もなく、不機嫌そうに席に着きました。食事会が始まって、私たちが話しかけても、彼らはスマホをいじるなどして無視を決め込んできたのです。
理由はおそらく、この朝、彼のお母さんから「今日の食事代はあなたが持ってね?」と言われたことに対し、私が「彼と2人で折半したい」と伝えたから……。
そんな重たい空気の中、彼のお母さんが口を開きました。
「ねえ、結納金の代わりと言っちゃなんだけど、当面の生活費として100万円ほど用立ててくれない? 家族になるんだから助け合いましょ?」
あまりに非常識な発言に、私たちは言葉を失いました。あきれて何も言い返せずにいると、彼のお母さんは……。
「何黙ってんの!? うちの嫁になる気はないのか!!」
テーブルをバンッと叩いて、激昂し始めたのです。その高圧的な態度に、私は満面の笑みで答えました。
「はいっ♡ 嫁になる気はありません! 婚約破棄させていただきます!」
母のファインプレー
私の言葉に、「はあ?」と呆気にとられる彼ら。しかし、私の両親は驚くことなく、静かに頷きながら「よかった」とホッとした様子で胸をなでおろしていました。
「どういうことだ!? 慰謝料払え!」と騒ぎ出す彼らに、母が冷静に告げました。
「慰謝料を請求するのはこちらのほうよ。入ってください」
母の合図で個室に入ってきたのは、以前母が相談に乗っていたカフェの女性店員・A子さん。実は、母とA子さんはあの日以降、何度か食事に行っており、すっかり仲良くなっていました。そして、A子さんが母に見せた「お金を持ち逃げした婚約者」の写真が、私の彼と同一人物だと判明。
母がA子さんに写真を見せてもらったのは、この顔合わせの1週間前。偶然にも、私が婚約破棄の決意を固め、両親にすべての経緯を話したのも同じ日でした。今思うと、この偶然は「この結婚はやめておけ」という神からのお告げだったのかもしれません。
すべてを悟った母は、A子さんと協力して私たちの顔合わせの場で、彼と彼の両親を追及しようと決めていました。
母からのアドバイスで、彼の本性を調べていたA子さん。探偵の調査報告書には、彼と彼の両親は、ターゲットの女性に結婚をちらつかせて親しくなり、家族ぐるみでお金を巻き上げる行為を繰り返していると記されていたそう。さらに、彼には私と同時進行でお付き合いしている女性がもうひとりいました。そして、A子さんとの交際期間と私の交際期間も被っていたことも判明。
彼の両親は、家業が行き詰まり、借金返済のために息子(彼)に協力を仰ぎ、親子で複数人の女性を利用していたようなのです。怒りに震えたA子さんが調査結果を母に報告し、次なる行動の相談をする際に、母は彼の写真を見せてもらったというわけでした。
彼の元婚約者だったA子さんの登場に、彼らは顔面蒼白。「人違いだ」としらを切ろうとしましたが、A子さんが彼らに突き出した証拠を前に、言い逃れできず、逃げるようにその場から去って行き……。
愛を悪用した彼の末路
結局、私もA子さんも弁護士を介して正式に婚約破棄の慰謝料を請求。彼らは「いま付き合っている別の女性が金持ちだから、その子に払ってもらう」などと開き直っていましたが、きっとその女性にも執拗にお金を無心したのでしょう。その女性からも逃げられたそう……。
その後、詳しくは知りませんが、彼らは借金を抱えて一家離散したのだとか。私とA子さん以外にも、詐欺まがいの行為に気づいた被害者たちから訴えを起こされていると風の噂で聞きました。
一方、私は今回の件ですっかり目が覚め、再び仕事に邁進しています。私を守るために動いてくれた両親、特に母には感謝してもしきれません。これからはしっかり親孝行をして、恩返しをしていくつもりです。
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人の善意や好意を利用し、金銭を搾取する行為は決して許されません。結婚という人生の節目でこのようなトラブルに巻き込まれるのは災難ですが、入籍前に相手の本性がわかって本当によかったですね。パートナーに限らず、相手に違和感を覚えた時点で第三者に相談し、金銭の貸し借りが発生する前に関係を断ち切れるよう、冷静な判断を心がけたいですね。
相手をだまして金銭を受け取る行為は、詐欺罪にあたる可能性があります。実際にお金を受け取った場合だけでなく、未遂の場合でも処罰の対象になります。恋愛や結婚の話が絡むと冷静な判断が難しくなることもありますが、不自然なお金の要求が続く場合は、早めに専門機関に相談しましょう。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。