二代目社長から声をかけられて…
ある朝のことです。長年一緒に働いてきた同僚のA子さんが、いつものように「おはようございます」と声をかけてくれました。僕もあいさつを返し、変わらない一日が始まるはずでした。ところが、その空気を壊すように現れたのが、前社長の息子で、最近社長に就任した二代目社長です。
二代目社長はあいさつもせず、僕を見るなり露骨に顔をしかめました。
「はぁ……15年もいてこの程度の仕事しかできないのか。中卒の低学歴にパソコンなんて使わせても、たいした戦力にならないだろ」
吐き捨てるような言い方に、僕は思わず言葉を失いました。さらに彼は、小声で「こんなジジイ、もう辞めればいいのに」とつぶやいたのです。
さらに二代目社長は、悪びれる様子もなくこう言い放ちました。
「今ちょうど人員配置の見直しを考えていて、希望退職も受け付けているから。今後どうするか考えておいたほうがいいかもな」
助けてくれた仲間たち
あまりにも失礼な物言いに、A子さんがすぐさま声を上げました。
「社長、そんな言い方はあまりに失礼です。この方は長年会社を支えてきた大切な社員ですよ。前社長から功労者として表彰もされています」
すると二代目社長は、目を丸くして「え? 功労者?」と固まります。A子さんはさらに言いました。
「前社長の時代、会社が苦しい状況に追い込まれたとき、現場で立て直しに尽力されたんです」
その言葉に、周囲にいた社員たちも次々に口を開きます。
「私も見てきました」
「彼が動いてくれたから、今の会社があるんです」
「現場をまとめてくれたんです」
それまで新社長の顔色をうかがっていた空気が、少しずつ変わっていきました。
「それなら辞めます!」
僕はA子さんに向かって、「僕のために怒ってくれてありがとうございます」と頭を下げました。そして二代目社長のほうへ向き直り、静かに告げました。
「僕は15年間、この会社で必死に働いてきました。それでも退職を考えろとおっしゃるのなら、もうここで働き続けるのは難しいです。退職します」
二代目社長はあわてて「ちょ、ちょっと待ってくれ! 君がそんな立場だったとは、知らなかったんだ!」と取り乱しました。けれど僕は落ち着いたまま、「人員整理をお考えだったんですよね」と言い返しました。
するとA子さんが、はっきりとこう言ったのです。
「彼が辞めるなら、私も辞めます」
そのひと言で、周りの社員たちに動揺が広がります。
「こんな状況で俺たち働けるのか?」
「新しい社長は現場をわかってないよなぁ」
社員たちの声に二代目社長はいたたまれなくなったのか、無言で去っていきました。
その後…
それから数カ月後。僕やA子さんが辞めたあと、他の社員も次々と退職。結果、社内は人手不足に陥り、業務にも支障が出るようになったと聞きました。
僕たちは退職した仲間の一部とともに、新しく立ち上げた会社で働くようになりました。以前より規模は小さいものの、職場には笑顔と活気があり、互いを尊重しながら働ける環境が整っています。仲間たちが「転職して正解だった」と笑う姿を見るたび、この決断は間違っていなかったのだとホッとしています。
そんなある日、疲れ切った顔をした二代目社長が僕たちのもとを訪ねてきて、「戻ってくれとは言わない。せめて少しだけ力を貸してほしい」と頭を下げてきました。A子さんはいったん断りましたが、僕には前社長への恩義があります。そこで仲間たちと話し合い、業務が落ち着くまでの短期間だけ支援することに。
しばらくして迎えたある休日、A子さんが少し照れるように「よければ今度、仕事抜きで食事でもどうですか?」と声をかけてくれました。実は僕も、いつかA子さんを誘いたいと思っていたので、少し先を越された気分になりながらも、「喜んで」と答えました。今の僕は、信頼できる仲間たちと大切な人に囲まれ、穏やかで幸せな毎日を送っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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