親友の裏切り
10年前、私の職場に同い年の女性が転職してきました。美人で華やかな彼女は、あっという間に周囲の注目を集める存在に。私が指導係を任されたことをきっかけに、一緒に昼食を取ったり、仕事帰りにおしゃべりしながら帰ったりするうち、私たちは自然と距離を縮めていったのです。
そんなある日、彼女は笑顔で 「ねぇ、私たち親友だよね?」と言ったのです。私は驚きながらも、うれしくなりました。しかし、そのころから彼女は私の持ち物を少しずつ真似するようになっていったのです。最初は文房具やスマホケース、化粧ポーチなどの小物だけでした。なので私も深く気にしていませんでしたが、やがて服や時計、ついには髪型まで似せるようになったのです。さすがに気味が悪くなってきたので、私は思い切って「あの……私の真似をするの、やめてくれない?」と伝えました。すると彼女は悪びれもせず、あっさり「別によくない? 真似したって犯罪じゃないし」「それにさ、あなたが持ってると地味でも、私が持つと華やかに見えるでしょ?」と言い放ったのです。あまりに失礼な言葉に、私は言い返すこともできませんでした。
さらに彼女は、私を見下すように笑いながら「あなたって、“素材は悪くないのに地味な人”って感じだよね〜。ほら? 私の方が似合うでしょ? あなたは私の引き立て役で十分よ!」と言うのです。その瞬間、私はようやく気づきました。彼女は私を友達だと思っていたのではありません。ただ見下して、優越感に浸るための相手にしていただけだったのです。
婚約者の裏切りと再出発
彼女への違和感がはっきりしたころ、さらに信じられないことが起きました。当時、私は同じ会社の別部署にいた男性と交際していて、結婚の約束もしていました。仕事を通じて知り合い、真面目で頼れる人だと思っていたのです。
ただ、今思えば軽率でした。仲がよかったころの私は、彼女に婚約者のことまで話してしまっていたのです。するとある日、婚約者から電話があり「別れよう」と告げられたのです。 あまりにも突然で、私は頭が真っ白になりました。理由を問いただすと「俺、あの子と付き合ってるから」と信じられない言葉が返ってきたのです。婚約者を奪った相手は、“親友”でした。しかも、彼は「昔は、お前みたいな堅実そうな女が結婚相手にはちょうどいいと思ってたんだよ。でもやっぱり、一緒に歩くなら見た目が華やかな女のほうがいいって気づいた」と悪びれるどころか、平然と続けたのです。私は悔しさで震えながら「最低ね……」と返すのがやっとでした。すると彼は、そんな私を見てもまったく動じず「慰謝料なら払うよ。金ならあるし。だからさっぱり終わりにしようぜ」と言い放ったのです。こうして私は、親友だと思っていた女性と婚約者の両方に裏切られました。その後2人はスピード結婚し、2人揃って会社を辞めていきました。
私はしばらく立ち直れないほど落ち込みましたが、家族に支えられながら少しずつ前を向けるようになっていきました。そして数年後、私は今の夫と出会いました。きっかけは大好きな漫画でした。やがて私たちは結婚し、私はようやく穏やかな幸せを手に入れました。ところがある日、夫と食事の待ち合わせをしていたとき、まさかの形であの2人と再会してしまったのです。
夫の登場で大逆転
10年ぶりに会った彼女は、私の顔を見るなり驚いたような顔をしました。そして私の左手をチラッと見て、にやりと笑い「え、ちょっと……まだ独身なの!?」と言い放ったのです。さらに、わざとらしく肩をすくめながら「婚約者奪っちゃってごめんね~?」と続けました。その軽い言い方に胸の奥がチクッとしましたが、私は何も言いませんでした。私が普段、結婚指輪をつけていないせいで、勝手にそう思い込んだのでしょう。
すると隣にいた元婚約者が「相変わらず地味だな〜! やっぱり一緒に歩くなら、華がある女のほうがいいよな〜」と言うのです。2人の発言に「この人たちは何も変わっていないんだ」と呆れてしまいました。すると「妻に近寄らないでもらえますか」と声がしたので振り向くと、そこにいたのは夫でした。夫を見た彼女は、さっきまでの態度が嘘みたいに変わり「え……もしかして、あの会社の社長さん?」と呟きました。そして、彼女はぱっと笑顔を見せ「私、彼女の大親友なんですぅ~! よかったら連絡先交換しませんかぁ?」と夫に擦り寄ってきたのです。実は私の夫は若くして会社を経営し、経済記事としてサイトで取り上げられたこともあった人なのです。あまりにも露骨な手のひら返しに、私は唖然としてしまいました。さらに彼女は「私みたいな華やかな女がいた方が、立場的にもいいんじゃないですか?」と言い、夫の腕に触れようとしたのです。すると、その瞬間―― 「おい、何してるんだよ!」 元婚約者が怒鳴り、彼女の腕をつかみ「色目使うなよ! お前は俺の女だろ!」と言うのです。彼女は「はぁ? あんたなんかより、彼の方が魅力的じゃない!」と、そのまま2人は周囲も気にせず言い争いを始めました。
私はその様子を見ながら「10年経っても、この2人は何も変わっていない」と呆れてしまいました。「もう行こう」 夫がそう言って私の手を引き、私たちはそっとその場を立ち去りました。その後、2人がどうなったのか――私にはもう関係のない話です。
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信じていた人に裏切られるのは、とてもつらいことです。けれど、その経験があったからこそ、本当に大切にしてくれる人との出会いに気づけたのかもしれません。誰かを見下したり、踏み台にして得た幸せは長くは続かないもの。誠実に向き合える相手と築く関係こそが、本当の幸せにつながるのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。